創世神話~現代に至るまで

 ソード・ワールド2.5の世界「ラクシア」は、三本の「始まりの剣」によって作られたとされます。


「第一の剣」"調和"を司る剣、ルミエル。

「第二の剣」"解放"を司る剣、イグニス。

「第三の剣」"叡智"を司る剣、カルディア。


 これらの剣はどこから来たのかは何一つわかっていません。しかし、世界はこの三本の剣から始まったとされています。

 三本の剣は、自身たちの持ち手となる存在を望みました。そして、自分たちを持つに相応しい存在を生み出すことにしました。


 剣は空と海と大地を創生し、生物を創り出します。


 最初に生まれたのは植物でした。しかし原初の植物はただ繁殖だけに勤しみ、始まりの剣が望む存在ではありませんでした。


 次に生み出されたのは動物でした。植物より明確な知能を持ち、己の意思で活動する彼らでしたが、自らが生き、繁殖することに熱心であり、これも始まりの剣が求めたものではありませんでした。


 次に生まれたのは、動物を元により高い知能と能力を持つ幻獣でした。彼らは生物として非常に優れており、特にドラゴンはその完成形とも言える存在でしたが、彼らは優れすぎていたが故に、始まりの剣を求めることはありませんでした。


 そして、最後に生み出された生命が人類でした。



【神紀文明シュネルア時代 - 神話の時代 -】


《神の誕生》

 生み出された人類の中から、ついに始まりの剣を手にする者が現れました。

 生まれた時から自分を呼ぶ声に導かれ、仲間と共に過酷な旅を乗り越え「第一の剣」ルミエルを手にした超人的な強さと友愛の心を併せ持つ英雄。名はライフォス。彼は世界創生すら可能とする始まりの剣の強大な力に触れたことで、"始祖神"ライフォスとして崇められる神の力を得ました。


 ライフォスは強大すぎる「始まりの剣」を、自分一人で独占しませんでした。調和と友愛を大切にする彼は大きな力を皆で分け合い、力を合わせていくことを願って、親友であるティダンの他、グレンダールとアステリアを始まりの剣に触れさせました。

 彼らはライフォスの願い通り、皆で手を取り合って生きていきます。


 また、旅に出たライフォスとは異なるところで「第三の剣」カルディアに触れた者がいました。その者は"賢神"キルヒアとして神の座へと昇ります。キルヒアは触れた剣こそ異なりますが、同志としてライフォス達と行動を共にします。


 こうして、始まりの剣に直接触れて生まれた五柱の神は、古代神エンシェント・ゴッドと呼ばれます。


 そして、古代神と共に生きる人々の中から、神に見いだされる者たちが現れました。彼らは高潔な精神の持ち主であったり、目を見張る才能や能力の持ち主でした。

 そうした人々は古代神の手によって神の座に招かれ、大神メジャー・ゴッドとなりました。


 神々と人々が手を取り合って生きる、正に楽園というべき世界でした。



《戦いの幕開け》

 人族は神々と共に生き、繁栄していきます。それは争いの無い、平和な時代でした。


 しかし、ここで新たな神が登場します。

 「第二の剣」イグニスを見つけ、その力を得た者の名はダルクレム。彼は"戦神"ダルクレムとして、ライフォス達と同じ古代神エンシェント・ゴッドの力を得ます。


 ダルクレムは元々ライフォスと共に戦うこともあった人物でしたが、あまりにも好戦的な性格で、人民の為ではなく常に己の為に戦う戦闘狂でした。そんな彼にとって、ライフォスが築く平和な国はあまりに生ぬるく、嫌気が差して離反したと言われています。

 その後、ダルクレムは自分を呼ぶ声に導かれ、たった一人で過酷な旅を続け、屍の山を築き続けた旅路の果てにイグニスを発見します。

 戦いを神聖視するほどの好戦的な性格が"解放"を司るイグニスによって増幅された為なのか、暴力的な荒ぶる戦いの神となりました。

 ダルクレムは世界の覇権を手中に収めんとし、ライフォス達「第一の剣」陣営に戦いを挑むことを決めます。


 ダルクレムは戦いに赴く前準備に、戦力としてより闘争心が強く、残虐で情け容赦無く、力が強い存在を求めました。

 そして様々な試みの中で、魂に"穢れ"を与えることに着目します。

 輪廻転生によって魂が流転するラクシアにおいて、"穢れ"とはその流れに逆らった魂が得るものであり、いうなれば世界そのものへの叛逆として忌避されるものでした。

 しかしダルクレムは、"穢れ"を魂に意図的に与えることで強い力と残忍な心を持った生命体を生み出すことに成功しました。

 こうしてダルクレムによって生み出された眷属を「蛮族ばんぞく」(バルバロス)と呼び、従来の人類は「人族ひとぞく」と区別されます。

 この二種族は神話の時代から現代に至るまで、不倶戴天の敵同士として争い続けることになります。


 蛮族を生みだし、戦力を整えたダルクレムは、ついに第一の剣陣営の神々に戦いを挑みます。それまで平和な時代を過ごしてきた第一の剣陣営は戦う術を知らず、戦況は虐殺とも言うべき一方的なものとなりました。



《第一の剣陣営の反撃》

 ダルクレム陣営が第一の剣陣営を最後の拠点まで追い詰め、もはやこれまでと思われたとき、状況が一変します。

 ダルクレムと不仲であったザールギアスという、冷酷な殺戮者である男が、毒と腐敗を撒き散らすことを生きがいとする危険な女性・ブラグザバスと手を組み、第一の剣陣営を追い詰めて僅かに気が緩んだダルクレムの手からイグニスを奪い取ったのです。

 彼はイグニスの力を得て"死の神"ザールギアスとなりました。

 ザールギアスは「速やかに死を齎すことが救済である」という危険思想の持主で、そんな彼が古代神エンシェント・ゴッドとなった上に、怒り狂うダルクレムと天変地異を引き起こす程の戦いを繰り広げた後に離反し、おまけに敵味方関わらず毒と腐敗を撒き散らすことを喜びとする愉快犯テロリスト思考のブラグザバスもドサクサに紛れて大神メジャー・ゴッドの座に登るなど滅茶苦茶な事態になりました。ザールギアスとブラグザバスは後に夫婦となっています。

 自軍の中から、殺戮を好む最悪最凶夫婦が神の力を得たのです。その手がいつ自分たちに向けられるかも判らない状況では、いくら蛮族と言えどたまったものではなかったでしょう。


 しかも更にダルクレムの災難は続き、ザールギアスとの戦いの最中でイグニスが何者かに盗まれ、忽然と姿を消していました。

 一説によれば、この時イグニスを盗んだのは第一の剣陣営の"神の指先"ミルタバルという大神と言われています。このため、ダルクレムはミルタバルを卑劣なコソ泥として激しく敵視していると言われてます。

 異説では、第二の剣陣営ながら自由気ままに生きるトリックスター、”風来神”ル=ロウドによる犯行であったとも言われています。この説はテラスティア大陸(SW2.0の舞台)を中心に信じられています。

 イグニスが盗まれた結果、第二の剣陣営の中から予期せぬ神の発生が次々と起こり、ダルクレム陣営は大混乱に陥り戦線を維持できなくなりました。


 第一の剣陣営はこの隙に戦いの準備に取り掛かりました。

 "炎武帝"グレンダールは鍛冶の技術を持って神々の武器となる神剣を鍛造し、また多くの人々が死ぬことを知りながらも戦うために神の力を求めました。彼らは粗製の神となり、神々が鍛えた武具を纏い、戦場に立ちました。


 こうして戦いの準備を整えた第一の剣陣営は、ついにダルクレム陣営へと反撃を開始します。統率が取れず混乱に陥っているダルクレム陣営は大いに苦戦し、ついに戦況は互角の状況になります。


 なお、争いを好まないライフォスは何度もダルクレムに停戦の申し出を行ったそうです。しかしその申し出は受け入れられながらも後に全て反故にされており、それが二度、三度と繰り返され、ついに温厚なライフォスも観念し戦うことを決意したそうです。

 始祖神の顔も三度まで。



《戦いの終焉》

 第一の剣陣営とダルクレム陣営の戦力は互角となり、戦いは膠着状態となりました。

 戦いに志願した者たちが死ぬことがわかっていながら粗製の神となり、命を散らしていくことにライフォスは大いに嘆き悲しんだそうです。


 両陣営は徒に命を散らし、戦力を消耗し続けました。

 この状況を打破するため、両陣営共に「第三の剣」カルディアを確保するために動き始めます。


 始まりの剣は触れただけで神の力を与えるほどの強大な存在でした。それを手中に収めることが、この大戦を制するであろうことは確実でした。


 しかしカルディアは自身を戦いの道具に使われることを好みませんでした。

状況を憂いたカルディアは、自らの身を粉々に砕きます。こうして世界から「第三の剣」は失われました。


 決め手を失った両陣営は疲弊しきり、ついに決着のつかないまま戦いは中断され、神々は地上を去り、永い眠りに就きました。

 後には荒廃した世界と、生き残った人族や蛮族が残されました。



【魔法文明デュランディル時代 - 魔法と貴族の時代 -】

 神々が去った後、生き残った人々は自らの手で文明を作り上げていきます。

その最初の文明がこの時代、魔法文明デュランディルです。

 「第三の剣」カルディアが砕け散ったとき、世界には魔法の源となるマナが満ちました。このマナを用いた魔法が最も繁栄したのがこの時代です。


 この時代は魔法に長けた貴族階級が、魔法に疎い奴隷階級を使役する完全な階級社会でした。貴族階級はサロンに集い、領地の問題や様々な物事を話し合い、時には奴隷身分を軍勢レギオンとして率い、自ら戦線に赴くこともあったそうです。

 人族・蛮族問わず強大な力を持つ魔法王たちが群雄割拠した時代です。彼ら魔法王の力は並外れており、自身の魔力と強力なアーティファクトで武装した魔法王は半神が如き力を有する者すら居ました。


 魔法王の中には神の座へと昇ることを目的とした者たちも多く、神の座へと至る力を持つ「始まりの剣」を自らの手で作ろうと躍起になりました。

 こうして作られ始めた「始まりの剣」のコピーともいえるものが魔剣です。

 この時代に作られた魔剣は特に強力なものもあり、中には本当に神の座へ登れるほどのものや、鞘から抜いただけで一国を滅ぼすほどの力を秘めた危険なものも存在します。


 魔剣だけでなく、現代では到底作成不可能な強大な力を秘めたアーティファクトも多数存在し、魔法文明がいかに栄華を誇っていたかが伺い知れます。


 しかし、その魔法文明デュランディルは現代から約3000年ほど前に突如終わりを迎えます。この文明が滅んだ原因は現代では判明していません。


 有力な説としては、とある魔法王がアルフレイム大陸北部に現在でも存在する巨大な「奈落アビス」を生み出し、そこから湧き出た異界の住人である魔神(デーモン)たちによって滅ぼされただとか、他にはこの時代には魔神を使役する魔法も発展したものの、それで召喚した魔神の軍勢に反旗を翻され滅んだなど、魔神が原因ではないかという説が存在しています。



【魔動機文明アル・メナス時代 - 技術と繁栄の時代 -】

 魔法文明が滅んだ後、次に興ったのは魔動機文明アル・メナスです。


 この時代の特徴は、魔法文明時代では特権階級のものであった魔法をより多くの人々が使えるようにし、誰でも魔法の恩恵を受けられるようにしたことです。


 魔法文明時代に発展した真語魔法、操霊魔法は特権階級が独占しており、広く伝わっていなかったため多くが遺失し、かろうじて伝わったものを魔術師ギルドが細々と受け継いでいました。

 代わりに新たな魔法体系として魔動機術が発展します。この誰にでも使える新たな魔法は一般人までも広く浸透し、技術は飛躍的に発展しました。


 現実世界の例でいえば、昔は限られた人しか使いこなせなかったコンピューター技術を、スマホのように手軽に手に入る端末と親切なUIで一般人でも誰もが使えるようになったことを想像すればよいでしょうか。


 魔動機の呼称が示す通り、この時代は魔法の原理を用いた様々な機械が生まれ、発展していきます。

 飛行船や魔動列車、魔動バイクなどの乗り物により交通・流通面は飛躍的な進歩を遂げ、機械を用いた上下水道や照明などのインフラが整い、人々の生活は豊かになりました。情報ネットワーク技術も存在していたと見られ、技術レベルでは現実世界の現代社会と同等に近いものを想像してもよいと思います。


 そしてこの技術発展の時代においても、特に際立った二大発明が存在します。

 一つは「守りの剣」、そしてもう一つは「ガン」です。

 「守りの剣」は強い"穢れ"を持つ存在が近寄れない結界を生み出す魔剣です。”穢れ”の多い高位蛮族が無理に結界内に押し入ると、身動きすら不可能な程の苦痛に襲われると言います。魔剣とは言うものの量産品であり、これを多数配置することで人族領域は蛮族やアンデッドが近づけないようになりました。

 ガンは弾丸に魔法を付与し、それを銃器で魔法攻撃として発射する武器です。扱いが簡易で、しかも鎧などの防具が役に立たないこの恐るべき武器はたちまち人族の間に主武装として広まりました。

 また、ガンを搭載した自立型兵器も多数開発され、屈強な戦士であった蛮族たちも遠距離から成すすべなく打ち倒されたそうです。


 高位蛮族は近づくことすらできない結界と、頑丈な身体も容易く貫くガン

 この二大発明によって、地上から蛮族の脅威はほぼ一掃され、人族は最盛期を迎えます。


 この時代の後半には蛮族の脅威が余りに薄れてすぎていたため、蛮族を架空の存在であると思う者や、蛮族は絶滅危惧種であるため人族が保護するべきである、などと主張する者すらいたそうです。

 また医療面も発達したため、出産の際に角で母体を傷つけやすく忌み子と言われたナイトメアによる出産事故も減り、現代よりも差別・偏見の目は少なかったと言われています。



大破局ディアボリック・トライアンフ

 しかし地上を追われた蛮族たちは、絶滅してはいませんでした。


 彼らは地下に広大な領域を築き上げ、虎視眈々と反撃の機会を伺っていたのです。陽の当らぬ地下に潜み、蛮族たちは数千年もの間、ひたすらに待ち続けました。


 そしてついにその時はやってきました。

 ラクシアを超巨大地震が襲い、大地は割れ、空は歪み、都市は崩壊し、通信網も寸断されました。そして大混乱に陥った人族たちに向かって、世界各地の大地の割れ目から雲霞の如く蛮族たちが溢れ出て襲い掛かりました。

 蛮族を率いていたのは大神に等しい力を持つとまで言われた"蛮王"と呼ばれる存在でした。


 インフラが破壊され、大地震でただでさえ前代未聞の被害を受けていた上に、蛮族がまだ残っていたなどと備えていなかった人族たちは、神話のダルクレム襲来を再現するかのように、たちまちのうちに飲み込まれ、都市は次々に滅ぶか陥落していきました。

 栄えていた巨大な国々も次々に滅び、生き残った人々は僅かに残った戦力と魔動機をかき集め必死に抵抗を続けました。


 人族は追い詰められ、もはや絶体絶命となったとき、奇跡が起こります。

 "蛮王"が何者かの手によって倒されたというのです。

 この知らせは世界中を駆け巡り、人族は湧き立ち、蛮族は混乱に陥りました。そしてこれを機に数多くの人族が決死の覚悟で蛮族に立ち向かい、数々の都市を奪還しました。


 こうして神紀文明以来の大戦争は、またも痛み分けという形で幕を閉じました。



【現代 - 冒険と復興の時代 -】

 「大破局ディアボリック・トライアンフ」から300年が経過した世界が、このゲームを遊ぶ舞台となります。


 戦争の爪痕が未だ多く残る世界で、文明は大きく衰退し、人口も減少しました。しかし人々はたくましく復興を続け、一部には巨大帝国を築き上げるに至っています。


 もちろん蛮族たちの脅威は未だ健在であり、小競り合いから国家単位での戦争に至るまで世界各地で争いが続いています。


 また、衰退した文明を再興するため、魔動機文明時代や魔法文明時代の遺跡発掘や調査も盛んに行われており、危険に身を投じる仕事は尽きることはありません。


 やがて、蛮族退治や遺跡調査など危険な仕事を生業とする者たちが生まれました。

 そしてそのような者たちに仕事を斡旋したり、仲介する組織が生まれ、一つの職業として確立されていきます。

 彼らは今では人々になくてはならない存在であり、英雄を夢見る子供たちの憧れになることもあります。


 彼らは危険を冒す者……冒険者と呼ばれます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る