第10話:旅へ
現在、7月31日、午前4時ちょっと前。
いよいよ今日、俺たちは出発する。
メルは既に、
やはり洋風な見た目には洋風な服が似合う。更に、自分でやったのだろう髪が綺麗に細かく編み込んである。
うん。いいな。
「おはよう。メル」
「おはようございます。
「準備は万端みたいだな」
「はい」
やっぱりまだ無愛想だな。
ドールは、メイドをすることもある(それが主流なのだが)だから、愛想良くという点は必要なはず。まあ、このままでメルはいい気もするがな。ちょっと感情が見えると…。
などと考えながら、俺は顔洗って歯を磨いて着替えて荷物を持ってメルを連れて家を出る。
まず向かうのは駅だ。そこから3時間乗り換えなしでヘンメリッツまで。
自宅から駅まではそう遠くない。
歩いて40分くらいだ。
この街は、歯車の形をした装飾が所々建造物にされている。駅も同様に、大きな歯車から小さな歯車までが心地よい配置で装飾されている。
「着いたな。乗り口は確か、こっちか」
俺が歩く。その数歩後ろをメルが静かについてくる。
何だこのRPG感は。
「4時50分か。弁当買っても間に合うか」
駅のホームには、小さな屋台風の店がある。
そこでは、駅弁が売ってある。店員は男性型のドールだ。
あるのは、焼肉弁当、焼き魚弁当、寿司、幕の内弁当、サンドウィッチ。
俺はその中から、寿司を選び乗車した。
電車とは言いつつ、動力源は電気だが仕掛け自体は無数の歯車。
薄らと鉄の匂いがする。
ドールからは、そんな鉄らしい匂いはしないが、どんな技術なのだろう。
座席は2つの二人用の座席が向かい合うようにあり、メルは席に座るや否やどこかそわそわワクワクしているようにみえた。
アナウンスが流れ、電車が動き出す。
窓から見える景色は、見慣れた街の景色から数分もすれば緑豊かな草原と遠くに見える首都の顔である時計塔が小さくわかる。
特急で乗り換えないから弁当食ったら、寝るか……。
俺が選んだ弁当は寿司だ。ネタはマグロ赤身、サーモン、鯖が2貫ずつ。
美味い。
「メル、俺は少し寝る。ヘンメリッツってとこに着いても寝てたら起こしてくれ」
「了解しました。おやすみなさいませ」
「ああ。おやすみ」
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