苦手と言えば二次創作の転生者。

ヨーダ=レイ

二次創作の転生者について


 すべてを網羅しているわけではないし、例外が数多いるだろうことも想像した上で敢えて極論をぶち上げるが、彼らのあまりの無神経さというか無感覚さが私は苦手である。


 まず「あの主人公たちは他の登場人物たちを人間扱いしていないのかな」と感じることが多い。

 まあそりゃそうだろうな、彼らにとって他の登場人物は飽くまで「フィクションのキャラクター」に過ぎないのだから。


 つまり彼らは結局その物語世界の中で生きていないし、他の登場人物の人格を尊重してはいない。

 人格を持った相手として接するのと、フィクションのキャラクターに対して接するのとでは態度も心情も変わってくるはずだが、彼らにはそれがない。

 もし本物の人間と同様に扱ってソレだというなら怖すぎる。


 もうひとつ、彼らは与えられた力の大きさに無頓着だ。

 たとえば私は隣人のピヨ子さんのスリーサイズも知らないし、同僚のコケコッコさんのギャップ萌えなところも知らない。

 だが転生者たちは「原作知識」としてすべて知っている、下手すると下着や乳首の色まで。

 桁違いの魔力や才能なんぞいらない。これだけでも個人の領分を大幅に超えたチート能力だ。


 人間は9桁の大金を手にしただけでおかしくなる。

 ましてやそれが人知を超えたチート能力、原作知識という名の「関わり合う人間たちすべてのプライバシーに関する知識」なんかをフルセットで与えられた日には正気でいられるはずがない。


 しかし転生者たちはそうならない。なぜなら彼らは「無責任」だから。

 彼らは自分の欲望に忠実だが、大きな力には大きな責任が伴うことを知らない。

 無自覚総受けハーレムなんかその最たるもので、自分の力の大きさを自覚していない証拠だろう。

 無責任だから「無自覚」でいられる。


 そのくせ当人たちが誰かを能動的に愛したりはしない。だから「総受けハーレム」なんてものが成り立っている。

 あれだけ魅力的なキャラクターたちに迫られてもなお「そう」でいられるのは、やはり周囲を人間扱いしていないからだ。


 こんなおぞましい怪物に、私は魅力を感じない。


 むしろ彼らはフィクションの世界に放り込まれてよかったのかもしれない。

 もし現実にいたら、チート能力を巧妙に活用して総受けハーレムを築いて作品世界を大きく変革したように他人の心を弄ぶ、そんな凶悪無比の犯罪者になっていただろう。

 そしてそんな自分の振る舞いにさえ「無自覚」でいられるに違いない。

 「最もドス黒い悪とは、自分が悪だとさえ気づかないことだ」という有名なセリフがあるが、きっと彼らもそんな「悪」になっていたはずだ。


 ……生前は違ったのかもしれない。

 前世は本当に底無しの善人で、本当にそんなチートを授からないと割に合わないような非業の死を遂げたのかもしれない。

 そういえば彼らはトラックに撥ねられたり逆恨みで殺されたり、何かしら非業の死を遂げる。


 そのショックでこんな怪物になったのだとしたら、ひどく哀れに思う。


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