第2話 指定プロット(レギュレーション)の読み方~その2
「元恋人」の話をする前に一つ訂正を。
前回「元恋人と指定してある」と書きましたが、執筆詳細の解説のところでゆあんさんは「元恋人である必要はない」とはっきり書かれておられました。私、ここを見逃しておりました。前述のとおり、この執筆詳細の解説の項はあまり細かく読みすぎると変に固定観念が付いてしまう(≒ ゆあんさんの術中にハマる)ので、私はできるたけ読まないようにしているのです。それが少し裏目に出てしまいました。お詫びして訂正いたします。
さて、「元恋人」にあたる第三の登場人物についです。
この人物をどう設定するかはストーリー全体のカギを握ってきます。それこそ後ろで出てくる桜子の相談内容もそれに対する葉太の答えも、この第三の登場人物の存在に大きく左右されます。
これもゆあんさんのトラップだと思うのですが、この第三の登場人物をどう設定するかが、実はこれは「葉桜の君に」という物語の一番の骨格になるんですよね。
ポイントは二点ありました。一つは、なぜ桜子は第三の登場人物に似ているのか。もう一つは、なぜ第三の登場人物は葉太と別れたのか。
この二つは一見曖昧なままでも物語になるかのように指定プロットは書いてあります。しかし、実際お話を作り始めると必ず何かしらの理由が必要になったことは、葉桜を書かれた作者のみなさまがご経験されたものと思います。桜子と第三の登場人物は親子だったとか、姉妹だったとか、趣味が同じだったとか。そして、葉太と第三の登場人物は喧嘩別れしたとか、死に別れたとか。
この二つのポイントで葉太と桜子と第三の登場人物の関係性が決まってきます。もっと言えば後で葉太が桜子に贈る言葉もだいたい決まってくると言えるでしょう。
ゆあんさんは意図的にかどうか分かりませんが、ここをぼかして解説されてますね。そして葉太と桜子とこの第三の登場人物との関係をどのようなものにするか、そこが各作家さんの個性が出るところでもあります。私がここまで読んだ中でも、この三人の関係性を隠し味にしたもの、もしくはメインにしたものが多かったです。
伊藤デイズさんはここで傑出したアイデアを出しておられました。世楽八九郎さんとlagerさんのお二方は第三の登場人物をとても重要な物語のスパイスもしくはキーパーソンになさっています。正直このお三方の葉桜読んだ時は腰が抜けました。
それ以外のレギュレーションの指定については、書いている途中、あるいは書き終わってから調整でいかようにもできそうです。葉太と桜子が公園で偶然出会う、そこにある桜、走り去る、再会、桜子に言葉を贈る。うん。これは後でその場面に差し掛かった時にそのように書けばいいのです。
これで「よおし、元恋人を設定して具体的に執筆にかかろう!」 …… というわけには行かなかったのですね。私の場合は。
実は指定プロットにはありませんが、葉桜に限らず物語を書く上で必ず考えなければいけないのが、シチュエーション(=作品世界)です。
今回は指定プロットが暗に学園ものというシチュエーションを要求していました。私のような指定プロットの裏読みを入れない作者さんであれば、特に考えることなく現代、学校、春の教室というシチュエーションで書き始めたことだと思います。むしろそれが普通です。学校を小学校・中学校・高校・大学のどれにするか、男子校は桜子が出てくる関係でありえないので女子校か共学か。あと葉太の担当教科。それぐらいしか選ぶところはありません。
どうでもいいところですが、桜子が男子のフリして男子校に紛れ込んだラブコメ葉桜またはBL葉桜とかどなたか書いてみませんか?とてもユニークで面白そうですよ。閑話休題。
ところが学園ものを拒否すると、このシチュエーションをまず最初に構築しなければいけませんでした(学園ものならシチュエーションの構築は一切不要という意味ではありませんよ)。学園ものというフォーマットを拒否したがために広がる無限の荒野。ここを耕すところから私の葉桜は始まったのです。
ただ、これには私には腹案がありました。前回の筆致企画「海が太陽のきらり」で奈月沙耶さんが書かれた歴史ファンタジーもの、私はこれを虎視眈々と狙っていたのです。奈月沙耶さんは前回の筆致企画で指定プロットにあった「海斗は高校生」という部分をガン無視して、見事な歴史ファンタジーきらりを展開なさいました。いや、当時の私は感嘆しましたよ。「高校生という設定を外すだけで、ここまで書けるのか!」と。奈月さんはその点以外は完璧にプロットに沿っておられましたよ。だからこそ「高校生」の枷を外すだけで得られる極端に広がった作品世界を、私も書いてみたいと思っていたのでありました。
いい機会だ。私も今回ああいうのを書いてみよう。ちょうどモチーフの指定が桜だ。桜と言えば、夜の公園で見た見事な夜桜、あれがいい。夜桜と言えば。忍者と日本刀!
こうして私は歴史忍者世界の中で繰り広げられる「葉桜を君に」の世界に取り掛かりました。
次回は、歴史忍者世界の中で登場人物三人の関係性の設定にガチで苦労した話です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます