第71話:潜入!神秘の森

「ここよね・・・?」


ユラさんが広げる地図をみんなで眺める。


・・・


・・・


「ていうか、明らかに怪しいわよね、あの石版・・・」


ミナさんが石版を指差しながら呟く。


「怪しい。」


シズクさんが同調する。


目の前には、木のツタや雑草が生い茂っている。その中に大きな岩でできた石版が一際そびえ立っていた。


「とりあえず探索してみましょうか。」


ユラさんの声で、石版に近付いていく。


すると、石版が近付くに連れて、ユラさんが身に着けている光の勾玉がぼんやりと輝き始めた。


「これって!!」


ユラさんは、すぐに勾玉を首から外し、手に持ちかえゆっくりと石版に近づいていく。


僕らもユラさんの後を追うように歩き始めた。


その時、


・・・


ブーーーン


・・・


突然、視界が揺れて辺りの景色が一変する!


・・・


「なっ!!!!」


僕は思わず驚いて声を荒げる。


「これって・・・」


ユラさんもその景色に驚きを隠せない。


ムツキさんは無言で厳しい顔をしている。


強い光が僕らの視界を塞ぐ。


・・・


・・・


・・・


ゆっくりと目を開いたその時、


目の前には、これまでの景色にはない、大きな村が存在していた。


僕らの近くには巨大な木のツタでできた門があり、奥には木製の建造物が立ち並ぶ。


そして、奥の方の中心部には巨大な樹木がそびえ立っている。


至る所にぼんやりとした光の灯火が浮かび、幻想的な雰囲気を強調している。


「これが・・・、神秘の森・・・」


ユラさんが口を開く。


僕は目の前の景色に心を奪われていた意識をハッと取り戻す。


ミナさん、シズクさんも同じように、この幻想的な風景に心を奪われていた。


・・・


・・・


・・・


その時・・・


ガチャン!!!!!


いつの間に僕らの周りを、複数のエルフたちが取り囲む。


手には弓矢、剣、少し離れた所には、木でできた杖を持つ魔道士のようなエルフが、僕らに向かって敵意をあらわにしている。


「下界のものよ。なぜここに来れた?」


一人の屈強なエルフの戦士が、僕らを睨み剣を突き立てる。


「リリス、リリス・エルフィード様の知り合いの者から手紙を預かってきました。そして、この結界を通過するためのこの勾玉も。」


ユラさんが説明しながら勾玉を見せる。


屈強なエルフの戦士は、近くのエルフに耳打ちする。


「本来、ここは貴様らのような者が来るべきところではない。嬢王の判断が出るまで拘束させてもらう。」


周りを取り囲むエルフたちが、一斉に武器を突き立てる。


ムツキさんが、嫌悪感をあらわにし、背中の槍に手をかける。


しかし、ユラさんがその行動を手で制しした。


ミナさんが呆れたよう素ぶりで手を広げ、シズクさんは周りの戦士を睨んでいる。


その素振りを一人の戦士が睨み、さらに剣を近付ける。


ユラさんはそれをチラッと見て、


「わかりました。嬢王の判断を待ちましょう。」


ユラさんは深く頭を下げて、エルフの戦士に敬意を見せた。


「ふんっ!!連れて行け!」


エルフの戦士は僕らを一瞥して、周りのエルフたちに指示を出す。


エルフたちに囲まれて僕らは村の中を進む。


明らかにミナさんの表情が強張っている。


・・・


・・・


「ミナさん・・・」


・・・


僕はミナさんの名前を小声で呼び、あえて大げさな笑みを見せた。


ミナさんは、少し驚いた表情の後、僕に少しの微笑みを返した。


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