第15.5話 勘違いから始まる恋なんてあるはずがない

 今日は快晴であった。横には先輩がいて、いつもと変わらない通学路。しかし、俺の心は穏やかではなかった。

 何で先輩が香織と南波の二人と抱き合っていたか聞かないと......。

 ここ最近、俺は先輩が二人の女子生徒と抱き合っている姿を連続して目撃してしまったのだ。香織は保健室、南波とは部室で。もし仮に先輩が女性を好きだったとすると考えると、これは浮気になってしまうのではないだろうか。俺は気になって夜も眠れなかった。俺は覚悟を決めて口を開いた。


「あの、先輩って......」


 ここまで言葉が出たところで、続きを言うのがはばかられた。どうやって聞くんだよ! 万が一そうだったとしても、先輩を困らせるだけだ......。こういうのは向こうから言ってくるのを待つものだよな。


「いや、なんでもないです」


 俺が言葉を濁すと、先輩は不信そうな顔をした。


「嘘、何かあるでしょ」


「へ!?」


 俺は明らかに動揺してしまった。まずい、これは......


「ほーら、やっぱり何かあるんじゃない。言って」


 先輩は少しむすっとしてこちらに少し近づいた。近い近い近い。あ、いい匂い。


「え、ええーっと......」


 先輩に問い詰められようと、俺は言葉が出なかった。その度に先輩はむぅと頬を膨らませていた。

 数分間、謎の視線だけのバトルが続き、結局折れたのは俺だった。るだけにね。


「あの、先輩って......」


 俺は少し遠慮しながらも事を伝えた。すると、先輩は笑いだした。


「ふふっ。なぁにそれ。勘違いもいいとこよ」


 先輩はそう言って、事情を説明してくれた。香織との保健室での出来事。南波のためにしたこと。全て聞き、俺は納得した。そして自分の思い上がりに恥ずかしくなった。


「そうだったんですか......。俺はなんて勘違いを......」


 俺は自分の顔が熱くなるのを感じていた。先輩もそれが分かったのか、また笑った。


「優くん、顔真っ赤。人間勘違いって絶対すると思うし、そんな気にしなくてもいいのよ」


 そう言って先輩は俺の顔を覗き込んだ。


「で、でも凄く自分がアホらしいです......」


「優くんってやっぱり面白いわね」


 先輩はくすくすと笑って、俺から目線を逸らした。


「私が好きなのは―」


「え? なんですか?」


 先輩が小さな声で何か言いかけたが、偶然通った車の音にかき消されてしまった。

 俺が聞き返すと、先輩は笑った。


「なんでもないわ。ほら、遅刻するわよ」


 そう言って先輩は歩き出した。俺は疑念を抱いたが、何かの気まぐれだろうかと思い、忘れることにした。



 夏の暑さが感じられるようになってきた七月。俺たちのパンツ物語は大きく動き出そうとしていた。

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