第11話 "紫毒のスコルラ"リッテ
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名前:リッテ=チェロータ
種族・性別・年齢:スコルラ・女性・16歳
レベル:209 冒険者ランク:E
ジョブ:<ディフェンダー>
スキル:【攻撃誘導】、【気配察知:初級】、【気配遮断:初級】、【盾術:初級】、【毒付与:中級】、【毒耐性:中級】、【麻痺付与:中級】、【麻痺耐性:初級】
パラメータ:体力F 筋力E 防御力C
敏捷D 魔力F 耐魔力D
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『鑑定』してみると、確かに状態異常のスキルが飛び抜けている。このレベルで中級ともなると、かなりの鍛錬を積んできたのだろうか。それとも”スコルラ”という種族の特性なのだろうか。
そういえば、『鑑定』にパラメータの項目が追加されている。ジョブに就くと、ステータスの項目が戦闘向けに追加されるらしい。パラメータとは即ち、同じランクの中での相対評価とのこと。俺たちのジョブなら初級職の中で比べたうちの上中下が分かるらしい。
どうあれ、リッテが頼りになることは間違いなさそうだ。チユキと頷き合うと、チユキからリッテへと手を差し伸べた。
「リッテちゃん、私たち初心者で頼りないかもしれないけど、精いっぱい頑張るからよろしくね?」
差し伸べられたその手とチユキの笑顔を見比べて、リッテは不安げに呟く。
「私は"
覚束なげに目をキョロキョロとさせながら、不安げにチユキを見て、確認を促していた。そこまで怯える様子にチユキは困惑して、アンルさんに問いかけた。
「あたしはリッテちゃんと組みたいのだけど、何かまずいことがあるの?」
チユキの言動に若干の苛立ちがこもっている。アンルは耳をピンとさせて、チユキの問いかけに毅然と答える。
「紫の髪色、頭頂にサソリの突起、黄金の瞳。これが"スコルラ"という種族の特徴。その強力な状態異常スキルによって、この街の宗教戦争では暗殺役として恐れられたんです。
もちろんスキルをどう使うかは、その人次第。でも、"スコルラ"全体を暗殺者として
その偏見には事実の一端もあります。ある程度鍛錬した"スコルラ"なら、状態異常耐性のない冒険者の暗殺は造作もないことです。まして背中を許している仲間なら、寝首を
アンルさんは警告するように、これまでと雰囲気を一変させて、厳しく決然とした口調で断じた。チユキは半ばにらみつける様に、アンルさんの言を聴いている。
張り詰めた空気の中、アンルさんは目を閉じて、犬耳を急にへたんと緩ませた。そして、元の垂れた目つきに戻って、口元を緩めて続けた。
「でもですねー。そんな偏見の中、リッテちゃんは健気に頑張ってるんですぅ。誰も組んでくれないけど、森の深部まで行って採集の依頼を何とかこなして。そうしてスラムの孤児の集まりを支えようと、懸命に頑張ってるんですぅ。
だから絶対にリッテちゃんは報われるべきなんですー。誰かがこの子を手伝ってあげるべきなんですぅ」
若干の涙を浮かべながら、アンルさんはリッテを擁護していた。チユキもそれに釣られて、目の端に涙を浮かべつつ拭っていた。そして、俺に確認することもなしに、リッテの手を取って両手で包み込んだ。
「うん、じゃああたしは絶対にリッテちゃんと組みたい。あたしのできる全部で、リッテちゃんが報われるようにしてあげる」
チユキは力強く言い切った。
もうこうなると、俺が慎重論を唱えるのも野暮というものだ。
他の冒険者とパーティを組みにくくなるとか、スラムを支えているとなると生活費を持っていかれるとか、難点はざっといくつか思い浮かぶ。それを指摘してやることも本当は必要なはずだ。
だけれど、チユキは既に完全に入れ込んでいる。
チユキも苦労人だものな。同年代の、さらに小柄でか細い少女が
まぁギルドの顔となる受付のアンルさんが不利な点も承知で推すのならば、パーティを組むのはちゃんと利があることなのだろう。
水を差さずに、「俺も賛成だ」と言葉少なにパーティ結成に同意した。
リッテの瞳からは涙がこぼれ落ちていた。それを片手で拭いながら、「私で、私で、いいの?」とチユキに確認するように呟く。
「うん、だからお願い、よろしく」と、チユキはリッテを抱き寄せた。
「ありがとう、チユキ……さん」
震える声で、リッテはチユキの名前を呼んだ。
「チユキでいいよ、リッテ」
チユキはさらに強くリッテを抱きしめた。
――パチパチ、パチ、パチと辺りから拍手が聞こえてくる。アンルさんは一際大きく拍手している。
「うおおお! 俺も応援したいと思ってたが、そんな勇気はなかったんだ! だけど、良かったなぁ、リッテちゃんよお! おい、小僧! この二人をちゃんと支えてやれよ!」と身長2mはあろうゴツイ冒険者に背中を叩かれる。
他の冒険者たちから口々に「お前ら頑張れよ!」と声をかけられた。
俺たちはどうにも目立っていたらしい。そりゃあそうか。
受付のど真ん中で少女2人が涙の劇場を繰り広げたのだ。注目を集めるに決まっている。それにしても案外、リッテには同情的な目線も多かったらしい。
裏を返せば、同情していてもパーティを組むまで踏み込めない冒険者が多かったということだ。つまり、俺たちは最初から困難な選択肢を選んだのだろう。
顔を真っ赤にしつつ、今更注目されていることに恥ずかしくなったチユキに、パンパンと手を叩いて切り替える様に合図をして。
「というわけで、お陰様で戦えそうなパーティが組めました。オススメの依頼を教えてください」と、アンルさんに受付のお仕事の続きをお願いしたのだった。
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