第63話:おっぱいのチカラ

(※ユラ視点)


「全員!今すぐにおっぱいを出しなさい!!」


私の言葉が場を凍らせる。


・・・


・・・


「ユラ、痴女。」


両手をあげ、呆れたような素ぶりをするシズク。


「おいっ!この状況でお前は何を言っている。」


ローザが冷たい視線を私に向ける。


「ユラ、いくら私でもこの状況でそれは・・・」


ミナが頭を抱える。


「脱ぐわ!脱ぐわよー!!」


ムツキはもはや目がハートである。


・・・


私は自分の放った言葉を思い出し、今さら恥ずかしさで泣きたくなる。


「ちっ!ちっ!違うのよ!」


私は、ガジュラ戦で漆黒のオーラに飲み込まれて暴走したシトが、私の裸の胸をみて、正気を取り戻した事を話した。


「シトは、みんなも知っている通り、ムッツリスケベなのよ!あいつ、大人しそうに見えて、ムチムチのおっぱいが大好きなの!思春期の少年には当たり前だけど、誘惑して意識を取り戻す方法に賭けるしかないのっ!」


「ミナ!シズク!シトの動きが少しでも止まったら、ブレスレットを使うわよ!」


二人はブレスレットを触り、大きく頷く。


「ローザ、ムツキ!誘導をお願い!」


「シロちゃん!もしもの時のために、あそこに寝ているおじさん(ドルさん)を守って!」


白ヘビのシロちゃんは顔を背けるも、ムツキになだめられ、しぶしぶとドルさんの方にはっていく。


その時、ちょうどシトの咆哮ほうこうが響いた!


私たちにターゲットを絞ったのだろう。


シトの紅い瞳と私の視線が絡み合った。


「行くわよ!!!!」


私たちは、一斉に動き出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



私とミナとシズクは、シトを中心に3方向に散らばった。


シトの目の前には、ローザとムツキが立つ。


「がああああああああ!!!!」


シトは天に向かって、大きく咆哮する!


「シト!!!!見なさい!!!」


私は叫び、自分のタンクトップを勢いよく脱いだ。


それに合わせて、散らばったシズク、ミナ、ローザ、ムツキも惜しげもなく上半身をあらわにし、大きな胸をさらけだす。


・・・


・・・


・・・


「グググググッ・・・」


シトは私、ミナ、シズク、ローザ、ムツキを目で追い始める。


・・・


・・・


・・・


「はああああ・・・」


「この子は本当に・・・、正直というか・・・、バカというか・・・」


すぐ様、動揺するシトを見て、少し呆れる。


私たちは一歩ずつシトの距離を詰めていく。


「ベリエル様ーー!いや、シトーー!ほーら、ムツキのおっぱいです!あなたの好きにしてくださーい!」


ムツキは、大きな胸を手で持ち上げて、上下に揺さぶる。


シトの目がムツキに釘付けになる。


「シト。ほら、お前の好きにしていいのよ!」


ローザが隣にいるムツキに寄りかかり、大きな胸を持ち上げ、胸の先を舌で舐める素ぶりをする。


二人の何もつけていない巨大な胸を見て、シトが小刻みに震え始める。


「シトーー、ほら、早くこっちにおいで!」


ミナが、シトに背中をみせ、豊満なTバックのお尻を見せながら、上半身をひねり大きな胸を手で掴む。


「シト。今晩の添い寝は私の番。」


シズクが前かがみになり、両胸を手で寄せて誘惑する。


それぞれのセクシーな誘惑を忙しく目で追うシト。


・・・・


・・・


そしてシトの視線が私に注がれた。


・・・


・・・


「なに・・・よ!!!」


「これだけの大きな胸を見たからいいでしょ!」


ミナ、シズク、ローザ、ムツキが私を見つめ、シトを誘惑するように促す。


・・・


・・・


「はあああ・・・」


・・・


「やりますよ!やればいいんでしょ!」


「この!エロ!エロ!エロシトッ!!!!」


私は、自分の胸を手で持ち上げ、そして胸の先を中指で触って見せた。唇を舌でぺろっとなめ、シトへ物欲しそうな視線を投げる。


「シト・・・お・ね・が・い・・・ムツキ・スペシャル、私にもして・・・」


・・・


・・・


・・・


「あああああ・・・ああああ!!!」


シトは頭を抱えて苦しみだした!


今っ!


今だ!!!


「ミナ!シズク!!!」


私たちは同時にブレスレットをつけた右手をあげて、一斉に呪文を唱える。


「森の神樹よ!この者の魂を救いたまえ!!!!」


私たちの3人の声が揃う!



「神・樹・封・印」



私たちのブレスレットから、緑色に光り輝く細い木の枝が伸び、シトに巻きついていく。


「がああ・・!!あああ・・・!!!」


シトの黒いオーラが、一瞬勢いよく動き出す。


そして黒いオーラがその動きを段々と弱めていくと同時に、シトの変化した身体が少しずつ元に戻っていく。


「ああああ・・・・」


お腹の底をえぐるような咆哮も、今はか弱く聞こえる。


シトが人間の姿に戻っていく。


私たち3人は、ドンドンと短くなっていく神樹封印の枝に合わせて、シトとの距離を縮めていく。


シトはすぐ目の前にいる。


信じられないことに、スカイハイに切られた腕が復活している。


しかし、その腕はこれまでのシトの腕とは異なり、黒いアザで覆い尽くされている。右半分にしかなかった黒いアザも、上半身、左腕にも広がっている。


「シト・・・・」


・・・


「大丈夫・・・」


・・・


「もう・・・、大丈夫だから・・・」


禁断の力を使い、こんな姿になるまで戦ってくれたシトの姿を見て、私の胸が熱くなる。


そして無事に元のシトに戻ってくれた事に緊張が緩み、涙で視界がぼやけ始める。


「おっ・・・」


シトが何かを話そうとしている。


「おっ??」


ミナが聞き返す。


「おっ・・・、おっぱい・・・」


「モチモチおっぱい・・・」


「おっぱいが・・・、いっぱい・・・」


シトがフラフラと倒れそうになりながらつぶやく。


私とミナとシズクはお互いの顔を見合わせ、笑みを浮かべる。


ミナ、シズクも目に涙を溜めている。


そして倒れ込んだシトを、私たち3人は抱きかかえてその場に座り込む。


私たち3人の胸に包まれて、シトはそのまま意識を失った。


「シト・・・もう大丈夫・・・」


・・・


「ゆっくり休みなさい・・・。」


・・・


私たちはしばらくの間、その場でシトの温もりを感じていた。

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