第24話 戦うために

「君がそれほどまでに一号機、メルを救いたいと願い何か行動を起こしたいのならばそうだね。まず君自身も戦えなくちゃ足手まといだ」

「一応、銃なら少しは扱えるぞ」

「それだけじゃあダメさ。相手は戦闘用のドールたちだよ?確実にドールを壊すなら、分解しなきゃ」 

「分解?」

「そ、僕は彼らを作ってたんだよ?」

「弱点は熟知してるってわけか」

 それから俺は、これから一ヶ月という短い期間で月波の言うドールの壊し方を習うこととなった。

「それじゃ、僕は行くから今日と明日でちゃんと身体治しといてね〜」

 そう言って月波は、手を振りながら部屋を出ていった。


「それで、君はどうなのかな?メル」

「絡繰様がお元気そうで何よりです。絡繰様は、私をその身を賭してまでも守る覚悟でいる……。でも私は、それで絡繰様を失ったらと思うと私は私を許さないでしょう。私が存在していることを憎むでしょう。もちろん、私は絡繰様の意志であればこの身たとえ鉄くずになろうとも遂行する覚悟はできています。ですが……」

「まあ、僕は絡繰くん、好きだよ。昔のことを思い出せるし、何より君のことを好いてくれてる」

「……」

「あ、そうだ。絡繰くんにお礼は君の分のおやつをもらうってことで許してあげるって言っといて」

「は、はい」

 月波が出て行った少し後、メルが来てくれた。

「絡繰様、おやつは私の分を差し上げますので大丈夫ですよ!」

「うん、何の話?」


 それから12時間が過ぎ、現在は月波との特訓を明日に控えた昼頃。

「おっやつ〜だおっやつ〜だ♪」

 リリーが寝室の前を上機嫌で、通っていく。

「絡繰様、お体はどうですか?」

「ああ、大丈夫だ。今までは少し精神的に疲れていただけだ。心配ないよ、少し身体を動かすか」

「それならいい場所があるよ」

 寝室の入り口から月波が上半身だけを出している。

「居たのか月波」

「盗み聞きするつもりはなかったんだよ?まあ、明日から特訓に使う場所だし下見ついでに丁度良いんじゃない?」

 ということで……。

「ということで、やって参りました地下闘技場!!」

「ここかよ」

「仕方がないだろう?僕は、国に目を付けられる可能性のある君たちと長く一緒に居たら都合が悪いんだ。まあとにかく、次回!習得せよ 機械人形分解粉砕拳!」

「なにそれ」

 ここ数日でこいつらとの温度差には、割と慣れたが言ってることは相変わらずよく分からない。

「まあまあ、明日になれば分かるから今日のところは下を見ておいでよ」

「ああ」

 前に一度来たことはあるが、確かにそのときはメルの試合と謎の襲撃に気を取られていてあまり闘技場の事を見れていなかった。

 闘技場は、半径5メートルほどの円形の試合場に沿うようにして、試合場よりも高い観客席が試合場の壁となっている。というか、よくこんなの地下に作れたな。この上の店の店主と月波はグルっぽかったから、月波の技術もあるんだろう。

「どうだい?」

「どうもなにも、ここで実際に戦うわけでもないしな。でも、ここ嫌いじゃないな」

「うんうん、ロマンってやつだね!」

「やってることはあれだけど」


 ガン、ガンッ!


 観客席から試合場までの道を進んでいると、先の方から何かがぶつかり合う音がした。

「なんだ?」

 道を抜けるとそこには、自身の武器を出して戦うムネタダとメルの姿があった。

「そうだ、絡繰くんはムネくんのもメルのも兵器は見たこと無かったよね」

「ああ」 

「じゃあ、製作者が直々にその性能諸々説明してあげよう!ではまず、Dead月波シリーズDー2981『九尾』ことメルの兵器から。メルの兵器は、腰から出る9つの蛇のようにしなるアーム。このアーム自体の破壊力はもちろん、小型ミサイルをアーム一本に対して50個搭載している。いざとなればアームを切り離すこともできるため、戦闘では特攻、制圧、奇襲どれにおいてもピカイチの兵器だ!」

 つまり、自在に動く9本の尾を使ってオールマイティーな戦い方ができるということだな。

「続きまして、Dead月波シリーズDー2987『黒柱』ことムネタダ。彼女の兵器は、自由自在に変形形成が可能な形状記憶合金。この形状記憶合金は変形段階が複数あり、ムネタダはその身体の温度を自在に操る事で様々な武器を使う。戦闘においては接近戦のエキスパートと言えるね!」

 接近戦のエキスパートか。見た目は、大人しそうだが戦闘スタイルは案外脳筋よりなのか。

「そう言えば何だが月波、月波シリーズのドールってメルとリリーとムネタダだけなのか?」

「ん、どうして?」

「いや、ムネタダは前に七号機だって言っていてメルは一号機だろ?まだいるんじゃないのか?」

「そうだね、絡繰くん前に教えたDead月波シリーズのことは覚えてる?」

 Dead月波シリーズそれは、当時国の開発者だった月波が開発した一体のドール兵器を元にして作られた存在。

「実際、僕のシリーズはオリジナルを合わせると全部で十体。今は近くにはいないけどちゃんと僕が管理しているよ」

 オリジナル、月波がそう呼ぶそれは月波シリーズと呼ばれるドールの基礎的存在で、月波曰くオリジナルをのぞく月波シリーズすべての兵器を持ったドールだという。

「まあ、とにかく明日からはビシビシいくよ!」

「ああ、望むところだ」

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メカニズムドールの一分間 ありづき @ari-8-duki

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