第67話:感謝の後ろ姿

「よし!そろそろ行きましょうか。」


ユラさんがみんなに声をかける。


あれから僕たちは、ドワーフの秘密基地でしばらく時を過ごした。


ユラさんは傷を負ったドワーフやアマゾネスのみんなの治療を。


シズクさんは狩りの腕前を活かして食料の調達を。


ミナさんは、ふもとの街の修復をゴレさんと共に先導して担当していた。


僕はというと、動かなくなった右腕のリハビリと、主にドルさんの手伝いだった。


ドルさんは凄腕の鍛治職人で、新しい武器をドンドンと開発していった。


「うむ、そろそろ行くか。」


秘密基地の大広間で、僕たちはドルさん、ローザさん、ドワーフ、アマゾネスのみんなに見送られている。


アマゾネスの戦士長のソレアさんが、声をあげて泣いている。


「ううっ!シト様・・・、まだ大してお話もできていないのに・・・」


そんなソレアさんを横目に、ドルさんが僕たちに視線を送る。


「ワシが作った新装備は忘れずに持ったか?」


ドルさんは満足した様子で僕らを見つめる。


「はい!ありがとうございます!」


みんなの装備を見渡す。


ユラさんは、白のタンクトップと、黒のミニスカート。腕、肩、脚を覆う白のライトアーマーを装備し、白のローブを羽織っている。その腕当てには、エメラルド色のクリスタルが埋め込まれており、一際光り輝いている。ピッチリとしたタンクトップが、いつも通りユラさんの豊満な胸を強調している。そしてドルさんが作った新しい武器、風属性のロッド"疾風のロッド"を装備する。


ミナさんは、黒のTバックと黒のブラジャー。黒のローブを羽織る。同じく腕、肩、脚を覆う黒のライトアーマーを装備。ミナさんは、相変わらず身に着けている服の布部分が少なく、目のやり場に困ってしまう。そして武器はドルさんが新しく打った雷属性のレイピア"サンダーニードル"を腰に装備する。


シズクさんは、黒のタンクトップに黒のミニスカート。太ももまでの網タイツ。腰丈の黒のマントを羽織り、シルバーのライトアーマーを身につけている。ミニスカートから伸びる網タイツの脚がとてもセクシーだ。武器は、今回のフレアドラゴン戦で活躍した、水属性のショートソード"雨音あまおと"。そしてドルさんからは、新しい武器として、太ももにクナイのような小さな黒い短刀を複数装備している。


僕は、いつもの黒を基調とした半袖とパンツ。シズクさんとお揃いのマントを羽織る。武器はガジュラ戦で壊れてしまった火属性の魔剣"火凛かりん"の改良版だ。ドルさんがこの短期間で新しく改良してくれた。

装備は真っ黒のライトアーマーで、右腕を覆うアームガードが僕の黒いアザだらけの腕を隠してくれている。なんでも、前の大戦で共に戦ったドルさんの仲間の戦士が装備していた鎧を、僕用にフルカスタムしてくれたらしい。魔力耐性が高く、右腕のうずきを少しでも抑える効果が出ればと気遣ってくれていた。


ムツキさんは、真っ白で所々に紫の刺繍が施してあるピッチリとしたタイトドレスと、スケスケのローブを身にまとう。太ももの切れ目までスリットが入っており、チラチラとモッチリとした太ももが見え隠れする。


「ほれ、オーダー通りじゃろう。」


ムツキさんを眺めながら、話しかけるドルさん。


「ぴったりだわ。さすがね、ドワーフの長よ。」


この装備は、ムツキさんがオーダーしたのだろうか?


胸元も大きく開いており、大きな胸がはみ出しそうだ。


「あとは・・・、持っていくがいい。」


ドルさんは、ムツキさんに細長い1本の槍を手渡す。


「私は、あまり武器は好きじゃないのに・・・」


「ふん、よく言うわい!!」


ムツキさんはその槍を背中に背負った。


「後はこれじゃ。一番しっかり者はと・・・」


・・・


「ユラじゃな!」


・・・


ミナさんが大きな胸を揺らしながら、手をあげるも華麗に無視される。


ムア爺から預かってドルさんに渡していた、ミスリルの短剣と手紙をユラさんが受け取る。


「良いか、ここに私の印である貴重な鉱石をはめ込んでおる。この短剣を持っているという事は、ムアとワシがお前たちを認めたという証じゃ。これを見せれば、リリスも納得しようて。」


ユラさんは大きく頷き、短剣と手紙をしまう。


「では、気をつけていくのじゃぞ。の帰りには必ずここにも立ち寄るのじゃぞ。」


ドルさんは少し寂しそうにヒゲをさする。


ローザさんが僕に向かって歩み寄ってくる。


そして僕の目の前に立ち、僕の顔をそっと胸の中に抱きしめる。


「シト・・・、必ずまた会いましょう。死んではダメよ。また生きてあの技をお願い・・・」


こっそりと、ムツキ・スペシャルをおねだりされる。


「ロッ、ローザさ・・・ん。息が・・・」


ローザさんの甘い匂いとモチモチの柔さを感じ、何だか無性に寂しくなった。


「ふぁいっ!!!」


僕はローザさんの胸の中で、返事をする。


「ユラ様、ミナ様、シズク様、ムツキ様ーー!!どうかご無事で!!!マッスルーーー!!!」


ドワーフたちが女性陣に向かって、マッスルポーズを取りながら涙を流し、声を荒げる。


「シト様ーー!クルビレの村にも必ずお立ち寄りください!」


アマゾネス達の甘い声が聞こえる。


そしてアマゾネスさんたちは、よくわからない言い争いを始めた。


「では、最後にこの装備をやるからには、一つ条件があ・・・!」


ドゴッ!!!


ドルさんのお腹を、ローザさんの鋭い肘テツが襲った。


・・・


「頼むーー!後生じゃーー!プリプリの尻をー!!!!」


ローザさんに首根っこを掴まれるドルさん。


・・・


僕たちは、そんなドルさんとローザさんを笑いながら見つめ歩き出した。


「でも、かわいそうだわよね・・・」


ミナさんが声をかける。


「別にいいんじゃない。」


ユラさんがちょっとイヤそうな顔をして話す。


「恩には恩で返すのが礼儀。」


シズクさんはウンウン頷いている。


「あれで昔は相当のイケメンだったのよ。」


ムツキさんが、ドルさんの若かりし頃を話す。


全員、驚嘆の声をあげる!


ユラさん、ミナさん、シズクさん、ムツキさんは、顔を見合わせて、笑みを浮かべながら大きくうなずいた。


そして、立ち止まり、ドルさん達の方へ背を向けて、大きくスカートをたくし上げてお尻を突き出して見せた。ミナさんは何も履いてないので、そのままのTバック姿のお尻を突き出す。


ドルさんの喜びの雄叫びと、ドワーフ達の割れんばかりの歓声が上がる。


その後、ローザさんが怒りの表情で石を投げてきた。


「今度会うときは尻を!尻を!モチモチさせてくれー!!!」


「二度とくるなーーーー!!」


ドルさんとローザさんの叫び声が響く。


みんなは後ろを振り向かずに大きく手を降る。


そして、僕たちは笑いながら、また歩き出した。




[第8章・完]

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