第110話:蛾の恐怖
(※ユラ視点)
漆黒の大きな羽を広げた巨大な蛾が宙に浮いている!!!
巨大な目玉と長い2本の触覚、そして、目の下には羽毛のような黒い毛が身体を覆っている。
6本の脚がカクカクと気味悪く動き、まるで新しい身体の動きを確認しているようだ。
巨大な羽からは、紫の鱗粉のような粉が舞い上がっている!
キーーーーーーーーーーーーー!!!
「くっ!!!!」
ザリオンが出す異様な音が辺りに響き渡る!
鳴き声なのか・・・
頭の中を直接殴られたような頭痛を覚え、耐えきれずに耳を塞ぐ!!!
・・・
「これが・・・」
・・・
「これがザリオンの・・・、本当の姿・・・」
・・・
私の独り言に反応するかのようにミナが呟く。
・・・
キーーーーーーーーーーーーー!!!
巨大な蛾と化したザリオンは、鳴き声をあげると共に、その大きな羽を羽ばたかせ、さらに上空へと浮き上がった!
頭に響く鳴き声に耳を塞ぎながら、ハッと我を取り戻す!
耳を塞ぎ、大きく頭を振りながら意識を集中させる。
今、やるべき事・・・
・・・
それは、あの巨大な蛾の攻撃を凌ぐ事だ!!
すぐに迎撃態勢を整える事に意識を集中する!
「シズク、前方をお願い!!」
シズクは私たちの目の前に素早く移動し、雨音を構える!
「マーリ!いける??」
リリスの魔法によって回復したマーリは大きく頷き、私たちの前に素早く移動し、剣を構えた!
「リリス!魔法防御展開!」
リリスは、呪文の詠唱に入る!!
「ミナ!!ゴレさん!出来る限りビッグサイズで!」
ミナは大きく頷く!
そうだ!!
絶望なんかしていられない!
取り乱した心を奮い立たせて声を荒げる!
なんとか・・・
なんとか時間を稼がないと!!
シト・・・
ムツキ・・・
お願い!!!!
早く!早くきて!!!!
私も胸の呪印に手を当てる!!
ザリオンが羽を動かした時に舞い上がった紫の鱗粉が辺りを霧のように包んでいく。
・・・
「みんな!いくわよ!!!」
全員が頷いた!!
その時!!!
私の身体を強烈な痺れが襲った!!!
っ!!!!!!
しまった!!!!
「みんな!!息をっ!!!」
・・・
その声はすでに遅く、シズク、ミナ、リリス、マーリが迎撃態勢をとるどころか、地面に片膝をついている!!
「がっ!!!!!」
私の身体の痺れも強くなり、ロッドを地面に落とし跪いた。
「ど・・・、毒・・・」
私たちを上空から見下ろしている巨大な蛾と化したザリオンの目が、ニヤリと笑ったように見えた。
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