第73話:森の追手
「これから・・・、嬢王にどうやって会うかよね・・・」
ユラさんが沈黙を破る。
僕らは神秘の森の結界から強制的に排除された。
そして話し合いの末、フェローナの街に一度戻る事を決めて森の中を進んでいる。
神秘の森のエルフの嬢王、リリス・エルフィードさんに会いに行ったが、謁見させてもらえなかった。
エルフを取りまとめてたギルムンドという男が、全く話を聞いてくれなかったのだ。
しかも、あの男はエルフ以外の他種族を本当に差別している。
それよりも僕は、ミナさんを目の前でバカにされた事が許せなかった。
「シト・・・、さっきはありがとう・・・」
・・・
「私の代わりに怒ってくれて嬉しかったわ・・・」
・・・
ミナさんが少し顔を赤らめて僕に話しかける。
「ユッ、ユラさんが我慢して下手に出ているのに、僕は感情的になってしまって・・・」
「本当にすいません・・・」
足を止めて、みんなに向かって頭を下げる。
「シトがあと数秒遅れてたら、私の脳天チョップが炸裂してたわ!」
ユラさんが僕に向かって笑みを浮かべる。
「よくぞ言った、弟子よ!」
シズクさんが腕組みをしながら、ウンウンと首を振る。
「私はもっと前から切り刻んでやりたかったけどね。」
ムツキさんは目をギラっと輝かせる。
・・・
「みんな・・・・」
・・・
ミナさんは涙ぐみながら、みんなを見つめる。
「まあ、まずは街に戻ってレッドバードを食べて、温泉に浸かって考えましょう!」
ユラさんが、ミナさんの首に肩を回した。
ミナさんの顔に笑みが戻る。
その時、
シズクさん、ムツキさんの表情が一変した!
「さっそく登場ってわけね・・・」
ユラさんが二人の行動を察して声をかける。
「来るわよっ!!!」
ユラさんの声と共に、僕とシズクさんは、ユラさんとミナさんを囲むように魔剣、
ムツキさんは、腕組みをしながら辺りの気配を探知していた。
そして、僕らの体制が整うと同時に、辺り一面の地面から紫の光が浮かび上がる。
ギギギギッ!!
・・・
ギギギギッ!
・・・
叫び声のような、骨の擦り会うような音が辺りに響き、スケルトンが地面からドンドンと出現する!
「前に襲ってきたやつよね!まったく・・・、数を増やせばいいってもんじゃないっての!」
ミナさんが呆れたポーズを取る。
「どうやら、今日はそれだけじゃないみたいよ!」
ユラさんが目の前を指で指す。
その指先、樹木が生い茂る影から、複数のスケルトンが何かを引きずりながらゆっくりと姿を現す。
僕はその光景をみて目を見開く。
スケルトンが引きずるそれは・・・
「もしかして・・・」
・・・
目を凝らして見つめる。
スケルトンが引きずるそれは、頭に袋を被せられた十数人のヒューマンだった!!
「ヒッ!!!助け・・・、助けて!!!」
・・・
「おっ・・・、お願いしま・・・、助けてっ!」
・・・
袋で包まれた顔から叫び声が聞こえる。
「一体!何を???」
僕は声を荒げる!
「まずいわね!助けるわよ!」
ミナさんが魔法の詠唱に入ろうとした時、
頭に袋を被せられたヒューマンたちの体を黒いオーラが包み始める。
「やっ!お願い・・・します!!やめ・・・、ギャアアアーーー!!!」
・・・
「やめて!!!いやだーーーー!!!!あああああーー!!!!」
・・・
十数人のヒューマンたちの断末魔と同時に、黒いオーラがヒューマンたちを完全に飲み込んだ!
「闇の召喚魔法!!!」
「まさか行方不明のヒューマンたちって・・・」
ミナさんが叫ぶ。
・・・
「相手もかなりの魔道士よ!」
ユラさんが答える。
・・・
その時
ブオオオオオオオンッ!!!
黒いオーラが空中に集まり、丸い円を描くようにグルグルと回転を始めた。
そして、そこに地面から現れたスケルトンがバラバラになりドンドンと集合していく。
・・・
「こっ!これはっ!!!」
・・・
僕たちの目のまで、骨の巨大な物体が形成されていく!
・・・
ギャオオオオン!!!
・・・
スケルトンの骨が集まってできたそれは、悲鳴のような豪快な咆哮を鳴らし、骨だけでできた翼を大きく伸ばした!
耳を塞ぎたくなるような、ギシギシと骨が軋む音が響く。
「スケルトンドラゴン!」
ミナさんが目を見開いて叫ぶ。
僕らの目の前には骨だけでできた巨大な身体を揺らす、一体のドラゴンが姿を現した。
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