第85話:炎の助っ人

(※ムツキ視点)


ゴオオオオオ!!


炎が燃えさかる音が響いている。


しかし、私の身体は全く熱さを感じない。


驚いて目を開くと、一つの影がスケルトンドラゴンの炎のブレスを受け止めている。


「嘘っ・・・」


「なんで・・・」


・・・


・・・


「シトッ!!!!!」


「どうしてここに?」


私は目の前の光景が信じられず、驚きの声をあげる。


スケルトンドラゴンの紫の炎と、シトの剣から放たれる紅蓮の炎が激しく衝突し、お互いの火力を相殺し合っている。


「ムツキさんっ!!!!」


「よかった!間に合って!!!」


・・・


・・・


「僕が・・・、僕が、ギルムンドの会話を正確に伝えていればこんなことに・・・」


・・・


シトが炎を受け止めながら、泣きそうな顔でこちらを見つめている。


激しい火力の衝突で、彼の身体にはたくさんの火の粉が飛び散りその服を焦がす。


そんな事は全く気にせずに、炎を受け止め続けるシト。


ああっ・・・


・・・


なんだろう・・・


・・・


胸の奥が熱くなる・・・・


「うおおおおおおおおお!!!!」


「燃えろ!火凛!!!」


シトの雄叫びと共に、剣から放出される火力が高まり、スケルトンドラゴンの紫の炎を打ち消した!!


剣をクルクルと器用に回転させ、剣の炎を鎮火させるシト。


私に近寄り、そっと肩に手を掛ける。


「ムツキさん、大丈夫ですか!!!!」


・・・


シトの強い視線が私の目を捉える。


・・・


その強い視線に一瞬心を奪われ、ボーと見つめてしまう。


・・・


ハッと我にかえり、シトに現状を伝える。


・・・


「ダークエルフは複数いるの!」


「気配が全く感じられない・・・」


・・・


「そうなんです!おそらくここの周辺はダークエルフの結界で覆われていました!」


「ムツキさんは、その結界に閉じ込められていたんだと思います!!」


「僕は白ヘビのチビちゃんがここから動かないので、思いっきり火凛を振ってみたんです!」


「そうしたら、突如、辺りの風景にヒビが入って、ムツキさんとスケルトンドラゴンが姿を現したんです!」


チビちゃんが彼の胸元から小さい顔を出す。


「あなたが・・・」


「いい子・・・!」


チビちゃんの頭を撫でる。


「だから・・・ほら!!!」


シトが見つめる方向に視線を向ける。


そこには三体のスケルトンドラゴンの横に、同じく三体のダークエルフが並んでいた。


そして周りの風景もガラッと変わっている。


私がこれまでいた大きな木々の茂みはなく、私の目の前には広い草原が広がっている。


・・・


しまった・・・いつの間にか、ダークエルフの結界に捕まっていたとは・・・


・・・


自分の不甲斐なさが悔しく、唇を噛みしめる。


・・・


気を取り直して、顔を上げる。


そこには三体のダークエルフがこちらを睨んでいる。


・・・


「やっとお会いできたわね!」


・・・


私は、悔しさを押し殺し、三体のダークエルフを睨む。


三体のダークエルフは、まるで分身したかのように同じ外見を持っていた。


鋭くつり上がった目、大きく尖った耳、肌の色は褐色で、銀髪の長い髪をなびかせる。一際長い腕と、長い舌が不気味さを強調している。


「キーーーヒヒヒヒヒヒヒ!!」


「結界が壊れたぞ!兄者!!」


「キーーヒヒヒ!」


「案ずるな、弟よ!ただのクズが一人増えただけだ!」


「キーーヒヒヒヒヒヒ!」


「兄者!早く!早く!あの女をいたぶりたい!!!」


三体のダークエルフが同じような奇声をあげている。


「どうやら、もう幻術や結界の類ではないらしいわね・・・」


「はいっ!どうやら三つ子のダークエルフみたいです!」


・・・・


「ムツキさん、それより身体の傷が・・・」


シトが私の身体の傷に視線を落とす。


「大丈夫!そのうち回復するわ!」


「さあ、シト!第2ラウンドを開始しましょうか!」


「はいっ!」


私たちは、三匹のスケルトンドラゴンと、三体のダークエルフに向かい合った。

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