第62話:ユラの奔走と奇策

(※ユラ視点)


シトが放った魔力弾が、スカイハイの顔面に直撃し、大きな爆発を起こした。


私はその風圧で飛ばされそうになり必死に堪える。


「ダメ!!!あの子!また暴走してしまう!!!」


ガジュラと戦った後、シトは暴走し、手当たり次第に辺りを破壊していた。


そう・・・私の事すら気付かずに!!


そうだ!!!


「ムア爺のブレスレット!!」


手首に巻かれたブレスレットを見つめる。


ムア爺が暴走したシトを止めるため、私とミナとシズクに渡してくれたブレスレットに触る。


すぐさま、あたりを見渡してシズクとミナを探す。


・・・


「いたっ!!!シズク!!!」


少し先の地面に横わたるシズクを見つける。


「シズク・・・お願い!!生きていて・・・!!」


・・・


私はスカイハイに刺された右足を引きずり、シズクの元に向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「シズク!!!シズクッ!!!」


地面に伏せるシズクを抱き寄せて、心臓の鼓動を聞く。


「大丈夫!生きてる!!!!」


シズクの頭を膝の上にのせる。


親指を噛み切り、胸の刻印に血を吸わせる。


血を吸い、緑色の光を発する刻印。


「ムア爺!お願い・・・!助けて!!!」


・・・


「ワタシノムネヲモチモチシテーン!!!!」


・・・


刻印解放の呪文を唱える!!!


私の身体を緑色に光り輝いた大量の魔力が包む。


「森の精霊、エンシェント・エント、この者に癒しを!!」


シズクの傷ついた腹部に手を添える。


私の魔力がシズクに流れ、傷がみるみるうちに塞がっていく。


「すごい・・・、なんていう力なの・・・」


私はシズクの回復する様を見ながら、刻印の力に驚く。


「ゴホッ!!!ゴホッ!ゴホッ!」


「シズクッ!!」


「ユラ・・・、また昔飼っていた狼のポチと会ってきた・・・」


「シズク!よかった!!!シトが暴れている!!!」


シトの方を見る。


爆煙が消え、シトの姿が浮き上がってくる。


・・・


・・・


・・・


「これって・・・」


スカイハイの顔は跡形もなく消し飛んでおり、シトはスカイハイの両腕を掴み、その身体を引きちぎっていた!


シトの大きな爪からは、漆黒のオーラが漂っている。そのオーラは、スカイハイの炎を寄せ付けない。


「があああああああ!!!!」


スカイハイの身体を引きちぎりながら、雄叫びをあげるシト!!


「まずい!!!!」


「あれが・・・、シト・・・???」


流石のシズクも驚きを隠せない!!そういえば、シトの覚醒を見るのは始めだ!!


「ムア爺の言葉、覚えている?封印するわよ!!!!」


「このままじゃ、あの子!壊れてしまう!!」


私はブレスレットを指差し、シズクに見せる。


シズクは大きく頷いた。


「ミナッ!!!!」


あたりを見渡し、ミナの姿を発見する!


「私はミナのところにいく!ムツキを探して連れてきて!!」


シズクは大きくうなづいた!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ミナ・・・!!!ミナ・・・!!!」


私はミナに近寄り、シズクと同様に刻印の力を使い、ミナを回復する。


「う・・・ん、まだ眠いの・・・」


ビシッ!!!!


ミナの頭にチョップを叩きつける。


「起きて!シトが大変なの!!!封印するわよ!!!」


ミナはガバッと起きて、周りを見渡す。


「あちらに見えるのがシト君?」


「そう!!あのでっかいカエルみたいになっちゃったのがシト!!あの力、封印するのよ!!!!」


「ローザ!!ローザをさがして連れてきて!!!私はムツキを回復する!」


ミナが頷く!


シトは、スカイハイの炎の身体をいとも簡単に引き裂いている。


もはや、スカイハイの原型はそこにはない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


私とミナの元に、ムツキを担いだ白ヘビの白ちゃんと、シズクが合流した。


ムツキは、すでに人間の形態に戻っている。


しかし、両腕の肘から先は失っており意識もない。


私はすぐに回復魔法をかける。


「お願い・・!!ムツキ!!」


ムツキの身体を緑色の光が包む。


・・・


「ううっ・・・、派手にやられた・・・」


「ムツキ!!シトが暴走している!!」


私たちは、シトをみる。


シトは、スカイハイをバラバラに引き裂き、雄叫びをあげている。


「があああああああ!!!」


引きちぎられたスカイハイの身体は、黒く塵と化して消えていった。


「べッ・・ベリエル・・・」


「ベリエルさまーーーーん!!!!」


ムツキの目が恋い焦がれた想い人を見るようにハートに輝いた!!


ビシッ!!!


私はムツキの頭に脳天チョップを食らわす!


「そんな場合じゃないの!!!」


「いいじゃない!愛すべき人との再会なのよ!!」


ムツキは頭を撫でながら、口を尖らす。


ムツキに今のシトが暴走しており、意識がない事を告げる。


「それは色々と困るわね・・・、わかったわ!」


ムツキは立ち上がり、肘から先がない両腕をあげる。


その瞬間、ムツキの肘からこれまでそこにあったかのように、見事に両腕が再生した!


「ちょっ!ちょっとあんた!何よっ!それ!!」


「私は腐っても八大将軍の一人。これぐらいの再生はすぐにできるわ。」


その光景に呆気にとられていると、


「ユラ!!!重い・・・!!!!」


そこに、ローザを抱えたミナがやってきた!


「ローザは?」


「重症よ!でも息はあるわ!!」


「よしっ!」


ローザを寝かせて、回復魔法をかける。


「ぐっ!!!」


刻印の力を借りているとはいえ、超強力な回復魔法の使いすぎで、私の身体が悲鳴をあげる。


とてつもない脱力感が襲い、意識が飛びそうになるのを、唇を噛みしめ意識を保つ。


口の中に血の味が広がる。


ドゴーーーーン!!!!


大きな衝撃音がする!


スカイハイをほふったシトの魔力弾が、今度はフレアドラゴンの残骸を破壊する!!!


やっぱり!見境みさかいなく暴れてる!!


「ローザ!起きて!お願い!!!」


・・・


「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ・・・」


「私は・・・」


意識を取り戻したローザに状況をする。


「動ける?ローザ!」


「ああ・・・、なんとかな。」


「それで、ユラ、私たちは何をすればいいの?」


ミナが私に問いかける。


私はミナ、シズク、ローザ、ムツキ、全員の顔を見渡す。


・・・


・・・


・・・


・・・


「全員!今すぐにおっぱいを出しなさい!!」


・・・・


・・・・


私が発した言葉が、その場の時を止めた。

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