第35話  引きこもりとお化け屋敷

 俺たちは今、乗り物に乗りながら進むお化け屋敷に並んでいる。


そして、俺は唯華ゆいかと乗ることになったのだが、明らかに唯華は動揺しているように見えた...


俺が唯華の肩をポンポンと叩いた

「なぁ、唯華?」


すると、唯華はビクッと震えてからこちらを向いた


「ど...どうしたの...」


「あのー、大丈夫か?怖かったら別に乗らなくても」


唯華はぶんぶんと大げさに横に首を振った


「やだ!絶対乗る!後、全然怖くないもん!」


唯華は今少し涙目だが、本人には言わないでおこう...



数十分並んだ後やっと俺たちの番が来た

この乗り物も二人乗りなので唯華と乗り込んだ


コースターが進み始めてから唯華はずっとビクビクしていた。


本当に大丈夫なのだろうか...


唯華側の壁からゾンビのようなものが奇声を上げながら飛び出して来た


そして、何故か俺の右腕に重みがかかっていた


右腕を見ると、唯華が俺の腕に抱きついていた


ちょっっと、恥ずかしいからー!


「ゆ...唯華!恥ずかしいから...」


目に涙を溜めた唯華がこちらを向いた


「ごめんねでも、このアトラクションが終わるまで...」


俺は呆れ半分にため息をついた

「やっぱり怖かったんだろ...」


唯華は俺の腕にしがみつきながら首を横に振った


「違うよ!怖いんじゃ無くて、びっくりしただけだよ...」


俺は唯華をからかってやろうと思った...

唯華の後ろを指差した


「唯華...後ろから変なのがすごい勢いで走って来てるぞ...」


すると、先程より、腕にしがみつく力が強くなった


「まぁ、嘘なんだけど...」


唯華は可愛らしく頬をぷくーと膨らませた


「意地悪…」


「やっぱり、怖いんだろ...」


唯華は観念したらしく小さくコクコクと頷いた


なんか、小動物みたいで可愛いな...


「でさ、そろそろ離してくれないかな?」


唯華にもう一度聞くと首を横に振っていた


「いやだ!!」といつもより大きい声で言った。


「はいはい、わかったよ...」


そして、そのまま唯華はアトラクションが終わるまで俺の腕を離さなかった...


正直...恥ずかしすぎて死ぬかと思った...

誰にも見られていない事が唯一の救いだ...


アトラクションの外に出てからも唯華はビクビクと小刻みに少し震えていた


俺はからかい半分に笑いながら唯華に聞いた


「どうだった唯華?」


俺の服の裾を摘みながら俯いていた唯華がばっと顔を上げた

目には少し涙が溜まっていた


「すっごく...こわかった...」


「これからは無理しちゃダメだぞ?」


唯華はコクっと小さく頷いた


「よし!じゃあ、次のアトラクションに行くか!」


俺たちは次のアトラクションへ向かった。






















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