第9話:旅への準備

 俺たちは、何でも屋の中にある全てのものをダンボールに詰めた。

 俺たちは、出国許可書と入国許可書をとった。

 以上2つは2日もかからないうちに終えた。 

 あとは、挨拶回りだけとなった2日目の夜9時頃。

 俺は気づいてしまった。

 やはりメルの指定地と成り果てたあの壁際に凛と立つメルを、デスクに伏せるようにして観察していると、気づかざるを得なかったのだ。


 こいつ、服ダメじゃね?なんで入国許可と出国許可とれたんだ?


 そう。今現在のメルの服装は、メルが家に来た時からほぼ変わっていない。

 俺が着せた大きめのTシャツに、鉄心のところに最初に診せに行ったとき鉄虎からもらった女物の下着とジーンズの短パンこれだけだ。


 明日、服買わねぇとな。


 とは言うものの、果たして俺のセンスでメルをコーディネートしていいのか?

 怖いから明日鉄心のとこに挨拶行った時に鉄虎に協力を仰ぐしかないな。


「メル、発条ぜんまい巻いとこうか」

「はい。螺旋巻ねじまき様、お願いします」


 翌日、朝8時頃。

 俺はまず、鷺士さぎとの元を訪ねた。

 鷺士の家は、洋風なこじんまりとしたボロボロの蔦で覆われた一軒家。


「明日なんですね…」

「ああ。これまで世話になったな」

「そんな、お世話されてたのは僕の方ですよ」

「お前は、大した仕事も取れない何でも屋なんて仕事についてきてくれた。本当に感謝してる」

「そんな…で、でもまた戻って来たら何でも屋するんでしょ?」

「いつ戻るかはわからないがな。戻って来たらまた再開業するつもりだ」

 鷺士の家のダイニングにて向かい合わせた状態で俺とメル、鷺士がテーブルを囲んでいる。

 鷺士は、俺たちの旅を応援すると言ってくれた。


 次は金叩鍛冶屋かねたたかじやだ。

 本当に世話になった場所であり、人たちがいる。

「いよいよ明日ですね」

「ああ」

「ほれ、坊主。これが行き方とうちの店紋てんもんだ。この店紋を見せりゃあ大体のやつにはコネが通じる」

「ありがとう。鉄心てつじん

 鉄心、お前には頭が上がらねぇわ…。

 

「あ、鉄虎てっこ、1つ頼みがあるんだがいいか?」

 雑談の最中、俺は昨日やろうとしていたことを思い出す。

「メルに服を選んでやってくれねぇか?」

「ええ私でよければ」


 ということで服屋に来た。

 そして、俺と鉄虎でいいと思うコーディネートをすることになった。


 2時間後。


 俺が選んだのは、白のジップパーカー、ベージュのスキニーパンツそしてベージュのキャスケット(服の名前は横にベッタリくっついて来た店員の受け売り)だ。


 続いて鉄虎の選んだ服は、ベージュのエプロンドレスと、青い水晶が埋め込まれた髪飾り。


「さて、メルどれがいい?」

「………………………」


 メルは、3分ほど服を見比べた後、ゆっくりと顔を上げて俺を見た。


 ……ん?


「決まったのか?」

「………………………」

 メルは、再び服に目をやる。

 あ、これ決められないってことか?

「…決められないなら、もうどっちも買うか」

「え、絡繰からくりさん大丈夫なんですか?お金とか…」

 確かにこの服屋は、結構いいとこだから高い。どっちも買うのは大分痛い出費。

 だがまあ、いいか。

「買えないことは無い。大丈夫だ」

 ということで、どっちも買った。

 全部で5万。服で5万使ったのははじめてだな。

 ぼったくられてないよな?

 その後、服屋を後にしてついでに鉄虎と飯屋で昼食をとり解散した。


 現在、昼の3時過ぎ。

 休業のため依頼もないしソファーに体を預け、睡魔を待つ。

 明日はいよいよ出国だ。

 朝5時から電車で3時間かけて空港のある首都ヘンメリッツというとこに行って、空港から一気に目的の国の近くの国フーズマンへ行ってそこから国境を越えてラダダマックという国へ行き、そこからまた国境を越えてやっと目的の国へ着く。

 長ぇよ道のりが…。

 などと考えているうちに、いつの間にか睡魔に落ちていた。

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