第3話:帰宅〜夜〜

 家に着いた。

「靴脱いで上がれよ」

「はい」

 ドールは、靴を脱ぎ元いた壁際に立った。

 あいつの指定席的なものになってる……。


 俺は、もう一度ドールの名前を考えようと思う。

 メカ、カニ、ニズ、ズム、ムド、ドー、ール、が駄目だったので、一から考え直さないといけない。

 俺が一番、名前を考えるっていう依頼を出してぇ……。

 

 で、考えた。五つほど候補が出た。

 それは、

「エントリーナンバーワン、サザンカ」

「いや、それはないでしょぉー」

「お前いたのか?!」

 今俺を驚嘆させた少年は、富無とみな鷺士さぎと。一年前ほどに15歳でありながら、俺の手伝いをさせろと言ってきた。ので、給料は払わねえと言うことで手伝わせている。

「まだエントリーナンバーワンだ」

「後何個あるんですか?」

「ん?後ぉ、四個だな」

「えぇー……」

「じゃ、エントリーナンバートゥー、リッサ」

「リサで良くないですか?」

「リッサ感があるだろ、このドール」

「リッサ感て……」

「次行くぞ。エントリーナンバースリー、桜蘭さら

「急に雰囲気変わるんですね。その間を考えてもらいたいです」

「ああ?まあいい。エントリーナンバーフォー、香菜かな

「あ、それっぽい」

「だろ?これは自信あるんだ」

「最初のやつは、何だったんですか……」

 鷺士が、呆れたように言う。

「やつって言うな。エントリーナンバーファイブ、ドール」

「そのまんまじゃないですか!!」

 俺が五つ目を発表した瞬間、鷺士が勢いのままにツッコむ。

 それに、ドールの足も僅かながらに反応したのが見えた。

 人間的反応は、あるんだな……。

「いやいや、案外シンプルイズベストだぜ。こういうのは」

「シンプルってもんじゃないでしょ、こうなると……」

「じゃあ、お前が考えて見ろよ!」

「な!わ、解りました。明日のこの時間まで待ってください」

「おう、いいぜ。その代わり、絶対しっくりさせろよな!」

「良いですよ。やってやろうじゃないですか!」

 鷺士は、俺と言い合ってから荷物をまとめて帰って行った。

 

 現在、午後七時半が過ぎた頃。

 俺は、夕飯を摂るため電話で近くの弁当屋へ出前を取る。

「えーっと、テリヤキソースハンバーグ弁当と豚汁で」

‘「はい。テリヤキソースハンバーグ弁当が一つに豚汁がお一つですね?承りました」’

 

 注文から約20分ほどで、弁当が届いた。近いと言っても、バイクなどで来ても10分はかかるので早い方だ。

 しかも温かいので、すごく良い弁当屋だ。

「んでウマッ」

 ドールは、じっとしている。

「安定の美味さだな」

 ドールは……、じっとしている。

「豚汁もウマッ」

 ドールは……、じっと……している。

「フーッ、ウマかったぁ」

 ドールは……、じっと、


「し過ぎじゃごらぁああああああああああああ!!もうちょっと自主的な行動しようぜぇ……?」


 いつまでもいつまでもじっとしているドールに俺は、我慢の限界が来て呆れ紛れに怒鳴る。

「私のプログラムは、自主的な行動を規制されています」

 ドールは、俺の言葉など聞いていなかったように淡と言う。

「現実的な話でファンタジーをぶち壊すことに関しては、規制されてねえのか?」

「?」

 無表情ながらでも首を傾げきょとんとしている姿は、悔しいが超可愛い。


 などとドールに文句言ったり、ドールのことを聞いていると時の流れは速いらしく、もう十時近くまで時計の針が回っていた。

「夜更かしして明日くるかもしれない依頼に支障を来す訳にゃあ行かんから、俺は寝る。あんたは?」

「ドールは眠りません。起きる時間をお教えしていただければ、起こしたりも出来ます」

「ああ……。じゃあ、八時半頃によろしく」

「はい」

 ということで、俺は寝る。

 明日は依頼がくると信じよう。

 

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