第3話
佐々木加奈子は、ドアノブをひねった。
「おじゃまぁ。飲み物、オレンジジュースでいいかしら」
まあ用意してきてしまったのだから、断られても困るけれど。
「うん、そこにおいておいて!」
「はいはい。あら、こんにちは。はじめまして」
「あ、はい、こんにちは」
少年は、たどたどしく、でも礼儀正しくお辞儀をした。
高校生。しかも菜々と同い年くらいの。背はあまり高くなく、私と同じくらい。きれいな黒髪、目尻の垂れ方。少しえらが目立つ、そんな顔立ちがどこか___そんなわけないか。きっと考えすぎなのである。
加奈子は少年の耳元でささやく。
「ななったら、学校をほっぽって君を連れてきたのだからね。今まで、家に男の子連れてきたことないのに」
「そ、そうなんですか!?」
照れてる。さすが思春期男子ってとこね。菜々はきょとんとしているけれど、ほうっておこう。
「じゃあ、ごゆっくり。なな、学校には体調不良って言っといたから、今日はその子の面倒を見なさい。それと___君、名前は?」
「小泉和です。」
「そう。じゃあ和くん。よろしくね」
ドアノブに手をかけ、部屋を出ようと___
「待ってください!!」「ひゃっ」
隣りにいた菜々が小さくはねた。
「あら、和くん。なにかしら?」
「ななのお母さん...その...名前、伺ってもよろしいですか...?」
なんで?となるのが普通なのだろう。だが私は素直に質問を受け付けた。
「佐々木加奈子___。」
それが口から放たれた刹那、小泉和の表情は「やっぱり」と言っていたように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます