西方守護伯付き魔女の初陣 守野伊音
『西方守護伯付き魔女』
その大陸において、魔女は長い間、
だが現在、大陸には魔女の国がある。
魔女が人と生きる国がある。
長きに
彼女の
魔女の国でありながら、様々な事情から魔女が居着かない
ミル・ヴァリテ、十六歳。
この
少年だが魔女である。
男に魔女という呼び名はおかしいのではと、毎年議題に上がっているものの、まあ今までずっとこれだからという理由でなんとなく流され続けてきた結果であった。それでも、大きな問題なくなんとなくやってきたので、これからも
それは
この辺り一帯の台所を支えていると言っても過言ではない大通りも、この時間帯は落ち着いたものである。
いつ
西方守護伯付き魔女のミルは、銀青色の
大事に大事に抱えている菓子は、元は子どものおやつ。袋いっぱい買ったところで昼食代ほどもかからない。さらに、ミルが抱えているのはたった一個だ。子どもの
その様子を横目で見つつ、西方守護伯のガウェインは苦笑した。
西方守護伯付き魔女も、平時はのんびりしたものである。元より、まだ配属されたばかりの新米魔女だ。ガウェインについて出かける以外は、これといって仕事がないのが現状だった。
ガウェインも、今日の仕事は大体の
背が高く、どこか
しかし、黒髪の男が西方守護伯と分かると、みな
「お前は本当に、甘いものがあると
座って食べられる場所をうきうき探している姿をのんびり
買い与えた側としては、喜んでもらえて光栄な気持ちと、そんなに喜ぶのならもう少しいいものを買ってあげたかった気持ちがせめぎ合うというものだ。
ガウェインの言葉で、浮かれていた自分に気が付いたミルは、
「す、すみません……僕、その、子どもみたいですよね。は、
恥じ入る姿は
その予感は的中した。
うきうきと揺れていた銀青色の髪が、
「あんまり幼い
「消えるな消えるな消えるな!」
流れるようにこの場から姿を消そうとしたミルの
「今のは俺の言い方が悪かった!
「は、はい……」
この場から飛び去ろうとする様子がないか確認しながら、ガウェインはそぉっと手を離した。
この魔女は、
それは、自分に自信がなさ過ぎるあまり、何かあればすぐに消えようとするのである。
ミルの母親は、それは
そんなミルを心配……
ミルの母親はミルに
どのような呪いか、ガウェインは知らない。呪いとは
何にせよ、この地で呪いを
菓子を大事そうに抱きしめながら、不安げに視線を揺らしている小動物を見て、ガウェインは再度苦笑した。
西方守護地において念願だったはずの魔女だが、どうにも
「ほら、冷める前にとっとと食べてしまえ」
「は、はい!」
頭をぐしゃぐしゃと
そして、
ミルは、どう考えても魔女と
身分証明書などは全て本物だったので、
「隊長、向こうに座れそうな場所があります。あちらでよろしいですか?」
呪いが解ければ、この小動物は西方を去るのだろう。西方守護伯として、それを
本当は、西方の為には魔女がこの地にいたほうがいい。しかし、ミル個人の為には、呪いが解け、自信を持った一人前の魔女として中央へ帰ったほうがいいに決まっている。
「隊長?」
「何でもない。ミル、俺にも一口くれ」
「隊長が買ってくださったのですから、その場合、一口は僕なのではないかと思うのですが」
「それだと買った意味がないだろ」
声を上げて笑うガウェインは知らない。
目の前にいる少年魔女にかけられた呪いを、そして
ミルの本名は、ミルレオ・リーテ・ウイザリテ。
偉大なる母、レオリカ・リーテ・ウイザリテ王により、少年になる呪いをかけられた姫魔女。
ウイザリテの、第一王女である。
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角川ビーンズ文庫
『西方守護伯付き魔女の初陣』
2020年5月1日発売!
【あらすじ】
WEB掲載作品を大幅加筆修正! 落ちこぼれ魔女は恋を知って最強に!?
魔法がうまく使えず引きこもっていた王女ミルレオは、母に呪いをかけられ男の姿に!
しかも西方守護軍で少年魔女(!?)として働け、自力で呪いが解けなきゃ即結婚って……お母様、いくらなんでもあんまりです!?
※くわしくはコチラから!
https://beans.kadokawa.co.jp/product/322003000265.html
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