第3話 黒塗りの車がやってきて

 母校で先生の話を聞いて、何か実感がわかなくぽやんとした気持ちになる。大学の受験にも失敗して晴れて浪人生、今までは何となく過ごして高校は卒業できたけれど、大学に入学するのもそう簡単なことじゃない。予備校が始まるのにまだ間があるので、同級生と羽を伸ばす時間はまだ少しはある。

 同級生の進路は様々だが、僕のような浪人生も結構いるので焦る気持ちはそんなに多くはない。先生からの話は家族には言ったけれど、さすがに友には話せない。令和の元号もそうだけれど、僕の聖火ランナーの件はなおさらだ。

 そんな頃、大きな黒塗りの車が家に帰ったらうちの前に止まっていた。何事かと思って家に入ると、母とスーツを着た男性が談笑をしていた。客人はオリンピック委員会の事務局の人で、聖火ランナーの事情を説明に来た方だった。

 五輪が開催されるまでは情報を漏らさぬこと、犯罪に加担したり交通事故等にも注意することも約束させられた。

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