第6話 一年後

一年後。









「もう一年たったけれど……」

「そうですね」

「そうですねって……頭冷やしたら帰るんじゃなかったの?」

「チル姉さんは僕に帰ってほしいんですか……?」


彼は上目遣いで私を見つけてきました。私の胸は締め付けられました。


一緒に過ごしてきた一年の中で、私は彼の色々な一面を知りました。二人で沢山、思い出を作りました。どれもかけがえのない思い出です。彼がスマホの中から来たスタンプの住人ってことさえ忘れて、私たちは普通の恋人みたいに過ごしていたのです。


ですが、彼はスタンプの住人。これは許されない恋なのではないかと私は思い始めていました。彼には、彼の世界があるのですから。


「帰ってほしいって言ったら嘘になるよ。けど、私たちは違う世界の住人同士。自分の世界でちゃんと生きなきゃって思うの……」

「……」


彼は何も言わずに、うつむいてしまいました。


私は他に何か言葉をかけようと必死に探しましたが何も見つかりませんでした。


そして彼は顔を上げ、口を開きました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る