第8話 秋人の第一声特集 ~その1 ※ネタバレ注意!
前回、他推の中で「秋人の第一声はストーリー全体に影響を与える」と書きました。せっかくですので、これまで発表された作品の秋人の第一声を集めてみました。名乗りとあいさつは第一声には含めないことにします。つまり秋人が用件を伝える部分ですね。
作品は以下の内容で、今回はピックアップではなく全数行きたいと思います。
・完結済み作品に限る。連載中の作品は除外。
・複数作品を投稿されている方は、PVあるいは星の数から代表作と思われる作品のみ。
・第一話の投稿順(完結順ではありません)
フレーズ評価OKのタグ付きの作品限定にするつもりでしたが、常連さんでもタグ無しの方が多かったため、タグの有無にかかわらず全数ご紹介しています。※の付いている方はフレーズ評価OKのタグ無しの方です。というか、常連さんちゃんとタグ付けてください(怒)
もし引用公開が不都合でしたらコメントください。タグの有無にかかわらず速攻で削除いたします。
それでは行ってみましょう!
◇◆◇◆◇◆
◇1「頼む! 美冬! 金を貸してくれ!」(祟さん)
企画参加第一作が祟さんのこの作品だったんですね。クズ系秋人らしい第一声。インパクト十分。素晴らしいです。一言でクズだとわかるセリフです。
◇2『それなら良い。自分はもうこの地から去ると言ってくれるとありがたい』(江戸川ばた散歩さん)
美冬ではない登場人物に向けた第一声、独創的です。通話装置ごしの設定なので二重カギカッコになっていますね。よく読んでみると、江戸川ばた散歩さんの作品では美冬と秋人は会話どころか直接会ってもいません。オリジナリティ抜群です。
◇3「明日、旅立つから。挨拶しとかねぇと、と思ってな」(長月そら葉さん)
歴史ものですが現代口調の長月そら葉さん。ストレート系の作品なので、分かりやすくするためにわざと現代口調にしてありますが、ここは割り切りですよね。セリフ自体もひねらないでまっすぐに書くのが、ストレート系作品のポイントです。
◇4「僕、旅立つことにしたんだ。ここを離れて、憧れだったあの場所に」(無月弟さん)※
無月弟さんの作品では前段をすっ飛ばしていきなり美冬と秋人の会話で始まります。構成の妙ですね。秋人のセリフはめっちゃ普通ですが、さらっと普通なセリフなところが実はミソです。
◇5「俺のこと分かるか? ほら、お祝いの花束だ、美冬」(皆辻冬和さん)※
久しぶりに会う幼馴染との会話にしては、違和感だらけのこのセリフで秋人が登場する皆辻冬和さんの作品です。しかし作品の流れから考えると、至極当然な一言なんです。うーん、これ以上詳しい解説は即ネタバレなのがツラいところです。
◇6「きゅうん、きゅきゅん」(愛果 桃世さん)
笑笑笑。いや、そうなりますよね。でも、これで正解なんです。詳細は作品を読んでみてください、としか言えないじゃないですか。これもオリジナリティ抜群の愛果桃世さんの雪熱にふさわしいセリフです。
◇7「美冬、100円返せ」(物語る人さん)
前話の他推でご紹介した物語る人さんの秋人第一声。この一言で二人の少し前までの関係性の想像が膨らみます。これに対する美冬の返答は「バカなの?」。このやり取り一発で二人の距離感を絶妙に表現しています。私個人的に大好きです。このセリフ。
◇8「やっと掴み取った」「いままでの努力が報われる時がきたんだ」(宇部松清さん)
宇部松清さんの秋人の第一声。重いです。結末を知っているとなおさら。こんな重いセリフ言わせてるのに、実はコメディ。やっぱり宇部さん天才だとしか言いようがありません。
◇9「美冬のお袋さんが亡くなったって聞いたから、俺も世話になったしお線香を上げたいと思って、良ければなんだけど」(すーすーすー(仮)さん)
すーすーすー(仮)さんはストレート系の物語でしたので、秋人のセリフもストレートですね。端的に用件と何がしたいかだけを伝える秋人。ビジネスマンのお手本のようです。
◇10「久し振りに会いたくってさ。ね、部屋上がらせてもらっていい?」(lagerさん)
これだけだと普通ですが、このあと美冬が「いいわけないでしょ、変質者」と返します。このやり取りで二人の関係性がよく分かりますよね。そして美冬は秋人を招き入れる前に部屋を片付けるのですが、その描写がとてもリアル。改めて見てみると、秋人を待たせて部屋の中を片づける美冬が出てくるのはこの lager さんの作品だけです。こういう細かいところでリアリティ出すの、見習いたいですよね。
◇11「髪に銀花を飾りながら、なぜ、花火をしているのですか。真冬のこの寒さの中で」(時雨さん)
おおお、なんて情熱的な一言。まるでオペラのような秋人の一言です。これは秋人に惚れちゃいますね。全編を通して見事な描写が続く時雨さんの雪熱、その幕開けにふさわしい一言になっていると思います。
◇12 美冬がそう話すと、秋人はなるほど、と微笑んだ。(奈月沙耶さん)※
なんと序盤で秋人のセリフがない! とてもトリッキーな構成の奈月沙耶さんの作品。しかもちゃんと意味があるんですよね、このセリフなしになっている構成には。あまり詳しく解説すると作品の良さを毀損しかねないので、これぐらいしか言えません。是非一読してみてください。勉強になります。
◇13「ええ、冬の山は不慣れですがなんとか来れました」(ホシノユカイさん)※
美冬ではない登場人物に話しかけた秋人の第一声です。この関係があの結末を迎えるとは……。ある意味、このセリフから感じ取れる作品のニュアンスを完全に裏切った作りにしてあるところが、ホシノユカイさんのテクニックなんですね。一度は使ってみたい技法です。
◇14「美冬どのか?」(もりくぼの小隊さん)
本来ならこの後に続く秋人のセリフを抜き出したいところですが、作中の秋人、めちゃめちゃ無口なんです。作中でほとんど呼びかけ以外のセリフがありません。ダークヒーローは黙して語らず。熱い男にセリフはいらない。しかし、実はこれこそがこの作品のトーンに素晴らしくマッチした一言なのです。お見事です。
◇15「オレ、町を出ることにしたんだ」(藤本佑麻さん)
至極普通のセリフですが、これは意図的に普通のセリフにしてあるんですね。最後まで読むと、実は普通のセリフであることも演出の一環だったことが分かります。叙述に仕掛けのある作品には普通のセリフ、これがテクニックなんでしょうね。勉強になります。
◇16「もうオレたちも大きくなったんだ!これくらいの男女は馴れ馴れしくしないもんだ。」(万之葉文郁さん)
一見普通のようでいて、よーく読むと違和感のある不思議なセリフです。最後まで読むと違和感の正体が分かります。
◇17「俺、転校するんだ」(無月兄さん)
割と普通なこのセリフがいきなり冒頭に出てきます。1行目から美冬と秋人のやり取りでスタートするのは無月ご兄弟の作品だけのようですね。でも冒頭にインパクトのあるセリフを持ってくるのはある意味王道の必修テクニックでもあります。そして、あえて普通のセリフを言わせて、後ろに続く仕掛けをカモフラージュするのも基本テクニック。こうやって並べてみると、中身は違いますが、ご兄弟の作品手法はとてもよく似ていますね。もちろん極めて平凡な秋人のこのセリフ、後半の仕掛けのカモフラージュです。
◇18「急用ではありませんが、出立のご挨拶を申し上げに参りました」(かこさん)
このセリフだけ抜き出すと、おやっ?と思いますよね。美冬以外の登場人物に向けた第一声です。独特の世界観で展開されるかこさんの雪熱。この世界観だからこそのこのセリフです。世界観の方をよく頭に入れてから読むと、とても自然なセリフになっているのがわかります。
◇19「お見事だね~。久しぶり」(戌井てとさん)※
これも割と普通のセリフに聞こえますが、この作品も独特の世界観で描かれています。仕掛けもいっぱい。実はオンラインゲームのチャット上の会話なんですよね。それを踏まえて読んでいかないとこんがらがってきますが、世界観を頭に入れて読むと納得の一言です。
◇20「どうしても、話したいことがあって」(野々ちえさん)
ここまでの流れだと、普通のセリフは後半のひねりのカモフラージュ、ということになります。しかしストレートの野々ちえさんの作品は、序盤から一貫して直球一本ですね。どこまでもまっすぐなストーリーは、やはりてらいなくストレートなセリフが似合います。お見事です。
◇21「久しぶり。なあ、お前ん家行ってもいい?」(肥前ロンズさん)
おっと。これもあまりにストレートなセリフですね。この秋人の軽妙さ、暗喩になっているのか、それとも何かの仕掛けなのかと思いを巡らせてると、ホントに何も考えていなかった! その衝撃たるや、怒り出す美冬を思わず応援したくなります。しょっぱなで秋人のこの軽さを見せておくのが大事なところなんですね。これは真似してみたいです。マジで。
◇◆◇◆◇◆
うげっ、3500字も書いたのにまだ半分も紹介できていない。なんてむちゃなことを始めたんだ、俺……。
次号に続く……。
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