第105話:白いマユ
(※ユラ視点)
「新手!!!!」
ミナが気をとられるのを、手で遮る!
「ミナはザリオンに注意して!」
「私が迎撃する!」
ジジジジジジジジ!
羽音がさらに大きくなってくる。
暗闇から姿を現したのは、2mほどはあろうかと思われる巨大なハチ型のモンスターだ!!
一体を先頭に十数体が綺麗に隊列を組んでこちらに向かってくる!!
「あれは・・・」
その巨大なハチは、それぞれがその脚に白いマユのようなものを抱えている。
私たちの周りを警戒して飛びながら、ザリオンの前にその白いマユを順番に並べていく。
「はい。どうも。」
ザリオンが手で合図すると、巨大なハチの群れは、私たちの周りを威嚇するように飛び始める。
「ユラ、何かする気よ!!」
ミナが叫ぶ!
「わかってる!撃つわよ!!」
「風の精霊よ!力を貸して!」
疾風のロッドに魔力を注ぐ。
ロッドに埋められた魔力石が緑色に光り輝き、緑色の光の刃を浮かび上がらせる。
「いけぇ!!!」
ロッドを振り抜くと鋭い風の刃が、巨大なハチの何匹かを真っ二つに叩き切った!
攻撃を交わした二体のハチが、尻から巨大な針を突き出しながら、私とミナにものすごいスピードで迫ってくる。
「このーーーー!!」
ミナがサンダーニードルを突き出す。
剣から発せられる雷が迫り来るハチを見事に焼き尽くした!
残った数匹は、再び空中で威嚇するように飛び回り、私たちの様子を伺っている。
ザリオンの方へ視線を戻す。
ザリオンが手をかざすと、その十数体の白いマユが空中に浮かび上がった。
ザリオンは私たちに向けて、その黒い口を釣り上げる。
「面白いものを見せてあげましょう。」
ザリオンが手で合図すると、白いマユを包んでいた一部の糸がスルスルと解けていく。
「あれはっ!!!」
なんと!その白い塊の一部から、エルフの顔が現れた!
「何っ???」
ミナが叫ぶ!
エルフの生死はわからない!しかし、全員の意識はないようだ!!
「クククククっ!」
ザリオンが手を広げる!
すると今度は、マユの一部がボコボコと動き始めた!
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「ギャーーーーー!」
「痛い!!!!コロシテ、、、」
「イヤっーーー!」
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エルフたちは目を見開いて、悲鳴をあげる!
「やめろーー!!!」
その狂気の光景をみて、ミナがサンダーニードルを突き出す!
雷がザリオンに向かって放たれるが、ザリオンが片手をあげて展開した魔法防壁になんなく弾かれてしまった!
それを皮切りに、空中を飛び回っている巨大なハチが、私たちに向かって襲い掛かってきた。
くっ!!!
疾風のロッドを振り抜き、その何体かを迎撃する!
そして私の後方から、光の矢がザリオン向かって放たれた!
後ろを振り向くと、リリスがこれまでみたこともない怒りの表情で、ザリオンを睨んでいる!
しかし、その光の矢はザリオンを貫くことなく、ザリオンの目の前で魔法防壁によって弾かれる!!
再びザリオンに視線を戻す。
「うっ!!!!!」
目の前の光景をみて、胃の中のものが逆流しそうになり、必死で手で押さえる!
・・・
「なんてことを!!」
・・・
なんとエルフの腹部部分のマユを貫いて、数十センチほどの赤い虫が飛び出してきた!!
エルフたちは首を項垂れ、ピクリとも動かない・・・
ギギギギギギ!
気味の悪いムシの鳴き声が響く!!
「これはこれは、膨大な魔力を吸って見事に肥え太りましたね。」
ギギギギギーーー!
赤い虫があたりを這いずり回る。
ザリオンはその1体を豪快に掴み、そしてそれをそのまま口の中に放り込むんだ!!!!
・・・
「な・・・んなの・・・」
ミナが呆然とその光景を眺める。
「ミナ!リリス!しっかりして!!」
空中を飛び回る巨大なハチを追撃しながら叫ぶ!
そして・・・
目の前のザリオンは、一匹ずつそのムシを食べながら、私たちに向かってニヤリと口を吊り上げた。
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