第2話 先輩キャラは友人キャラ
俺の学校は、入学式の翌日から通常授業になる。
ちなみに今日は普通にパンツ履いてるよ!!
高校初めての授業も滞りなく進み、昼休みとなっていた。俺は購買でパンを買い、足早に目的地にへと移動する。クラス内では、もうほとんどの人がグループを作って昼食をとっていた。なんでこの人たち、こんなにグループつくるの早いんだ...? いたたまれなくなった俺は、中庭で1人で食べることにした。
「一人ってのも寂しいもんだな......。」
中学の時は、そこそこ友達がいた俺は、高校での1人での生活はかなりきついものとなっていた。
「パンツの主、探さないとな......。」
パンティエルから言われたことは恐らく本当だろう。現に、既に俺のパンツが二個消失している。かといって、この学校だけでもかなりの人数がいる。どうやって探そうか途方に暮れていると、俺の肩が叩かれた。
叩かれた方を向くと、プスッと指が頬に刺さる。
「ふふ、引っかかった」
後ろを向くと、なにやら楽しげな表情を浮かべている女性がいた。美しく伸びる黒髪、そして黒タイツを履いているからか、色っぽい雰囲気を醸し出している。凛とした顔立ちが見せる、楽しげな表情はそれだけで相手の余裕を伺える。
俺は直感で年上だと思った。しかし誰だか全く分からない。
「あなた、誰ですか?」
俺が戸惑い気味に尋ねると、彼女はまた楽しげに笑った。
「ふふ、ごめんなさい。私は
「なんで俺の名前を......?」
「んー、それはお姉さんのこの美貌に免じて許して♡」
「お姉さんって言っても年一つしか変わんないじゃないですか......」
「ふふ、それもそうね。ごめんなさい」
確かに彼女は美しい。俺もその美貌に目を奪われていた。
「それで、何の用ですか?」
「あぁ、そうそう。それはね......」
彼女は俺の耳へと口元を近づけ、こう囁いた。
「あなた、パンツ持ってるでしょ。しかも女児用の」
「......!?!?」
な、なんでこの人がそれを......!?ここは適当に誤魔化しておこう......。
「持ってないですけど......。」
「ふふ、嘘ついても分かるわ。ほら、これを見て」
そういって氷堂先輩は一枚の写真を見せてきた。
「な......に......!?」
彼女が見せてきたのは、俺が部屋で女児用パンツを被っている写真だった。
「これは言い逃れできないわよね。それで、どうしてこんなものを持ってるの?」
「そ、それは......。」
どうする、俺。高校生活二日目にして最大のピンチ......。どうする、どうする......!!
「別に誰かに言いふらすつもりではないわ。ただ、言わないなら......」
言わないなら......なんだ......! 俺はなんでも受ける覚悟をしていた。くそ......俺の高校生活、終わったな......。
俺は覚悟を決めて、先輩の言葉の続きを視線で促す。
「言わないなら、私の部活に入ってもらうわ」
「......え?」
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結局俺は言うのを渋り、氷堂先輩の部活とやらに入ることになった。
「氷堂先輩は何の部活なんですか?」
「裁縫部よ。ただ、部員が足りなくて......。籍を置いてくれるだけで構わないから......」
なんだ、そんなことか......。
てっきり、鬼の野球部やバスケ部に入らされて、鬼部長や鬼教官に「オラァ!!とりあえず校舎周り十周走ってこいやぁ!!」などと言った、鬼の指導を毎日受けさせられるのかと思ってしまったぜ......。
「裁縫部って、先輩一人なんですか?」
「えぇ、そうよ。でもこれで下木くんと2人きりね」
「軽々しくそういうことを言わないでください......」
少し微笑みながら言う先輩は、やっぱり魅力的であった。
「ふふ、ごめん。着いたわ。ここが裁縫部」
裁縫部、と書かれたプレートがかかっている教室は家庭科室のような大きな机が四つ置いてあるだけであった。噂によると、ここは昔使われていた家庭科室で、現在は使われていないらしい。
「どうぞ、入って」
「失礼します」
俺が入った教室は、裁縫部というには少し寂しげな感じがした。
ただ机の上にミシンが一つあるだけ。ただ殺風景な教室だった。
「あれだけですか?」
「えぇ。なんせ部員は私だけだから」
「作った作品とかどうしてるんですか?」
俺は興味本位で聞いてみた。すると先輩は明らかに動揺した素振りを見せた。
「え、さ、作品が見たいの......?」
「あぁ、はい。まあ嫌ならいいですけど......」
あんまり上手じゃないから見せるのを躊躇ってるのかな。俺は裁縫とかできないから、作れるだけでも凄いと思うけどな......。
「わ、分かったわ。下木くんがそこまで言うのなら......」
すると先輩は掃除道具入れのほうに向かっていった。
「み、見て。この中に入っているから......」
「分かりました」
下手くそでも、褒めろ。とりあえず褒めるんだ。分かったな、俺。褒めれば良いってじっちゃんが言ってたからな。
決意を固めて、俺は掃除道具入れを開いた。
ドサドサドサドサッ......
そこから溢れてきたのは、大量の男性用パンツだった。
「え、ええっとこれは......?」
「私......、男性用パンツを作るのが趣味なの」
「......は?」
「何度も言わせないで......。だから......男性用パンツを作るのが趣味なのっ!!」
「い、いや、だから何でそれを俺に......?」
「あなたが見たいって言ったんでしょう!私の趣味のこと......」
「俺が見たいって言ったのは作品のことなんですけど!!」
「え......てっきり私の趣味のことが分かっていて作品と言っているのかと......」
「どうしてそうなった!?」
なんで先輩がそんな考えに......。はっ......!まさかさっきの俺の写真が伏線だったと言うのか!?
「まさかさっき俺に見せた写真って......。」
「そ、そうよ! あれであなたも私の趣味のことについて、分かってくれるかなと思ったのよ!」
「誰が分かるかぁ!! まず俺は氷堂先輩の名前も顔すらも初めて見ましたからね!?」
「なっ......、まさか本当に認知されていなかったの......?」
「認知も何も、初見ですよ俺は。」
すると先輩はむぅー。と頬を膨らませた。いや、可愛いなおい。
「あなたの家から見て、正面の家の表札覚えてる?」
ん......? 俺の家の正面の表札......? まじで分からない。でもこれは流れ的に氷堂先輩の家ということだよな......。
よし、ここは流れに任せよう。
「まさか、氷堂......!?」
「違うわよ。 あなたの家の正面は水川さん宅よ」
「いちいち、ややこしいことせんでいいわ!!」
一体なんなんだこの先輩......。
「ちなみに私の家は水川さん宅の右側よ」
「そうなんですか......。全く知りませんでした」
「本当に知らなかったのね......。びっくりだわ」
それならあの写真が撮れたのも頷ける。
俺の部屋は、窓を開けると右前の家からは丸見えなのだ。
「カーテンを閉めようとふと窓の外を見たら、あなたが急に女児用パンツを被り出すんだもの。驚いたわ。私以外にパンツ趣味がある人がいたとは......。それでつい撮っちゃった」
「盗撮はダメですよ。」
「女児用パンツを被るのも、世間的にダメじゃないのかしら?」
「それもそうですね」
俺と氷堂先輩はお互いの顔を見つめあって、そしておかしくなって笑った。
こうして、俺にパンツ仲間もとい、初めての友人が出来た。
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