第4話「ワシと喋れるのか?」

 睥睨するグリフォンと固まる俺。


 両者のどちらが優位に立っているかは説明する必要はないだろう。鷲の瞳の色が少しでも変化すれば恐怖に体が反射し、重心のかすかな移動でも腰が抜けてしましそうだ。


 さっきの強気は、勇気はどこにいったんだ俺--


「おい。お主、ワシと喋れるのか?」


(鷲と喋れるのかだって何言ってんだコイツ……)


 なんだその控えめに言って1ミリも面白くないダジャレは。俺の夢の程度ってこんなもんなのか、かなりショックだわ。


「おい。ワシと喋れるのかと聞いている」


「(意識してないんだろうけどキメ顔で言わないでくれ、結構色々と心にくる--)ひあい、できてます……」


 気づいたら掠れ声で返事をしていた。グリフォンの纏う空気が鋭さを増し、焼き尽くすような苛烈さを帯びたからだ。


 死にたくない、理屈抜きの叫びが頭から沸いてくる。夢とは思えないほど……だ?


「ふむ……」


 器用にも人間のように顎に手を当てるグリフォン……妙に微笑ましい考える仕草だ。しかもいつの間にか殺意の波動も消えたから、落差でとても愛くるしく見える。これが吊り橋効果ってやつか、恋じゃないけど。


「お主、レアキャラだな?」


(レア、キャラ?)


「こいつは使えるな……」


 殺意ではない恐怖を感じる目だ。気色ばんだ表情といい、得体の知れない身の危険を感じる。


(しかし鷲でも口の端をあげて笑えるんだな。さすがグリフォン、さすが夢の生き物だぜ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る