第74話:ダークエルフと光の矢

ギャオオオオン!!!


スケルトンドラゴンの声が鳴り響く。


「いい加減、姿を見せたらどうなのよ!」


ユラさんが叫ぶ。


・・・


・・・


しばらくして、スケルトンドラゴンの後方の樹木から1つの影がうごめいた。


「キヒヒヒ!別に姿を見せなくてもよかったんだが・・・」


「俺はな・・・、美しい女が苦しみながら死ぬのを見るのが好きでね・・・」


暗く低い声が辺りに響く。


姿を現した男の姿は、ギョロギョロとした大きな目、大きく尖った耳、肌の色は褐色で、銀髪の長い髪をなびかせる。きっちりとした黒ずくめの服と同色のライトアーマーを装備し、腰には剣を指している。極度の猫背と長い腕が、一層不気味さを強調している。


「お前さんたちが泣き叫ぶ姿を、もっとよく見たくてね・・・」


男は長い舌を出しながら唇をいやらしく舐める。


「ダークエルフ!!」


ミナさんが叫ぶ。


「おやおや、半端者もまじってるじゃないか?」


ニヤリと口の端を釣り上げる。


「さて、じゃあ早速見せておくれよ・・・、その苦しむ姿をさーーー!!!」


「キーーーヒヒヒヒヒヒヒ!!」


男の奇声と共に、スケルトンドラゴンの大きな身体が紫色に光る。


ギャオオオオン!!!


スケルトンドラゴンは大きな口に紫の炎を溜め始める。


「下がって!」


ムツキさんが僕たちの前に立ちふさがり、両手を広げる。


すると、目の前には大きな黒い魔力防壁が出現した。


スケルトンドラゴンは長い首を大きく振り、紫の炎のブレスを僕らに向けて放った!


ゴオオオオオオオッ!


「クッ!!!!熱いの苦手なのにーーーー!!!」


ムツキさんは叫びながら、炎のブレスを魔力防壁で受け止める。


僕たちの周り以外、辺り一面が紫の炎で焼き尽くされた!!!


炎のブレスがやむと同時に、ムツキさんが出した黒い魔力防壁は、音を立てて崩れ落ちる。


「キーーーヒヒヒヒ!!」


「お前、闇の者だな!いいぞ!いいぞ!!お前は俺のペットにしてやるーーー!!!」


ムツキさんに向かって叫ぶダークエルフ!


「お前は・・・、殺す!!!」


ムツキさんは額をビキビキさせ、怒りをあらわにする。


再度、口に炎を蓄えるスケルトンドラゴン!


僕とシズクさんは、顔を合わせて頷き、自らの気を高めていく。


それと同時に後方の、ユラさん、ミナさんが呪文の詠唱を始めた。


「来るよ!!」


ムツキさんが、再び黒い魔力防壁を展開する。


その時、


「ライトニング・アローーーー!!!!」


叫び声と共に、大量の光の矢が出現し、スケルトンドラゴンに向かっていく。


大量の光の矢が突き刺さったスケルトンドラゴンは、耳を塞ぎたくなるような叫び声をあげる!


矢が放たれた方向に目を向けると、そこには二人の女性が立っていた。


そのうちの一人は剣を抜き、後ろの女性が両手を広げている。


ダークエルフは、その二人を凝視している。


「見つけたぞ!!!見つけたぞーー!!キヒヒヒーーーー!!!」


目の前では、大量の光の矢を被弾したスケルトンドラゴンが、ガラガラと大きな音を立てて崩れていく。


僕とシズクさんは、その隙を見逃さなかった!


「闘気開放!!!!」


僕らの身体を光が包む。


この術は自らの肉体の能力を瞬間的にアップする強化術だ。その代わりに術が切れた時には、逆にしばらくの間、能力が減少してしまう!


「キヒヒヒーーーー!!」


目にも止まらぬスピードで、女性二人に飛びかかるダークエルフ。


前にいた女性の戦士と剣を交える。


ダークエルフの剣撃を受け止める女性剣士。


しかし、次の瞬間、ダークエルフが口から紫の息を女性剣士に向かって吹きかける!


女性戦士が目をつぶった瞬間、ダークエルフの回し蹴りが女性騎士をとらえた!


大きく吹き飛ばされる女性剣士。


ダークエルフは女性剣士には目もくれず、もう一人の女性に飛びかかる!!


「キヒヒヒーーーー!!」


間に合うか!!!!


キーーーン!!!


ダークエルフと女性の間に間一髪滑り込み、剣撃を受け止める!


「間に合った!!」


シズクさんは、自らの身体で女性を覆い隠すようにし、剣を構える!


「この・・・、この下等生物がーー!!!!」


ギリギリと剣に力を込めるダークエルフ!!


剣と剣越しに、僕とダークエルフの顔の距離が近付く。


次の瞬間、ダークエルフは僕に前蹴りをし、その反動で大きく後ろに飛んだ!


そして何かを呟いたかと思うと、僕たちに鋭い視線を向ける。


「今度は・・・、今度こそは俺の慰み者にしてやるーー!!キヒヒヒヒ!!」


口から長い舌を出して、卑しく唇を舐めるダークエルフ。


そして、一瞬で僕らの前から姿を消した!


・・・


先ほどまでの事が嘘のように、辺りは静けさを取り戻す。


・・・


「だっ!大丈夫ですか?」


・・・


シズクさんの後ろで座り込む女性に声をかける。


「はい・・・・」


僕はその姿を見て目を見開いた。

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