第2話 

僕は言葉を失った。

なんで?菜々は昨日...それは間違いない。じゃあ人違い?そうだよ菜々って、こんなにアクティブじゃないし___



「私は佐々木菜々!この櫻井高校に通う、高校三年生!」



ささきななささきななささきなな。佐々木菜々。違う___




「そんなはずない!ななは、ななは昨日っ...!」


「昨日?」


「昨日......」




目の前にいるのは菜々だ。佐々木菜々。それはわかっている。ただ___


菜々は、昨日死んだ。僕の目の前で、僕の「さよなら」を無視して。死んでしまった。だから、違う




「だ、大丈夫!?」




なにが?手のひらに落ちる生温かい雫...ああ、涙か。僕、泣いてるのか。情けない。




「はいこれ、ハンカチっ!」




隣で菜々があたふたと手を動かしている。いつもと違っおしとやかじゃなくても、菜々はやっぱ可愛いじゃないか。また僕は、菜々に助けられてしまった___








「...んっ...」




小泉和は今日二度目のお目覚めだ。ってことはさっきのは、夢?だよな、僕は夢を見てたんだ。そうあれは


「___い」


夢であり__


「____ぉい」


妄想であり__


「__おーーい」


現実__


「おーーーーい!!」





うわっ!僕は飛び起き__ごつん。




「いたっ」「いたい!」


「きききききききみっ!おおお顔が近くはありませんか!?」


「ごごごごめんなさい私、むむ夢中になってたからっ!!」




夢ではなかった。これは現実だ。現実味のない現実。隣の、頬を染めた菜々。そう、佐々木菜々。昨日死んでいるはずの佐々木菜々。そして...




「ここ、佐々木菜々様のお宅じゃないですかぁぁぁ!?」






おかしい。おかしいおかしいおかしい。


菜々は、一度も僕を家へ招いたことはなかった。行きたいと言っても、うまくはぐらかされた。それに、菜々はこんなに活発な子じゃあない。しかも、「死んでいる」。まさか、生き返った...とか?いやしかし、たとえ生き返った菜々がここにいたとしても、彼女は患わっていたはず。心臓を___




「あのさ、聞きたいことが色々あるんだ。えっと___」


「和。小泉和だ」


「わかった。かず、さっき、私が死んでる、そう言わなかった?」




そうだ、状況が見えていなかった。今は、菜々が目の前にいて、その菜々は僕を知らないようで、そして僕は___


僕は、身に起こった、不可解で、怪奇的な起こるはずのない物語を、余すことなく打ち明けた。






「なるほど。つまり私はかずの彼女で、病気で死んでしまった。そうゆうことね」


「え、信じるのか?」




僕はやけになって喋ったのだ。まさかこうもあっさりと、受け入れてもらえるなんて、想像できなかった。




「うん。かず、ホントのことしか言えない目をしているもん」


「まあ確かに今まで、アンパンマンの中身はこしあんだと思ってる人のほうが多いとか、ドラえもんは最初は山吹色だったとか、そうゆう嘘全部見抜かれてた!」


「それは別の意見を持つ人がいただけじゃないのかな...」




菜々だ。雰囲気こそ違うものの、目の前にいて僕と話している彼女は、正真正銘佐々木菜々なのである。




「でも、おかしくない?私、かずに会ったことない。」




僕は考える。生き返った菜々。性格の違う菜々。健康である菜々。そして結論にたどり着く。




「わかった。これは僕の生きてるのと違う別世界。つまり何らかの原因で僕は___」




がちゃ。ドアが開く。




「おじゃまぁ。飲み物、オレンジジュースでいいかしら?」




和の思考はそこで終了した。だって、入ってきた女の人。飲み物を持ってきてくれた女の人。それが___




「...嘘、だろ」




僕は、生まれてはじめて、自分の目を疑う。


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