第陸章 逆襲花嫁事変〜律鹿からの贈り物〜
忍武は、戦闘前に律鹿から【
更に、【三明の剣】は【神剣】と呼ばれる【神通力】が込められた【刀剣】なので、1人が扱うのは一振りが限界だから律鹿は【小通連】、律鹿の娘の
元の持ち主が忍武の【始祖・大嶽丸】だったことと、現在使う者がいないということで断り続けるのも失礼だと結論づけて忍武は、ありがたく受け取った。
忍武が手にした途端に、【大通連】は【盾】に形を変えた。サイズは、【特殊部隊】が防御用に使う【バリスティック・シールド】の体を隠す90cm前後の大型サイズに該当するが、身長2m超える巨漢の忍武には手持ちするより腕に装着する【古代ローマ時代】の接近戦スタイルのほうが動きやすい感じなので忍武は左腕に装着した。肩から指先まで隠れるが、巨漢の忍武には【盾】がただの【腕装備】になってしまう。
忍武(これ………【盾】だよな………【特殊部隊】で俺が使うヤツは特注だからなあ。フツーはこんな感じなんだな)
忍武は【広域警察官】(所属を固定されない部所)なので、その優れた体格から【特殊部隊】の出動時には常に駆り出されている。その時に使用する【バリスティック・シールド】は忍武が屈んだ状態で全身隠せるサイズだが、【大通連】が変化した【盾】は屈んでも隠せない。
律鹿「【盾】か!【大嶽丸の一族】は【防御特化】だから良い装備に変化したな」
忍武の内心とは裏腹に律鹿は満足そうな様子だ。
忍武「【シールドバッシュ】とか【パリィ】とかやったら強烈そうっスね」
【派閥】の【長】から不興を買ってはいけないと、忍武は話を合わせる。
律鹿「フフっ………それも有効だけど、その【盾】は例えるなら『突破不可能な城門』って感じかな」
攻撃が通らないという意味だろうか。
【猫叉族】の
律鹿「忍武、リニューアルした【大通連】を試すチャンスだ」
【下級妖魔】が大群でこちらへ押し寄せて来る様子が【俯瞰視】で見えているのに少し驚いていたが、慣れない【知覚】方法だったせいだろう。律鹿は、忍武に【盾】を使ってみろと勧めてくる。
忍武(律鹿様、二千年近い昔から生きてるんだよな………リニューアルって横文字わかるんだ)
結構失礼だが【現代人】の忍武からすれば、生まれ変わり無しで【平安時代】から生き続けている人物が横文字を使うことに違和感が拭えない。
忍武「【盾】になっても名前は【大通連】のままなんですね」
気になっていたので聞いてみる。【三明の剣】なのに別モノになった感がする。質問しながら忍武は【盾】になった【大通連】に【チャクラ】を込める。
【チャクラ】をゴッソリ持って行かれたが、【鬼神族】にはちょっと身軽になった気がする程度である。
律鹿「戦闘行為を行う【
律鹿に昔語りをしている間に、忍武の【チャクラ】で【
律鹿「初めてでこれは上出来だよ。【チャクラ制御】に慣れたら、最低限の【チャクラ量】で展開できるようになる」
君ぐらい体格が優れていたら、ちょっと減量した程度だろうけどね、と律鹿は忍武からゴッソリ【チャクラ】が抜け出て行ったのに気づいている。
忍武「【制御】できるっすよ!初めて使うから、余分に【チャクラ】を回したっす!」
忍武は【盾】がどのように展開するのか知らなかったので、目安より多めに使ったらしい。
律鹿「そういえば、燎殿の御子息の法師殿のほうとは親しいのだったね」
律鹿は、
忍武「洸の双子の妹と、ウチの王子様のスパルタ教育の賜物です」
当時を思い出したのか、忍武は背筋がゾッとして腕には鳥肌が立っている。
律鹿「
律鹿は同情してくれているが、彼が想像したのと忍武がスパルタと称したのとは内容が異なる。
忍武(梓は見た目はビスクドールみたいだけど、中身が【阿修羅】か【羅刹】だからな)
どちらも【鬼】のような姿をした【仏神】である。
律鹿と忍武が会話している間に、すぐ側まで【下級妖魔】の群れが押し寄せて来ていた。
【探知】が共有されているので【俯瞰視】で見えていたが、律鹿が余裕ありげだったので忍武も【チャクラ】をゴッソリ持って行かれているので費やした分は役立つだろう、と考えていたので様子見をする。
そして、1分と保たずに忍武は気分が悪くなった。
朔曰く【下級妖魔】は『底なしのアホ』というのがよく理解できる。
忍武(朔さん………口悪りぃなと思ったけど、あれは適確な表現だったんだな)
【下級妖魔】は、忍武が展開した不可視の【球体状】の【盾】に激突──────────体当たりを試みているかもしれないが──────────しては破裂を集団で繰り返している。
最初は忍武は、体当たりで【起爆】するタイプかと思っていたが律鹿が「相変わらずの馬鹿の1つ覚えだな」と冷え切った声音で蔑んでいたのを聞いて、それがただの『数で押せ押せ攻撃』と理解した。
集団で揃って激突その後破裂していくので、【盾】の効果で飛び散る【血】や【肉片】がこちらに届かないのはわかっているが、ヘドロの泥色が混じったような濁った緑色の血液が【不可視の球体】の大半を覆う頃には、忍武は見た目の気分の悪さにげんなりしていた。
律鹿「だいぶ汚されたね」
忍武と違い、律鹿はお掃除気分で【鬼道】の【仙道・清浄】を使って視界をクリアにする。
【鈴鹿御前】は【神女】だったので、その末裔たちは【鬼道】を得意とするという話は事実のようだ。【清浄】は汚れをキレイにするだけでなく場の【浄化作用】が働く【仙術】になる。【仙術】は【神仙の術】なので、【古族】でこれが使える者は【神格化】している証明になる。
忍武は、ありがとうございます、と礼を言う。素人が創ってもこんなひどい有り様にならないゾンビ系ホラーを見せられていた気分の悪さだった。そのせいで気づいていなかったが、【清浄化】されてスッキリすると、【球体】の【盾】の【維持】を放置していたことに気づいた。
【盾】がしっかり機能していたおかげで、返り血がかかるのは御免こうむる汚い色彩の血液を完全シャットアウトしていたので、ここで綻びが出たらアレが体にかかって気持ち悪いと忍武にしてはデリケートな考えをしている。
律鹿「忍武、【盾】の【維持】が気になってるのかな?」
律鹿にはすぐ気づかれた。流石年の甲と忍武は感心したが、年の甲って思ったね、とこれまで見抜かれてしまった。
律鹿「【球体】の形状だから【結界】っぽいけど、【維持】の必要はないよ。1度展開したら、忍武が解くか物理的に破壊されない限りこの状態さ」
例えば、今中にいる律鹿が忍武を眠らせても【盾】はこのまま現状維持だそうだ。
【探知】では、こちらには敵襲がなさそうなので【盾】を解除して【茨木童子の城】へ戻ることにした。
その時、黒曜石のような美しい輝きの【鱗状】のモノが動くのが目に映った。
新手か、と忍武は身構えるが律鹿は敵ではない、と告げた。
律鹿「【北海黒竜王】の【竜体】だ。法師殿は【陵家】の【血族】でもあったね。【陵家】は『男』だけに【遺伝】する【特異能力】がある」
忍武は、アレのことかと心当たりがあった。
忍武「【幽体離脱】っすよね」
律鹿「実体がある【幽体離脱】だから【分体】と言うほうが解りやすいかな」
正確には【幽体離脱】しているのは本人ではなく、『【前世】のいずれかの人物』なのだが【前世】が『人物を構成する一部』として考えるのが【回生の術】だと理解している者、いない者に分かれる。
忍武「じゃあ、洸が【竜体】になったわけじゃないっすね!」
律鹿「それはない。そもそも、法師殿は【竜化】できないよ【人間】だからね。【はじまりの前世】が【北海黒竜王】だった【記憶】を【幽体離脱能力】で【具現化】させたのが今のこの状況」
忍武は、【猫叉族】の
律鹿「【闘戯結界】の範囲が広いのが気になっていたけど………これがその理由だったようだね。【眠れる竜】を出すことを考慮した範囲だったわけだ」
それは忍武も納得だ。【茨木童子の城】の外周辺に【東京ドーム】30〜40個分に該当しそうな範囲である。ただし、【結界】の高さは地上から天を突き抜けているので、実質高さがわからない。
いくら荒くれ者が集まっているからと、気合い入れすぎと思っていたが【竜】を暴れさせる目的があったわけだ。
忍武「【竜】を暴れさせるには、範囲が小さくありませんか?」
忍武は、マンガなどで【西洋のドラゴン】が暴れている描写を思い描いている。
律鹿「【南海紅竜王】や【西海白竜王】なら、【四国】【北九州】そしてこの【鬼ヶ島】を【闘戯結界】で覆わないと大惨事だね。けど………【北海黒竜王】は前者2体と比べれば、おとなしい【竜】なんだよ」
おとなしい【竜】というのがどんな感じなのかわからないが、忍武はこの【闘戯結界】が最適サイズと思っていいのかなと理解した。
そして、ポツポツと雨が頬を打つのに気付いた。
忍武「えっ!なんで雨が【結界】をすり抜けてる?」
【闘戯結界】は展開された後は、いかなるモノも侵入、脱出ができない。それは【自然現象】とて例外ではない。
律鹿「忍武は、見た目は脳筋っぽいけど実際は賢いね。これがオカシイことだって解ったね」
これは見た目はアホ、中身は利口と言われたかとチラッと考えた忍武だが賢いは褒め言葉なので、ここは素直に礼を言った。
忍武「【結界】内の誰かの【術】っすね。洸ですか?」
【結界】の【陣】を描いたのが洸だから、『雨を降らせる』という命令系統を仕込むことも可能ではないかと、忍武は深読みしたが律鹿は単純明解だと教えてくれる。
律鹿「この雨は【北海黒竜王】の【神通力能力】だよ。法師殿は【黒竜王】を【幽体離脱能力】で【分離】させただけ」
ただし、【風魔頭領一族】の【陵家】の【因子能力】──────────【遺伝子】による【情報能力】──────────なので、今風に言うと【家系チート】って言い方になるのかな、と律鹿は言った。
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【妖魔】を外で間引くチームと、内で待機しているチームに分かれています。
時系列が平行線になる話が続きます。
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