葉桜あれこれ、ときどき雪熱、ところにより空走
ゆうすけ
筆致は物語を超えるか
葉桜
第1話 指定プロット(レギュレーション)の読み方~その1
ゆあんさんの自主企画「筆致は物語を超えるか」の第三回企画「葉桜の君に」。
すでに参加作品は三十作品を超えています。
私も艱難辛苦、疲労困憊の末に書き終わって、先日公開しました。すでにたくさんの方々に読んでいただいて嬉しい限りです。
自主企画「筆致は物語を超えるか」今回で三回目の開催です。私は一回目の「明日の黒板」から参加しています。
思い起こせば二年半前の秋、カクヨム登録直後でまだフォロー数もフォロワー数も数えるほど(多分一桁、もしかしたら片手で余るぐらい)だったころ、偶然目にして勢いで二千字弱の短編を数時間で書いてぶん投げたのがきっかけでした。
これが思いのほか「せつない」「共感できる」「視点が新しい」とみなさまに褒めていただけまして。
これで調子に乗った私、いろいろカクヨムに小説書いてあげるようになったのです。言わば私のカクヨム活動の原点となった企画。ひとえにプロットの練り方や、段落の落とし方ですらろくに知らなかった私に、懇切丁寧にみなさまが教えてくださったおかげです。これは今回も参加しない手はありません。
第二回の「海が太陽にきらり」企画で私が公開した作品が、登場人物を幼女にするという大方の予想を裏切る設定でスマッシュヒットを飛ばし、星の数で参加作のトップに立っていました。ゆあんさんは「この企画は順位付けするものではない」と再三再四おっしゃっておられますが、やっぱり気になりますよね。星の数。で、その星の数が憚りながらもトップを取った以上、参加しない手はありませんし、タイトルホルダーとして恥ずかしい作品は出せません。今回も気合いを入れてレギュレーション読み始めました。
ところが、今回の葉桜のレギュレーション、めちゃくちゃに苦労することになります。葉桜のレギュレーション、曲者でした。いや、毎回そうなんですけどね。
いきなり葉太が教師、桜子が生徒と指定されています。で、桜子は葉太の昔の恋人に似ていて、葉太は思わず桜子に対してただの生徒としてだけでない感情を持ってしまう。
それで桜子が葉太に相談を持ち掛けて、葉太の答えを聞く前に逃げ出していってしまう。後日葉太が改めて桜の木の下で桜子に答えを告げる …… と。ふむ。
ここで企画参加三回目の経験が活きてきます。レギュレーションの裏読みをするわけです。つまり「どこまでならレギュレーションを逸脱しても許容範囲に収まるのか」を考えるのです。
これは決して自分の思考で考えてはいけません。他の方が読んだ時に「これはレギュレーションを外していない」と感じてもらえるラインを見極める作業なのです。ですので「これは絶対レギュレーションに収まっている」と自ら強弁しなければいけないようではダメなのです。
具体的に見てみましょう。
まず葉太が教師、桜子が生徒という部分。
普通に読むと「学校の先生と生徒」になってしまいますが、あくまでレギュレーションでは「男性教師」としか書いてありません。「学校の」という指定はありません。詳細ページで校内校外と出てくるのでどうしても学校に引っ張られてしまいますが、ゆあんさんの指定プロットはときどきこういうトラップが仕組んであります。詳細ページの方を読めば読むほどトラップに引っかかってしまうのです。
ですので、学校でなくても葉太が教える立場で、桜子が教え子の一人として存在するなら、それはレギュレーションの範囲内と言えるはずです。それでも逸脱していると言われたら、それは指摘する方の指定プロットの読み込み不足ですよね。ここで真っ先に私は現代の学校を舞台にするストーリーを自作の選択肢から外しました。
学校以外で教え教えられる場。考えてみたらたくさんありますよね。今回は私は忍術の鍛錬の場というのを選びましたが、他に候補として自動車教習所、カルチャースクール(私のイメージとしては音楽系だったのですが、講座が多種あるのでいろいろ応用できそうです)、空手剣道の道場、幼児体操教室、会社の新入社員研修(実は弁護士の卵を養成する司法教習所も考えました)などなど。いくらでも応用が効きました。一つ注意を要したのは一対一の個人レッスンになるようなもの。これは少しプロットの範囲内とは言いづらくなるかなと思い、検討範囲から除外しています。あくまで桜子は「複数の教え子の中の一人」であることが要求されていると考えたのです。
なお、学びの場を学校以外に設定する付帯効果として、桜子の年齢が自由に選べるようになります。プロット通りにするとどうしても桜子は中高生になって、葉太と少なくとも五歳程度の年の差が出てしまいます。私は結果的に桜子十五歳にしましたが、三十路桜子で葉太よりも年上、ということも実は学びの場の設定次第で選択可能なのでした。三十路桜子は、これも実は候補の一つではありました。
ちなみに私の葉桜における桜子は数え年で十五歳ですので、満十三歳の設定です(→どうでもいい裏話)
次に昔の恋人に似ている、という部分。
これは難しかったです。プロットに「元恋人」と明記してありますからね。私は「姉弟同然に育った孤児同士」という設定にしました(実の姉弟でないところがポイントです)が、これはアウトだったかもしれません。つまるところ「恋人同士と同じぐらいお互いを深く知り合った仲」を許容するかどうか、という話になります。ただ、私の場合、昔の恋人役である楓子と葉太を本当に恋人同士にしてしまうと、桜子の存在をめぐってどうしてもストーリー展開に無理が出てしまうのでした。
そのあたりについては後日。
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