第90話:誘導作戦

(※ユラ視点)


夜も更けて、不気味な程に美しい満月が空に浮かぶ。


その薄明かりがあたりを照らしている。


私たちは、リリスとマーリが隠れ家として使っていた休憩場所で一度休息をとり、夜が更けるのを待った。


そして今は、神秘の森の結界の前に立っている。


リリスとマーリがいれば、なしでも神秘の森への入り口を開く事が出来るらしい。


「作戦はOKね?森に入った瞬間に別れるわよ。」


「私とミナは、リリスたちを見送った後、逆方角に向かい、誘導作戦を実行。」


「リリス、マーリ、シズクはギルムンドと、大樹の上にいるというモンスターの討伐。」


「リリス、絶対に無理はしないで。私たちもエルフたちの誘導に成功したらすぐに援護に向かう!」


「あとはムツキとシト・・・、来てくれればいいんだけど・・・」


みんなが私の方を向いて大きく頷く。


私は自分の前に拳を突き出した。


それに合わせて、ミナ、リリス、マーリ、シズクが拳を突き出す。


全員で大きく頷いた。


「では、まいります!!!」


リリスが一歩前に出ると、何もない箇所に手をかざす。


するとリリスの手が光り、光に輝く大きな扉が出現した。


「行くわよ!!!」


私たちは、光の扉の中に飛び込んだ。


私の視界を眩しい光が包み、視界を奪った。


光が収まり、やがてぼんやりと辺りの風景が視界に浮かび上がる。


そしてそこにはエルフの集落が存在していた。


「シズク、リリス、マーリ、あとでね!」


「ユラさんもミナさんも気をつけて!」


リリスが答える。


そして私とミナに背を向けて、奥に位置する大樹に向かって走り出した。


「ミナ、行くわよ!」


私たちは、リリスたちとは逆の方向に走った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


しばらく走って村の外れまでたどり着く。


「そろそろいいでしょう!」


「ミナ、派手にやりましょうか!」


ミナは少しの笑みを浮かべて大きく頷く。


「ええっ!派手にいくわよー!なんなら全部ぶっ壊してやろうかしら!」


私はミナに向かって笑いかける。


ミナは、地面に手をかざし、召喚の呪文を囁く。


少し離れた地面が赤く光りボコボコと盛り上がる。


「いでよっ!!ゴレさん!!!」


すると、地面からストーンゴーレムのゴレさんが出現した。


大きさは、まだ小さい子供ぐらいの大きさだ。


ゴレさんは、テコテコと小走りでミナに近付いてくる。


「久しぶりね!ゴレさん!今日はたくさん暴れていいわよ!」


ミナは脚にしがみつくゴレさんの頭を優しく撫でる。


私とミナはゴレさんから少し離れる。


「さあ、早速行くわよ!!!」


ミナは、自分の親指を噛み切り、少しの血を流す。


そして巨大な胸の少し上にある、土の魔法刻印にその血を吸わせる。


ミナの血に反応して刻印は赤色に輝く。


「ムアサマワタシノムネヲモチモチシテーン!」


ミナは刻印開放の呪文を叫ぶ。


「やっぱりいつ聞いても恥ずかしい・・・」


ムア爺から教わった刻印開放の呪文は本当に恥ずかしい!


「ちょっとそういう事言わないでよ!余計恥ずかしいじゃない!」


ミナが顔を赤らめる。


それと同時に、巨大な赤い魔力がミナの身体を包む。


「なんて魔力量・・・、呪文以外は本当にすごいわ!!!」


ミナは私に笑いかけ、すぐに地面に手をかざす!!


「じゃあ!派手に行くわよ!!!!」


「ゴレさん!!!パワーアップ!!!!!」


ミナの身体を包む赤い魔力が大きく揺らぐ!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!


大きな地鳴りと共にゴレさんがドンドンと巨大化し、20mほどの巨大なゴーレムへと進化した!


「ゴモオオオオオッーーーーーー!!」


目を輝かせて、マッスルポーズを取りながら、雄叫びをあげるゴレさん。


「さあ、出て来なさい!エルフたち!」


私たちは、エルフたちが集まるのを待った。

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