雪熱

第6話 雪熱執筆の記録

 体育会系スパルタ企画「筆致は物語を超えるか」、まさかの連発開催で常連参加のみなさんからブーイングが聞こえました。


 正直雪熱のレギュレーションのシンプルなくせに超絶書きにくいという底意地の悪さ。私もうげええと思ったのが正直なところです。


 いや、期間二か月取ったからとかそういう問題じゃないですよね。今回は割とガチでパスしようかと思っていました。


 しかし、とは言えここで引き下がっては男が廃る、とばかりに書き始めたんです。なんと言っても最初の一週間の投稿本数の多いこと多いこと。無月弟さんなんかあらかじめ書いてあったんじゃないかと思えるスピードでしたし。


 登場人物は少なく、レギュレーションはひねらずに、今回はよくある話でいい、誰かとかぶってもそれはそれでよし、長さも五千字ぐらいでいいや。とにかく書くことに意義がある、と自分を奮い立たせて。


 ところがですねえ、乾いた雪景色が書きたくて舞台を極東の大陸の港町に設定したんです。割とこれが自分の中でハマりましてですね。そしたら美冬と秋人をスパイにしてしまおうかと思っちゃったんです。おお、ハードボイルド! 最後は美冬が秋人を撃ち殺す! 


「あなたを、行かせるわけには行かないのよ」


 とか言いながら。美冬たちをひそかに裏切る秋人、美冬は秋人が裏切っていることに何かしらの理由(例えば言葉遣いがダブルエージェント独特のそれだったとか)で気が付いてしまう。いいじゃないですか!! 美冬の流す涙は職務に忠実であるがためにわが手で秋人を抹殺することになった自分の運命を嘆く涙!!


 あ、でもガチハードボイルド系の話、書いたばっかりだ。それにこれをまとめるには相当綿密なプロッティングをしないと筋が通らない話になっちゃうな。

 美冬と秋人は何者? 秋人は何を何故裏切ったの? 美冬が裏切りに気が付いた理由は? うううううう、これはまとめきれんぞ …… 。


 というわけで、大陸の極東の港町の設定を入れて、とりあえずスパイの方向で書き始めたのですが、早々にこの構想は挫折しました。今作の中で秋人が日本人コミュニティの個人情報売りさばいていたところとか、最後埠頭で撃たれそうになるところ(これは美冬の勘違いにしてしまいましたけどね)なんかはこの時ハードボイルド設定の名残なんですよね。笑


 書いているうちに出てきた今作のもう一つの目玉は、秋人と美冬が元夫婦というところです。この設定もなかなか自分の中でヒットしました。ここまで同じ設定の方もいませんし。これのおかげでスパイ設定を捨てても最後まで書き切れたみたいなもんです。

 レギュレーション通り二人を思春期の幼馴染の設定にすると、疎遠になった秋人が別れの言葉を言いに来るシチュエーションがどうしてもしっくり来なかったんです。これがネックになっていたんですが、元夫婦にするだけでそのへんのモヤモヤがほとんど解消しちゃうんですよ。いやあ、やっぱり夫婦ていいですよね。

 まあ、結婚していたころの話とか離婚したところなんかをもう少し書いておけば、さらに味が出たかなとは思いますが。五千字目途だったのでこのあたりは全部カット、読者様の想像にお任せにしました。


 葉桜と違ってインパクトの薄い作品になってしまったのでどうかなと思いましたが、ツンデレ美冬が思いのほか好評をいただきまして、今作もたくさんのみなさまに読んでいただけました。嬉しい限りです。ありがとうございました。


 あと常連参加者さんがいまだ出そろっていませんし、ふづきさんのペンギンも夏緒さんのガチエロBLまだですので、楽しみにお待ちしていますね。

 私は書き終わってからヨミに回りまして、一通り参加作には目を通せていると思います。読めていないのは数作のはずです。


 次回はちょろっと他推をしてみようかなと思います。



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