第102話:狂戦士の危機

(※マーリ視点)


ザリオンの右腕から伸びた、巨大な口のムシがものすごい勢いで迫ってくる!


「くっ!!」


かわしたいところだが、膝がガクガクと震えていて、正直それどころではない。


まるで自分の身体ではないように、自由がきかない!


「このっ!!!」


両手で持っていた剣から左手を離し、ザリオンから伸びるその異形の右腕を受け止める!!


ドスッ!!!!!


左腕に、小さな牙が周りについた巨大な口が噛み付いた!!


「っつ!!!!!」


その巨大な口が私の腕に吸い付き、小さな牙が皮膚を貫き、そこから血を吸っているのを感じる!!


「マーリ!!!!早く逃げて!!!」


リリス様!!!


リリス様が私を心配そうにみている。


残っている力で剣を振り抜くが、さっきとは比べものにもならない。


この巨大なムシ型の右腕を傷付けるも、すぐに赤いムシたちが集まり修復されてしまう。


「ぐっ!!!」


ザリオンを見ると、その目は赤く充血しており、狂気に満ちた笑みを浮かべている!


私がやられたら、リリス様がコイツの餌食になる!


「それだけは許せない!!」


・・・


再び肉体強化の詠唱を始める!!


正直、こんな連続で使ったことはない・・・。


もしかしたら私の肉体は耐えられないかもしれない・・・。


でも、混血の私をずっとお側において、姉妹のように接してくれたリリス様を守るにはこれしかない!!


・・・


その時・・・


私の手を掴んでいたムシを、水をまとった一撃が叩き切った!


「やめておきなさい。そんな身体で使ったら死ぬわよ。」


・・・


「シ・・・、シズ・・クさん!!!!」


シズクさんに叩き切られて、地面に落ちた巨大な口を持つムシがのたうちまわっている。


グシャっ!!!


「・・・」


シズクさんは、何も言わずにそのムシを足で踏みつける。


「血が出てる。大丈夫?」


このムシに噛まれた箇所から血が滴っている。


「血を・・・、血を吸われたみたいで・・・フラッと・・・」


傷口を抑えながら、シズクさんを見る。


「それ以外も大丈夫じゃない。リリスの所まで行ける?」


シズクさんはリリス様の方を向き、改めて無事を確認する。


「はい・・・、申し訳ない・・・」


「気をつけて・・・、何度切っても、大量の赤いムシが集まって回復するんです!!」


シズクさんは私にグッドサインを出し、ザリオンを睨む。


「ああああああ!うまい!!混血の血もうまいーーーー!!」


「もう・・・我慢できない!!!!!もっと血が欲しい・・・・!!」


ザリオンは相変わらず、頭を抱えながら発狂している。


その時、


「間に合ったーーーーーー!!!!」


・・・


「この声は!!」


・・・


声のする方向を見る!


そこには、二人の魔道士が息を切らして立っていた!!!


「ユラさん・・・、ミナさん・・・」


月明かりに照らされる二人の魔道士の姿と、目の前の凛と立つ剣士を見つめる。


心が高ぶっていく・・・


私はみんなの姿を目にして、なぜか涙が溢れた。

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