第96話:大樹に潜むモノ

(※リリス視点)


「ハア!ハア!ハア!」


久しぶりに見慣れた風景を見る。


上を見上げると大きな樹木がそびえ立っている。


暗闇に覆い隠され、その頂上までは見えない。


昔はその暗闇も、森の動物たちの寝床となっており、


静かで私たちを見守ってくれているようで心地よかった。


しかし、今は違う・・・。


暗闇の中に、何かとても嫌な気配を感じる。


シズクさんが私たちに向かって、唇の前で指を立てた。


私とマーリは、走って乱れた呼吸を慌てて落ち着ける。


私たちは木陰に隠れる。


シズクさんは、脚に装備していた、短剣のような物を1本抜き取り、


暗闇の中にそびえ立つ大樹に向かって投げた!


っ!!!!


私は目の前で起こった出来事を疑わずにはいられなかった!


なんと、その短剣が投げられた箇所が紫色に光り、一瞬空間が歪んた!!


短剣はその紫色の光に吸い込まれて、落下する気配もない。


私たちはお互いの顔を見合わせる。


この大樹の上には、やはり何かが存在している。


「リリス。あの暗闇に向けて光の矢を。」


シズクさんが私に小声で囁く。


大きく頷き、木陰から出て、大樹の暗闇に向かって手をかざす。


その時!!!!


「これは、これは嬢王様・・・」


「自らお越しいただけるとは・・・」


聞き慣れた声の方に振り向くと、そこには私のよく知る顔があった。


「ギルムンド・・・」


同時に私の前にマーリとシズクさんが飛び出す。


「お気づきになりましたか?まあ、もうお見せしても良いでしょう。私の可愛いペットを。」


ギルムンドは、パチンと指を鳴らす。


すると、紫色の光が、ぼやっと大樹の上の暗闇を包み、再び空間が歪んだ!


そして段々とその物体が姿をあらわにする。


それは、巨大な黒の球体で、中心に巨大な目玉があるモンスターだった!


触覚のようなものが黒の球体からいくつも生えている。


そのモンスターは、目玉をギョロギョロと動かして私たちを見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る