第65話:しつこい乙女心

-- ドワーフ/秘密基地の大広間 --


周りには傷ついたドワーフさんや、アマゾネスさんたちが治療を受けている。


僕は、ドルさん、ローザさん、ユラさん、ミナさん、シズクさん、ムツキさん、そしてソレアさんと席を囲む。


みんなと今回の戦いを振り返っていた。


僕が暴走して、最終的にスカイハイを倒したこと。


みんなが僕の暴走を止めてくれてこと。


スカイハイに切られた腕が、暴走後に再生したこと。


・・・


・・・


正直、ユラさんが刺されたあたりから記憶がない・・・


「すいません・・・何も覚えてなくて・・・」


「でも・・・、みんなが無事で本当によかったです!」


動かない腕をさする。


僕の右腕が動かない理由は、今の所わかっていない。


「大丈夫です!きっとまた動くようになりますよ!」


みんなの心配そうな表情をみているのが辛くて、あえて明るく振る舞う。


「ワシらは負傷者の治療が落ち着いたらふもとまで下り、街を修復する予定じゃ。お前たちはどうするんじゃ?」


「はい、私たちは傷が癒えたら、ムア爺、いやムアハルト様から預かった手紙を、"神秘の森"に届けようと思っています。」


ユラさんが光の勾玉と地図をドルさんに見せる。


「うむ。ムアが手紙を渡せと言った相手は、リリス・・・、リリス・エルフィード。」


「ベリエルと共に、深淵の大樹海の結界を作ったアイラの姉じゃよ。」


「今では、神秘の森で、エルフの嬢王として部族をまとめているはずじゃ。」


「なかなかの堅物じゃて。少々苦労するかもしれんの。」


「ムアの手紙だけでは不安じゃの。ワシも一筆書くとしよう。後は約束通り、ワシらドワーフ族はこの恩を決して忘れぬ。お主らに全力を持って礼をさせてもらうとしよう。」


「身体がいえるまで、ここでゆっくりとしていくがいい。」


「はい、ありがとうございます!」


僕たちは、ドルさんに礼を言う。


「ローザ、お主はどうする?」


「私たちはクルビレ湿地帯の村の状況を見に戻る。その後、ドワーフの村の復旧を手伝う人員を手配する予定よ。」


「ローザ、すまぬ。助かるぞ。」


「気にしないで。」


ローザさんは、ドルさんの腕の傷をさする。


「私たち、アマゾネス族も協力を約束する。」


ローザさんが僕たちを見つめ、大きく頷く。


「それでじゃ・・・」


「お前さんはどうする?ナージャ・・・、いやムツキよ。」


・・・


・・・


シロちゃんを撫でていたムツキさんの手が止まる。


・・・


「私は・・・」


「ここまで色々とやってしまったら、もう戻るところはない・・・。」


・・・


「・・・うむ。お前さんさえよければ、この者たちに力を貸してやったらどうじゃ?」


ムツキさんがドルさんを見つめる。


「昔、ベリエルが儂らにしてくれたように助けてやってはどうじゃろう?」


ユラさん、ミナさん、シズクさんがムツキさんを見つめる。


「わっ、私は・・・ベリエル様に再び仕えることができればそれでいいの・・・」


「でもベリエル様は今・・・」


ムツキさんが僕を悲しそうな顔で見つめている。


・・・


・・・


「少し考えるわ・・・」


そう言い残して、ムツキさんは立ち上がり外に出て行った。


「奴は闇の王に従いながら、ずっとベリエルの行方を探しておったのじゃろうて・・・。仲間になってくれるのなら、お主らも知っての通り、とても頼りになるじゃろうに。」


「全くどれだけベリエルに恋い焦がれておるのか・・・、しつこい乙女じゃの・・・」


ドルさんは少し悲しい笑みを浮かべながらヒゲをさする。


「奴には気持ちの整理をする時間が必要じゃて。」


・・・


「一部のヒューマンとモンスターが協力し合い、争いを止めようとする・・・、なんじゃか懐かしいわい。」


ドルさんは、昔を懐かしむよう天井を見上げてヒゲをさする。


・・・


「さあ、皆の者!今晩はドラゴン退治の立役者の復活祝いじゃ!!!」


「大いに食って飲んで騒ごうではないか!!」


ドルさんの叫び声と共に、ドワーフとアマゾネスの歓声が湧く。


僕は、ムツキさんが去っていた方向をしばらく見つめていた。

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