第11話 2020年、夏 20歳になった僕は

 今、僕は国立劇場のフィールドにいる。オリンピックの開会式の舞台ではないが、関係者の壮行会という感じで私も招待されている。本当は満員のスタジアムに、聖火ランナーとして今日登場するはずだったので少し複雑だ。

 関係者に話を聞いて聖火台になるであろう場所に行ってみる、自分の中ではスタジアムから聖火台への最終ランナーのイメージトレーニング。階段をぐんぐんと登りあがって、観衆も小さくなってくる。頂上に登ってまず深呼吸。観客の大声援に答えて両手を上げる。皆が注目して一瞬の沈黙、採火、すぐに炎が燃え上がって歓声が上がる。

 そこで僕は宣言する「世界の皆様、2020年東京オリンピックへようこそ。選手たちの研ぎ澄まされた身体、知性溢れる明晰な頭脳、全力で取り組む姿勢を我々日本国民が全力でサポートします、世界平和を象徴するそんな素敵なオリンピックになることを祈っています」


 来年の開会式の舞台に僕が登場できるかはまだわからないけれど、20歳の誕生日に僕が思ったことは真実で、20歳の記念の日に国立競技場にいることも事実。来年の今頃も日本国民のすべてがそう思っていると僕は信じています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

2020年、夏 新丸子の不動産屋です @youchann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ