第2話 前夜
ウィーン…シェルカーの扉が開く。ここにはjusxaの交際相手を含む親族が保護されている。雅輝は1−8号室の扉をノックする。コンッ「はいはーい、ちょっと待ってねー。」部屋から愛弓の声が聞こえる。バンッ「ごめんっ雅輝!待たせた。さあっ上がって上がって。」「ほぉ。模様替えしたのか。」「そうだよ。雅輝はこういうの疎いから気づかないと思っていたわ。」「俺にだってそこまで変わったらわかるし。」「もうっそんなにムッとしないでよ。かわいいなぁ。」「からかうなよ愛弓。」「まあまあ。晩御飯作ってあげるからちょっと待っててね。」「自分も手伝うぞ。」腰をあげて愛弓のいるキッチンへと向かうが、「今日も任務があったんでしょう?無理しなくていいからゆっくり休んでて。」トンッと肩を優しく叩かれた。雅輝は後ろから優しく愛弓を抱き締める。「どっどうしたのっ!雅輝いきなり…」「愛弓、3日後に怨華が来る。俺らで奴等をぶっ倒さないとならねえ。そして、もし俺が生きてここに帰ってこれたら結婚しよう。もう25歳だ。引退時ってやつだよ。2人で田舎の方に移ってさ、静かに幸せに楽しく生きよう。」「雅輝…」愛弓の顔は涙で濡れていた。そして笑顔で強く抱きしめて言い放つ。「うんっ、わかった!ゼッタイ生きて帰ってきなよ。勝手に1人で死んだら許さないかんね!」「あぁ。生きて帰るぜ、絶対。」「うんっ…うん。」更に強く抱きしめ合う。グサッ「ぐあっ…痛っっ…」背中が切られた。微かに血が流れる。「おまっ愛弓。包丁持ったまま抱きしめんなよ…」「えっ?あっあぁー!ごめん雅輝。ヤバイヤバイ止血止血!」ムードが一転。ガーゼと包帯を慌てて準備して傷を縫い合わせるハメになり、晩御飯どころではなくなってしまった。「ああっ。ごめん、ほんとにごめんなさい。」「いやいやちょっと驚いただけ。傷自体は浅いし。」あんなこんなあるうちに時計の針は12時を指す。「そろそろ行かなきゃな。すまんなバタバタさせてしまって。最後にちょっとリラックスできて良かったよ。」「そう、なら良かったわ。」部屋の扉を開けようしたとき、「ねえ、雅輝。」振り返ったその時だった。雅輝と愛弓の唇が重なる。2秒しただろうか。愛弓は唇を離して紅潮させた顔で手を振って言う。「行ってらっしゃい!」「うん、行ってきます。」バタン扉を閉めてシェルターからも退室する。彼の双眸に映した気合は宛ら猛虎の様であった。
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