最終話


 朝よ。起きて早く起きて。全然起きない貴方。結局起きたのは家を出るぎりぎりの時間。先にいってるわね、いってきます。


 ようやく来た貴方。私を見るなり青ざめた顔をしているわ。もしかして、朝のメール読んでくれた?


 お昼休み。こちらを見たけど何も言わずにいた貴方。何かしら? でもすぐに私の所へ来たわ。


「井原さん、今日仕事が終わったらちょっと良いかな?」


 ええもちろんよ。


 十七時半。ちょっと長引いちゃった。待っているかしら? 誰もいなくなったオフィス。貴方は私の所に来たわ。


「井原さん。今日メールをしてきたのはあなたですか?」


 ええそうよ。


「これどういうことですか。私はずっと貴方のそばにいるわ。どうやってアドレスを知ったか分かりませんが、こういうこと送らないでください」


 本心よ、何がいけないの?


「付き合ってもいないの……気持ち悪いんですよ」


 どうして? お付き合いしているじゃない。


「何を言ってるんですか。ふざけるのもいい加減にしてください」


 朝は私が起こして、朝ご飯を一緒に食べて、夜ご飯も一緒に食べて、一緒に過ごしているじゃない。この前は知らない女が家に来てたけれど、話をしたら帰ってくれたわ。


「それどういうことですか、女って。まさか、あいつがすぐにいなくなった理由って」


 私がいるわ。ずっと一緒に過ごしましょう。


「気持ち悪い、近づくな、何なんだお前」


 照れなくたっていいのよ、ずっとずっと一緒よ。


「来るな、来るな、どっか行け」


 もう、静かにしないと誰かきちゃうわ。邪魔な人はいらないわ。貴方であろうと、貴方と私の邪魔をするなんて許さない。大人しくしてちょうだい。


「おい、なんだよそれ、しまえ、やめろ、おい、く……」


 ほら静かになった。貴方は私がいないと朝も起きれないし、ご飯も食べない。私が必要でしょ? さあ一緒に帰りましょう。二人のお家に帰りましょうね。




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