第8話:旅への誘い
彼女にメルという名前が付いたその日の夜。
珍しく
何でも重要な話があるのだという。
「で、話ってのは何だ?」
「あのドール。メルのことだ」
「ん?鉄心お前、情報が早いな」
「ああ。
「まあ、話を戻すぞ。坊主、お前も知っての通りメルは普通のドールと違って一巻きで活動できる時間が極端に短い」
「ああ」
「だがもし、それをどうにかする方法があるとしたらどうする」
「……そりゃ、たとえどれだけ低い確率の上での話だろうと、どんなことでもする」
「……坊主、お前も変わったな。これをみろ」
そう言うと鉄心は、四つ折りになった紙を自身のポケットから取り出す。
そこには、『メカニズムハート〜ドール
「これ…は……!」
「うん。ドールを永久に起動させ続ける機関の開発書。これは、ここから東に進んだ先にある国で出されたものだ。まあ、開発されたかはわからんがな」
「それでもいい…。それでも、メルを……」
俺は今、「メルを助けれるなら」そう言おうとしていたことに驚嘆した。
まだ俺は、メルに逃げようとしているのか。メルに同情して、自分を肯定しようと……。
「鉄心…俺はまだ何にも変われちゃいないみてぇだ……」
でも、俺はメルと……。
「鉄心、その国の行き方とちょっとコネを貸してくれないか?借りは必ず返す……頼む」
俺は、鉄心に頭を下げ言う。
「……わかった。お前の親父さんにはいくつか借りがあんだ。その息子で返しても文句はねぇだろ」
「ありがとう」
鉄心には、本当に世話になってばかりだ。
幼い頃、俺は母を亡くした。
その上、親父は冒険家なんてものを仕事にしていたから俺の世話をする人は、親父と古くからの友人なのだという鉄心やその奥さんの
小さい頃にある女親の優しさや温もり、男親の威厳や強さはほとんどが鉄心たちから感じた。
「じゃ、今日のところは帰るぜ」
その後、少し雑談をして鉄心は帰って行った。
俺たちの今後の予定も粗方決まった。
俺たちがこの国シフィーゲルを出るのは三日後。
その間に店を一旦畳む準備と旅の準備、世話になった人らへの挨拶回り。
「メル、
「はい。
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