第101話:血の狂気

(※リリス視点)


「ハア・・・、ハア・・・、ハア・・・」


マーリの息遣いが荒い。


肌は元の色に戻り、大量の汗を流している。


・・・


それは、超肉体強化の時間が終わった証・・・。


特定のアマゾネスが使える超肉体強化は、一定期間その身体能力を数倍に向上させ、人ならぬ力を発揮することができる。


しかし、リミットがきてしまうと、極度に負荷をかけた肉体が悲鳴をあげて、反動として身体能力が著しく下がってしまう。


「うそ・・・、なんで・・・」


私の目の前では、マーリにバラバラにされたザリオンの首だけが、空中に浮かびあがる。


その首は空中で回転したかと思うと、私とマーリを見つめ、大きく避けた口を釣り上げる。


その首からは、赤い線のようなものが伸び、ザリオンの切り刻まれた四肢、身体のパーツに伸びていく。


「くっ!!!また!!!」


・・・


この光景は何度目だろう!


マーリは、ザリオンが何度も復活する度に切り刻んだ。


そして私もだ!


・・・


「ライトニングアロー!!!!」


身体を再び繋げようとするザリオンに向かって、複数の光の矢を放つ!!


光の矢は、復活中のザリオンを貫き、その身体は再びバラバラになった。


しかし!!!


ザリオンの身体は・・・


その中に飼っている・・・


いや!それ自身といった方がいいのかもしれない・・・


複数の赤いミミズのような虫が大量に湧き出て、ザリオンの身体を修正してしまうのだ!!


・・・


「ハア!ハア!ハア!ハア!」


・・・


私はその場に膝をつく。


マーリを見ると、私のかけた光の強化術もすでにその効果を失い、剣に寄りかかるようにかろうじで立っている。


「フフフフ。だから下等種族だというのですよ。」


「エルフの嬢王の高貴な血も吸ってみたいのですが・・・、王の元に連れていかなければなりません・・・」


「でも、吸ってみたい!あああ!どうな甘美な味がするのでしょう・・・」


「あああああああああ!」


「でも!でも!やっぱり吸いたい!エルフの高貴な血を飲めば私もさらに強く、そう王よりも・・・」


「あああああああああん!!」


「吸いたい!どんな味がするのか!」


「あああああああああん!今すぐ吸い尽くしたい!」


ザリオンが、目を血走らせながら私を見つめ、悶絶している。


私を見つめ、頭を抱え、狂ったようにその頭を左右に振っている。そして、また私を見つめ、また再び発狂している!!!


「うううっ、もう無理です・・・、気持ち悪い・・・!」


その光景を見る度に私の背筋に悪寒が走り、冷たい汗が流れる。


・・・


「させるか・・・!」


・・・


発狂するザリオンに向かって、マーリが剣を構える!


「マーリ!ダメ・・・!!!」


ピタッと動作を止め、グルンと気味の悪い角度で首を回して、マーリを見つめるザリオン。


「そういえば、あなたは確か・・・、エルフとアマゾネスの混血と話しておりましたね。」


「ふむ。それはそれは・・・、これまで味わったことのない血・・・」


「一体どうして・・・、これはこれで珍味というものなのでは・・・」


急に冷静な口調になるザリオン。


ニヤリと不気味な笑みを浮かべて、右手をマーリに向けた!


その右手は、もはやヒューマンのものではなく、いくつもの牙が生えた大きな口を開いたイモ虫のように見える!!!


「では、早速いただきましょう!!!」


ザリオンが言葉を発すると同時に、その右腕・・・、巨大な口の虫が、マーリに向かってグーーーンと伸びた!!!



「マーリっ!!!!!」



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