第201話 あら見てたのねの件
〜フンフン、ハハンハン〜ヘヘイヘイ〜
俺は前に大正時代にタイムスリップ(?)した時になんとなく作曲した鼻歌をアレンジした鼻歌(?)を気分良く二部合唱しながら気持ちよく湯船に浸かっていた。
────一人なのに二部合唱とかおかしいって?
ふふん、そこが笑うところだろ?
ここで笑わないと、もう笑うとこないぞ。
俺はいつだってクソ真面目だからな。
たまに垣間見えるお茶目さんな所を見逃したら試合終了だ。
────というか、ここのお風呂はよく声が響くんだよ。
俺の鼻歌が響いて二部合唱になってるんだよ。
────そこんとこ空気読んでくれ。
………自分で言っておきながらなんだが、誰もツッコミを入れてくれないとこでこんな事考えてるのもなんか悲しくなってきたな。
マナ・Bは俺が隅から隅までお風呂場を調査する間、脱衣場の外で警戒することになっているからここには居ない。
よ〜し、温泉を堪能するぞ~
────いや、温泉に異常がないかこの身をもって調査するぞ〜。
「………あぁ、いい湯だな〜。時代劇とかだとこの湯船にお盆を浮かべてお猪口で日本酒をくいっとやるんだろうけどな〜」
「そう思って────ハイ熱燗どうぞ」
「────ありがとう………くぅ~五臓六腑に染み渡るぅ────ってなんだ!?いつの間に!?────って未知博士!?」
そこには白衣の裾を片手で押さえながら熱燗の入った徳利をこちらに傾ける未知博士が居た。
────ここ、男湯だよな!?
どうして俺が湯船に浸かりながら日本酒呑みたいってわかったんだった!?
────って言うか、なんで未知博士がここに!?
────もしかしてVIPって未知博士!?
────あぁ、情報量が多すぎる!!
「────色々言いたい事が有りそうね?いいわよ、なんでも答えてあげる」
そう言いながら未知博士は徳利をお盆に載せて湯船に浮かべて俺の方に寄越すと風呂の脇に腰をおろした。
────な、なんでも答えてくれる?
えっ〜と、それじゃぁ、何聞こうかな…………そうだ。
「────も、もしかして………未知博士って男?」
ぱっかーん
どこからか取り出したハリセンで後頭部から張り倒された。
「どこの誰がこんな美人でお洒落な私を男だと言うのかな?」
「────じゃあ未知博士は痴女なのか」
ぱっかーん
今度は正面からハリセンでどつかれた。
「────VIPより寛いでるおバカさんがいるからなんとかしてくれってマナ・Bに泣きつかれたから直々に私が迎えに来てあげたのだけれど」
「────それじゃVIPってのは未知博士なのか?」
「違うわよ。そのVIPとウィーンで待ち合わせだって言うから私もウィーンに行ったのに、どこかのおバカさんが語呂が似てるって理由で湯布院に待ち合わせ場所を変更しちゃったから急いで日本に帰ってきたんじゃない。ちなみにこの日本酒はVIPへの手土産にするつもりだった超高級品よ」
「────え?超高級品?」
「────嘘よ。売店から適当に持ってきた安酒よ。超高級品は飛行機の中で私が全部飲んじゃったわ」
「────じゃあ酒が入った勢いで男湯に乱入したのか。やだ~!やっぱり痴女じゃん」
ぱっかーん
ハリセンが脳天に振り下ろされた。
「────痛って〜」
「────痴女じゃないわよ。おバカなことばっかり言ってるとアタシの必殺のハリセンを味わうことになるわよ」
「────それについてはもう三回も味わいましたが」
「────あら、そうだった?────でも痴女とか言われるのは不本意だわ。誰がミンチになった貴方を人の形に修復してあげたのかお忘れ?おバカさんの裸は医療ポッドの中でぷかぷか浮いてた時に隅から隅まで見てるから今更なのよ」
「────イヤ〜ん、お婿に行けないかも!」
「────じゃあお嫁に行ける身体に作り直してあげましょうか?」
「────ナイスバディにしてくれるなら………」
────冗談で返したつもりだったが未知博士の目がマジだ。
真剣な眼差しで俺をじっと見つめている。
「やっぱり影響出てるようね………」
「────影響?」
「────う〜ん、友達とかに最近なんか性格変わったとか言われない?」
「────友達居ないんですが」
「あ、そう…………」
未知博士の真剣な眼差しが同情の眼差しに変わった。
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