第陸章 妖狐の花嫁が破滅した日・起
前半部分は、現在の話です。後半部分は回想になります。
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朔「落ち込んでる場合じゃねえぞ!遙と梓の【記憶念写】の中にトンデモねえのがあるじゃねえか!」
アイツらは肝心なことを黙秘しやがって、と
【念写】で開示されているので黙秘にならない気がするが、遙も
【
更に【最澄】の優秀さが際立ったのは、情報の一部が【風魔陣営】プラス玲鵺と【水戸家】とは異なる──────────正確には【水戸家】には開示されていない──────────箇所がある。それは【夢見】というハズレない【未来視】が可能な【預言者】との接触手段を遙と梓が持っていることを【最澄】は【水戸家】には隠蔽してくれている。
【
ゆえに、血の繋がった兄弟姉妹の甲や壬ですら気軽に会うことを許されていない。しかし、丁は甲と壬の【三世代目】に丁と【接触】可能な【異能力】を持つ者が現れることを姉と兄だけに【預言】を託した。
あろうことか、【古代中国神話】の【聖者】が【回生の術】で【孫】として生まれ変わるとは思いもよらなかったが、【
結論を言うと【盤古】は丁の【夢の中】へ出入りが可能という破格の【能力】を示した。もっともこれはごく一部の【能力】に過ぎないが、厳重な警護と監視のある丁ヘの面会は【上位国民】と呼ばれる【上流階級層】が優先で、順番待ちが必須である。丁の【夢の中】へ出入り可能というのはこれらすべて無視、無効になるのだ。
しかし破格の【能力】には【制約】がある。まず、【創世神聖遺物・盤古】が必要。次に【盤古】を扱える【術師】が必要となる。更に問題点が【盤古】が使える者なら同じことができることが最大の欠点だ。
この【盤古】の【能力】で丁の【夢の中】で接触を図った遙と梓は、丁から【妖魔】の【豪族級】が攻め込んで来る【預言】を託されていた。結構重要なことなのだが、黙秘していた理由のひとつは【水戸家】の者の存在だ。【風魔】以外の外部の【人間】にこのことを知られてはならない。
もうひとつは、遙と梓は丁を全面的に信頼していない。祖母・甲と祖父・壬の妹なので大叔母に当たる親戚だが、丁は内面に得体の知れないものを抱えているような気がして丁の【預言】も『当たるも八卦、当たらぬも八卦』程度にとらえている。
玲鵺「あの小娘………
引導を渡してやる、と背筋が凍りそうな玲鵺の声音に
空海「引導はやり過ぎだろ………」
この場合の『引導を渡す』は、『【地獄】へ送ってやる』を意味する。この【地獄】は比喩表現ではない。【
【古族・鬼神族】【鬼人族】の【種族スキル】に【
桂「落ち着け。玲鵺、お前………頭にきてるせいで冷静さを欠いているぞ」
【女】で【男】は変わる──────────その逆も
洸「こいつホンモノの玲鵺じゃなくて、【影武者】なんじゃねえのか?」
別人レベルの変貌ぶりだ。
國光は、【成人の式典】を【茨木童子の
忍武「【古族】にとって【花嫁】は、一心同体に等しい。せっかく目こぼししてもらえて生き延びられたのに………【茨木の】、お前さん…なんであの場で始末つけなかった?」
会話の内容が何やら殺伐とした雲行きになってきた。
【茨木童子の
【茨木童子】は【
【酒呑童子】の【派閥】は【古族】にも【人間】にも影響力が大きいので、【鬼神族】【鬼人族】は勿論、【琉球】からわざわざ【キジムナー族(小鬼族)】まで参加して【古族・鬼】が全集結していた。他の【種族】は、葛葉の【妖狐族】や珍しいことに【東北】から【
こんな錚々たる顔ぶれに、過去最多の参加人数の【宴】で『事件』が起こった。
【茨木童子の
【宴】では始終、玲鵺が麻衣那を側から離さず麻衣那に近寄ろうとする者は麻衣那の友人以外──────────麻衣那の幼馴染みが他【種族】の【古族】とその【花嫁】である──────────は影すら踏ませない雰囲気で害虫を駆除するように、玲鵺は追い払っていた。麻衣那は、【古族】は【上流階級】の方々とは接点があるから『けんもほろろ』にして大丈夫か気遣っていたが、【茨木童子の
周囲は、【花嫁】とラブラブ雰囲気に玲鵺別人説まで飛び交っていたが、【花嫁】以外への対応はこれまでどおりだったので玲鵺本人だと納得した。
【宴】は基本3日3晩行うことになるので、【古族】たちは会場に宿泊する。会場は【茨木童子の
【人間】が【宴】に参加するのは初日だけなので、今日が一番多くの人が会場施設内に集まっている。
事件が起こったのは、麻衣那がお手洗いに行った時だった。流石に玲鵺も婦人トイレには同伴できない。入った時点で変態扱いされる。仕方なくロビーで待っていた時に、麻衣那が入った婦人トイレから悲鳴と【妖力】の気配がした。
麻衣那には玲鵺自身の【分体】を攻撃主体と防御主体の2体付けている。外見は【コルポックル】という【北海道】の植物に棲む【精霊】に似せて【小人サイズ】にしているが、その2体は玲鵺の【
【妖力】の気配を察した他の【古族】が緊急事態に集まって来て、【防御】が得意な者は参加している【人間】を宴会場に集めて防衛に専念していた。忍武は、こちらの防衛陣営にいた。忍武と共に来ていた昴は──────────【三代目国王】の王子殿下であるから当然、【宴】には呼ばれる──────────騒ぎのほうを見て来ると言って、見に行った。
突然の襲撃?(詳細はまだ不明だが)騒ぎではあるが、一番多く【人間】が集まっている宴会場が狙われていないので、阿鼻叫喚の惨事にはなっていない。
玲鵺の目に、片腕と片足を焼かれて酷いケロイドを負った麻衣那の姿が映った。自力で避難して出て来たのだろうが、力尽きて倒れる。近くにいた【古族】が容態を見ようとしていたのだろうが、その者を押しのけて玲鵺は麻衣那の元へ駆け寄り人目も憚らずに取り乱した姿を晒した。
玲鵺を落ち着かせようと【古族】の【種族代表者】らしき人物が、話しかけるが悉く「失せろ」「それ以上近づいたら容赦しない」など、第三者から見れば感じの悪いことこの上ない言葉を投げつけているが、そこは【古族】だ。【花嫁】がいかに重要かの理解が得られているので、少し距離を取った位置から玲鵺を見守りながら【茨木童子の
麻衣那は、苦痛に満ちた浅い息をしていたが少し落ち着いたようで、小さな声で「………を殺さないで………」とつぶやいて気を失った。意識が失くなった麻衣那を見て、更に取り乱しそうになる玲鵺を押さえ込んだのは【人間】だった。
その人物を知らない【古族】はいない。玲鵺を押さえ込んだ【人間】は【風魔総帥】
影連は妻の
甲は「こんな大勢の前で醜態晒して情けないボウヤだね」と言いながら「患者を見せな」と玲鵺から麻衣那を取り上げる。
成り行きを見守っていた【古族】たちは、「あのお二方に任せれば大丈夫だと」安堵したが、玲鵺の暴走は未然に防げただけに過ぎず依然気の抜けない状態だった。
しかし、事態はすぐに収まる。
婦人トイレから
葛葉に話しかける若者がいた。褐色肌にプラチナブロンドの見目の整った【人間】の青年だ。絶世の美女の葛葉にナンパ青年が近づいたように見えたが、次の瞬間【古族】の【獣人】は全員その場に平伏した。
【古族】の割合は【獣族】が7割を占める。騒ぎがあった場所にいる【古族】はほとんどが【獣人】だった。
葛葉に話しかけた褐色肌の青年は朔だった。朔は平伏した【古族】たちは葛葉にビビったと思っていたので、葛葉に恐怖政治は良くないぞ、と注意するが葛葉から、この者たちは【王】である貴方様に
【獣族】は、今は【人間】の気配しかしないのだが朔が【
朔は、これ俺に向かっての土下座、と驚いていたがそれより先に白黒付けることがあるので、平伏している【古族】たちに
一同の関心が朔から葛葉が放り投げた男女に移る。
朔が男のほう──────────まだ若い十代くらいだ──────────を葛葉の下僕だろ教育不行き届きかと辛辣な言葉を葛葉に言うが、【王】と認めている者の言に誰も文句を言わない。更に朔は、事態は最悪だと告げる。
状況を見れば、麻衣那の負ったヤケドから【妖狐族】の【
朔は、この場にいる【獣族】の代表に前へ出るよう命じて、葛葉にそれらの人数が【獣族】全ての【種族】の何割かを訊く。
【獣族】ではなかったので離れた位置にいたが、【
【茨木童子の
だが【妖狐族】が一族に繁栄をもたらす【花嫁】を手放すことを嫌った。葛葉は面倒事ばかり起こし、他の【古族】たちの評判も悪く、ありえないぐらいの浪費家の愛美理を【妖狐族】に迎えたくないというのが本音だ。
朔は、この手の話には【証人】が必要なので宴会場へ全員戻るよう告げる。甲が重症患者は医務室へ連れて行く麻衣那は席を外させると断言した。武力行使しても絶対に麻衣那は連れて行くことを許さない、そんな雰囲気を纏わせていたのが怖い。甲なら【古族】全員を全滅させるぐらい訳ないことだ。影連は宴会場へ戻る意思表示をしていた。玲鵺が麻衣那から離れたくないと言うのを引きずって連れて行くのが影連の役割だからだ。
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