第陸章 逆襲花嫁事変〜闇神・カオスの憂鬱〜
前と内容が被ります。
【闇神】視点なので、【柳生十兵衛】が存在しない世界の歴史を後半に少し書き足してます。
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至高の御方を前に、
【闇神・カオス】は、森宗意軒を筆頭に土下座する
カオス「その者は………中身を入れ換えたか」
一目で丸橋忠弥を本来の【肉体】の主の【魂魄】を体外へ出し、【死人返り】で【黄泉返り】させた【魂魄】と入れ換えた【
森宗意軒「はい。瀕死の重症で【魂魄】の生命力が尽きそうでしたので………若い健康体の【肉体】を朽ちさせるは惜しいと思いました次第でございます」
つまり、【肉体】はまだまだ需要があるが重症を負って【魂魄】が生命を放棄しそうだったから有効利用した、ということだ。
カオス「コスモスには悟られておらんだろうな?」
【カオス】は、口やかましい『水と油のような相方』の表情が脳裏に浮かんで眉を顰める。
森宗意軒「屋敷内部を【結界】で遮断した上で、【儀式】を行いましたので【換生術】の決定的瞬間は、誰にも知られていないでしょう」
森宗意軒の意見には一理ある。【カオス】自身が相対して初めて【換生者】とわかった。【渾沌】を司る【闇神・カオス】と【秩序】を司る【光神・コスモス】は自然の摂理に反したものには目聡い。その【カオス】ですら今まで気づいていなかったので知らぬ存ぜぬで【カオス】はしらばっくれてよさそうだ、と考える。決定的瞬間に気づいていない時点で【コスモス】も同罪と凹ませてやろうなどと目論んでいる。
【起源の物語】では【闇神・カオス】は【諸悪の根源】か【ラスボス】かのように伝えられているが、実際は【カオス】は何もしていない。【カオス】の【神の軍勢】に当たるのが【超魔】でこの【超魔】の【最上位】が【真魔十三忌将】なので、配下が勝手に暴れて迷惑をかけた事を全て【カオス】の責任にされているという【不運】な【亜神】、それが【カオス】だった。
カオス「それで………拉致して来た【柳生十兵衛】が【妖魔】に【魔堕ち】したのは事実であろうな」
【カオス】はお前たちは全員【柳生十兵衛】に恨みを抱いている積年の恨みを晴らそうとでも考えたか、と拉致理由を追求する。
【妖魔】とは、【異形の者】を指す。【超魔】にも【下級】に【
【超魔】は【カオス】の【神の軍勢】だが、【傀魔】は知能が低く言語を正しく理解しないので【カオス】にとっては頭痛のタネである。ゆえに【異形の者】として討伐されても、それが【正当防衛】と判断できる状況なら【カオス】は是非も無しとみなして報復していない。意外と【人間】を理解しようと努力しているようだ。
【妖魔】は、かつて【原初の亜神】たちが【旧神】と協力して【封印】に成功した【旧支配者】の【残党】で【復活】の支援を目的として活動していると考えられている。
【妖魔】と【超魔】が混同視されている理由の最大の理由は、【妖魔】の【王】的立場の【妖主】があり、その下に【妖貴】という【上位種】、【
しかし、【妖魔】と【超魔】は敵対している。【不倶戴天の敵】と言っても過言ではない。その理由は【旧支配者】は【カオス】の敵だからだ。
森宗意軒「カオス神様の仰せのとおりです。我ら、【柳生十兵衛】の【転生戦士】を前に、身の内に燻っていた
森宗意軒は、最初はしおらしく語っていたが【柳生十兵衛】と言った瞬間、年甲斐(?)もなく興奮していた。
天草四郎「森先生、アレは本当に【柳生十兵衛】だったのでしょうか?あの者は、随分と俗物のように見受けられました」
天草四郎は、自分の記憶に残る【柳生十兵衛】という【剣士】は飄々として掴み所がないが【剣】に関しては、どこまでもストイックだったと言った。
由比正雪「私も、四郎と同感です。【柳生十兵衛】は私の知る限り【宮本武蔵】と【名もなき美剣士】のふたりだけ敗北を喫しておりますが、良き経験を得たとそれすら【兵法】の糧としておりました」
特に【宮本武蔵】との対決で右目を失うという大打撃を受けている。由比正雪は、【十兵衛】の異母弟の【友矩】と親交があったので、【十兵衛隻眼秘話】を聞いていた。
丸橋忠弥「【名もなき美剣士】って………自分で名乗ったのか?だとしたら、恥ずい………」
丸橋は、【肉体】の元の持ち主の記憶が合併しているのか、現代の若者風の言葉遣いが自然に口をついて出ている。
カオス「そもそも、【蟲将】が拉致したのは【柳生十兵衛】であって【柳生十兵衛】ではない人物だ」
【カオス】は、【光神】【闇神】が手を加えて【改変】した【世界】の話を聞かせる。
カオス「【柳生十兵衛】は己の死期を悟った時、【剣士】として最期を飾りたいと【並行世界】の………【a】という仮名にしておくか」
【カオス】は【並行世界】に便宜上、【a】と仮名を付けて話を続ける。
カオス「【a】から【柳生十兵衛】を【転移】させて血闘を行った」
まったく「自分を倒せるのは自分だけ」という理由で後先考えずに、理解に苦しむと【カオス】は当時の労働を思い出したのか小言をぼやいている。
森宗意軒「お待ちくだされ!カオス神様のお話を遮る無礼を承知でお聞き申し上げます!【転移】と申されましたか!」
【カオス】は言った、と肯定してからそれが【世界初の転移術】だったことを思い出した。
カオス「【
本当に体を張ったぞあの【能役者】はその後の【舞台】が中止になったからな、と【カオス】は言う。
森宗意軒「………それは、大層な集中力と【チャクラ】を要したでしょう………」
【能】が【転移術】になったのか、と森宗意軒は唖然とする。【世阿弥】が【伊賀忍】だったからこその結果と言える。一介の【能役者】では【転移術】が成功を修めても【術師】はおそらく無事では済むまい。
カオス「【最初の転移術】に興味があるなら、今は………【土御門家】に辛うじて残っているはずだ」
【金烏玉兎集】に載っているが、現在の【土御門】の【陰陽師】に使える者はいない、と【カオス】は断言した。
正雪が【土御門】か、とつぶやいている所を見ると【最初の転移術】に興味が惹かれたようだ。
【超魔】が【最初の転移術】に着手し始めたら、きちんと名前を決めなければならない、と【カオス】は考える。【転移術】は、【闇属性魔法】や【摂理】に逆らう【術式】なので、むしろ【カオス】の専門分野だ。【コスモス】も【光の反転魔法】──────────単に【コスモス】が【闇】という単語を避けただけ──────────で【転移術】はかなり強引に【光属性】にねじ込んでいるが本質は【闇属性】なのだ。専門家としては命名の権利を取り付ける必要がある、と【コスモス】には絶対譲らないと、対抗意識を密かに燃やしていた。
丸橋忠弥「で、カオス様!【十兵衛】vs【十兵衛】の血闘、どうなりやしたか!」
丸橋は血闘の行方が気になるようだ。言葉遣いが【肉体】の持ち主の品のある口調ではなく、べらんめえ口調が混ざっているのは、やはり【丸橋忠弥】と【肉体の主】の記憶が合併しているのだろう。
四郎「貴様!カオス神様への口のきき方に気をつけろ!【至高の御方】なるぞ!我らは【使徒】に過ぎん!」
四郎は、丸橋の言葉遣いを注意する。丸橋は、【使徒】ってエヴァ◯◯◯オンみたいだな、とツッコミを入れているが【江戸時代】の人物の四郎に【ロボットアニメ】がわかるはずもなく、スベっている。
【真魔十三忌将】に敬虔な【クリスチャン】がいて、その者が【カオス神様の使徒】と名乗っている。四郎も歴史上では有名な【キリシタン】なので、それに習って自ら【使徒】と言っているのだ。
カオス「血闘の行方が気になる者もいるようだ………結論を言えば、この世界の【柳生十兵衛】が勝利し【a】の【柳生十兵衛】は討ち死にらしい。しかし、こちらの【柳生十兵衛】も勝利したが致命傷を負って瀕死の状態だったので、間もなく息を引き取った。故に勝負は、両者相討ちの引き分け」
【カオス】は、【十兵衛】が勝利条件を決めていなかったので勝負は引き分けになるようだ、と言った。
由比正雪「確かに………御前試合ならば試合終了まで意識を保っていた者の勝利ですが、勝負となると条件が付きますから………」
正雪は【カオス】に、どなたから聞いたかと訊ねる。【カオス】の言い方が人伝に聞いたような口調だったからだ。
カオス「
【雷神・鬼童丸】の子は双子だ。しかし【カオス】は倅らとは言っていないので、どちらか片方だろう。
カオス「【五代目小太郎】………は双子のふたりで名乗っていたな………【火】を操るほうだ」
どうやら【カオス】は
森宗意軒「現在は、【風魔の先代頭領】………元は【山の民の王・
【闇嶽之王】の名は【超魔】たちの間では、【妖主・
カオス「【古代の蛇神】か………味方になってもらえないのは悔やまれるな」
【カオス】は当然、【妖主】の【封印】の経緯を知っている。そして現在の【闇嶽之王】は【カオス】を【仇】としている【甲賀望月一族】の【
カオス「鬼童丸の倅が一部始終見ていたから、【妖魔】と化したアレの正体には気づいているだろうな」
【妖魔】に【魔堕ち】した十鎖が、【柳生十壱兵衛】としてこの【世界線】で生きていたことに【改変】された【a】の【柳生十兵衛】だと教えて貸しを作ることができない。
四郎「僭越ながら………カオス神様、【a】には【柳生十兵衛】は存在しなかったのでしょうか」
四郎にとっては【島原の乱】の鎮圧に【幕府】側に付いていた【柳生十兵衛】の【隠密行動】で内部に【内通者】を仕込まれ、最終的には【自爆】にまで追い詰められたので、もしも【柳生十兵衛】がいなかったら生き残れるまでは考えていないが、【自爆】して凄惨な最期を迎えることにはならなかったのではないか、と希望的観測をしてしまう。
カオス「【柳生十兵衛】に【クーデター】を邪魔された四郎と正雪には話しても良いか………」
カオスは、まずこの【世界線】では【柳生宗矩】の嫡子は【双子】で兄は【十兵衛】、弟は【十壱兵衛】となっていると告げる。
カオス「【a】の【十兵衛】を【十壱兵衛】とし、【裏柳生】の【頭領】という形に【改変】した」
森宗意軒「ふむ………では、我々が【島原の乱】【由比正雪の乱】で対峙したのは【十壱兵衛】に【改変】されておるのですな」
【歴史改変】を難なくやってのける【神】という【存在】に改めて、畏怖と尊敬の念を確認した。
【カオス】は、森宗意軒が話を呑み込むのが早くスラスラ会話が進むのは、非常に気分がいい。
カオス「そうだ。この【世界線】で【柳生十兵衛】が【裏柳生】として活動した全ては【柳生十壱兵衛】の功績として【柳生武藝帖】に記されている」
しかし、あまり目立つ【改変】は混乱を招くと【コスモス】は【柳生一族】の【家系図】には【柳生十壱兵衛】の名を残さないようにした。
カオス「まあ、後付けなので致し方なしだ」
【亜神】側は、人類史上初の【転移術】を歴史に残したいのであって、割り込んだ【人間】の生涯にはあまり配慮していなかった。
森宗意軒「
【カオス】は、そうだと答えた。そして【a】の【柳生十兵衛】のいない【世界線】は、【島原の乱】は長い膠着状態が続いたがやはり内部崩壊で終結したので、事象の結果としては変わっていないと告げた。他の【並行世界】との違いは、【a】は【島原の乱】で【
四郎「怪死………ということは、【怪異】が絡んでいたと」
【傀魔】は知能が低いので、度々【人間】を襲う。驚かす程度なら悪戯で済むが害を成すこともしばしばある。四郎にとって寺沢堅高は消えてほしい人物だったので、どんな最期を迎えていてもどうでもよかったが怪死という極めて異常な死を意味する言葉に引っかかった。
カオス「【怪異】というより、四郎………お前に殺された。それも、首と四肢を捩じ切られるという異常な有り様でな」
四郎「………私には、そんな【異能力】はありませんが………」
捩じ切るという表現に【異能力】が絡んでいると考えたあたり、四郎は知能が高い。
カオス「儂が授けた………あまりにも四郎が不憫でならなかったのだ。【漂泊の者】の娘と四郎は、娘が生きておれば、恋仲になっただろうからな」
【漂泊の者】は高校生で、彼女はどうやら【ゲーム世界】に【異世界転移】したと思い込んでいた、と【カオス】は言う。いわゆる【乙女ゲーム】と呼ばれる【ゲーム】で【キリシタン侍】と【恋愛シュミレーション】の設定だったようだ。
この世界の【
カオス「賢い娘だった。【島原の乱】の【内通者】は悉く言い当てられ、討伐された。焦った寺沢は娘を射殺した」
【カオス】は【タネガシマ】(【鉄砲】と呼ばれる【
四郎は微妙な表情をする。初恋は【マリア様】です、と豪語する位【キリスト教】に傾倒しているので生身の女に興味がない。むしろ、女は勢いや圧が怖い。
四郎「私が女に懸想する………というのは信じ難い話ですが、カオス神様のお言葉は絶対です。【並列世界】の話ですから、そういう血迷ったこともあったのでしょう」
【並列世界】なので自分であって自分ではないが、ヒドイ言い様だ。盲目的に【カオス】を慕う四郎の信心深さに【カオス】は若干の重圧を感じる。
森宗意軒「カオス神様、【島原の乱】の感じでいきますと、【慶安の乱(由比正雪の乱)】も自滅したのでしょうな」
【柳生十兵衛】という最大の障害が消失していた所で、歴史に大きな変動はなかったようだ。それどころか【柳生十兵衛】がいないほうが大惨事になっている。敵対関係なので、認めたくなかったが【柳生十兵衛】という【人間】は【英傑】と呼べる資質の持ち主だった。
カオス「そちらのほうは………丸橋忠弥が行く先々で泥酔しては計画を漏らしていた」
これが【人間】なら気を遣って、部分的にぼかして語るが【カオス】は【亜神】ゆえに包み隠さずありのままを話す。
四郎「貴様のせいか!」
四郎は瞳孔の開いた視線を丸橋に向ける。並外れた美貌の持ち主なので全員が一瞬、背筋に怖気が走った。
丸橋「いや………【別の世界】の話じゃね?」
今どきの若者風の口調が更に四郎を怒らせる。
四郎「そのチャラい話し方をやめろ!」
チャラいという言葉の使い所を知っている四郎も、丸橋に感化されている気がする。
正雪「落ち着け四郎、丸橋が泥酔して口を滑らせてしまうのは、こちらの世界でも大差ない」
正雪は庇ったつもりのようだが、丸橋に結構なクリティカル口撃になっていた。
丸橋「俺………生き返って大丈夫?」
自分の存在が結構な地雷の気がしてきた。
カオス「その【肉体】の持ち主は、堅実な人格だったようだな………そこへ丸橋が入って、今の人格に【変質】したと見える」
【換生術】というのは、【肉体】の乗っ取り行為だが【肉体】の記憶と【魂魄】の記憶が【合併】して良い方向にも悪い方向にも向かう。どちらに傾くかは【運まかせ】だが、丸橋は【吉】と見ていいだろうと【カオス】はここまでの観察でそう判断した。
森宗意軒「【慶安の乱】は概ね歴史どおりでしたか………」
森宗意軒は、【柳生十兵衛】のいる世界といない世界を比較して、【英傑】の資質がある者が与える影響を推し量ろうとしていたが、この【世界線】の【慶安の乱】における【柳生十兵衛】は活躍したというよりこれは、一町人として『市中引き回しの末に斬首され、刑場に首を晒される』はずだった【由比正雪】を【切腹】させて【武士】として最期を飾らせたという結果に導いたに過ぎない。【学者】の森宗意軒には理解が難しいが、【豊臣秀頼】の【落とし胤】という本来なら【武士】として生涯を送る可能性があった【由比正雪】にとっては悔いのない最期だったのだろう。
カオス「【a】での丸橋の【処刑】後からの残党狩りは成されなかった」
なぜなら、【三代将軍・家光】に縁がある地で【切腹事件】が多発したから、と【カオス】は【由比正雪の乱】の結末を話した。
カオス「【クーデター】は不発だったが、正雪は女に扮して【大奥】で切腹して【江戸城】は騒乱の大混乱だったのだから、かなり動揺させた成果を上げている」
【カオス】は【亜神】基準なので、動揺した程度に捉えているが、【大奥】に男が侵入して【自刃】するという事態は【幕府】や【外様大名家】に激震が走る大事変だった。
【カオス】は、ひとりの【人間】に歴史を変えるほどの力は無いと結果が示されただけでも【亜神】としては『苦労した甲斐はあった』と【亜神】にとっては【実験検証】に過ぎないことのようだ。
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柳生十兵衛が隻眼になった経緯は諸説あります。(隻眼ではなかった説が史実らしいです)
本編では、宮本武蔵と決闘して隻眼になった説にしてます。
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