第200話 いいゆだな、の件

「────はぁ、いい湯だったな。んじゃ帰るか」


「────ブルー、ちょっとそれは困るよ」


「────俺が帰ると困るのか?」


「そりゃ困るよ、ご指名だから」


「────指名料一億万円、いや億千万。キャッシュでくれなきゃ、ぽっくんお家帰りゅ。」


「そんな子供みたいに駄々こねるなって!それに帰るって言っておきながらしっかり浴衣に着替えてるじゃん!」


────今回は久々にマナ・Bが俺のサポートに付く。


────例の輝く白い歯を持つ爽やかなパイロットの操縦するプライベートジェットで近くの飛行場に乗り付けて、そこから貸し切っている温泉まではマナ・Bの運転するリムジンでウィーンと言葉の響きが似ているからと言う理由で俺が指定した湯布院に移動。

一風呂浴びて今に至る。


「────温泉も良いけど、ウィーン行きたかったなぁ」

ボヤくマナ・B。


「────そんなにウィーン行きたきゃ、例の幼稚園の先生とのハネムーンででも行くが良い」


「────彼女はハネムーンは俺の生まれ育った故郷を見たいんだって…………って何言わすんだよ!!」


「────勝手に自分で喋っておいて俺のせいにするな。それに俺はウィーンに行こうと言われてもパスポート持ってないから行けるわけがない。」


「────パスポートとかそのへんはT.O.F.U.がなんとかするって言ったのに………」


「────俺は飛行機とか言う鉄の塊が空を飛ぶなんて信じてないから、飛行機で海外なんか絶対にいくもんか。T.O.F.U.がなんと言おうと断固拒否する!」


「鉄の塊が空飛ぶなんて信じられないって言うけど、ここまでブルーの言う所の鉄の塊に乗って来たよね?」


「────日本国内は別に飛行機いくらでも飛んでるだろ?………え?マナ・Bさんは日本で飛行機飛んでるの見たことないのかしら?」


「────流石に飛んでるの位見たこと有るよ!なんならここまで一緒に飛行機乗って来たよね?俺も!支離滅裂なこと言わないでくれよ!」


「────マナ・Bってば、ああ言いえばこう言う……ヤレヤレだな」


「────ごめん、ブルーにまともな対応を求めてる俺が悪かったよ」


「────そうだな、マナ・Bが悪い」


「────あ〜なんかどっと疲れた!まだこれからなのに!」

マナ・Bが肩を落とした。

────あ〜サラリーマンは辛いのぅ。

あ、俺もサラリーマンだった!


────でもまぁ、マナ・Bをからかって適当な事言ってたが、正直言って飛行機はあんまり好きじゃないからな。

だって飛行機は他の移動手段に比べて事故のモードが多いからな。


────事故のモードモードってなんだって?

────ほら、ぶつかるとかそういう奴だよ。

飛行機には【落ちる】ってモードがあるからな。

それに飛行機はすごいぞ、燃料切れが即落ちるってモードにつながるからな。

船だって車だって燃料が切れたくらいで生命の危機には陥らないからな。


だから燃料切れの可能性が大きい国際線なんか絶対に乗るもんか。


そんなタイミングでマナ・Bの携帯電話に着信が入った。


どうやらVIPが到着したらしい。


「────ブルーは今丁度風呂から上がって着替えて出てきたので、そちらに連れていきます」


「────貴様は俺がいつ風呂から上がってVIPを迎えに行けると錯覚していた?………と言う訳でもう一回風呂入るわ」


そう言うと俺は一度着た浴衣を脱いでもう一度風呂に向かって歩き出した。

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