第61話:暴走暴食


シズクさん・・・


・・・


ミナさん・・・


・・・


ローザさん・・・


・・・


ムツキさん・・・・


・・・


みんな・・・


もう痛みを感じない・・・


意識が薄れていく・・・


ドクンッ!


僕の意識とは逆に、心臓の鼓動が激しくなる。


ああ・・・


僕はこのまま死ぬのか・・・


薄れゆく意識の中で、ユラさんの姿が目に入る。


「ユラさん・・・」


その時、目の前でユラさんが炎の腕に貫かれた。


・・・


ユラさ・・・ん???


・・・


「ユラさん・・・そんな・・・ダメだ!!!!」


ユラさんが死んでしまう!!


・・・・


「ダメだーーーーーーー!!!!!!」


・・・


「あ・・・、あああ・・・」


・・・


「がああああああああーーー!!!!!!!」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(※ドル視点)


「なっ、なんじゃこれは!!!」


目の前で起こっている現象に目を疑う。


シトの身体から黒いオーラがゆらゆらと湧き出ている。


それは段々と大きくなり、シトの肩から先、本来ならば腕がある部分に黒いオーラが伸び、新しい腕を形成し始めた!!


その腕は黒い鱗で覆われており、ドラゴンのように大きな爪が生えていく。


そして黒いオーラは、さらにシトの上半身を覆い隠していく。


黒いアザがシトの左半身にも広がっていく。


「がああああああ!!!!」


人間とは思えないような奇声をあげるシト。


「これが・・・・ベリエルの・・・」


シトの上半身は肥大化し、黒い鱗で覆われていく。


そして左腕までもが、黒い鱗と鋭い爪を持った腕に変化していった。


シトの髪は伸び、瞳には紅蓮の光が灯る。口は耳元まで避け、醜い爬虫類のようなバケモノに変化していった。


「があああああああーー!!」


拳を握りしめ、天に向かって叫ぶシト。


「シト・・・」


「お主は・・・・本当にベリエルなのか・・・・」


異変に気付いたスカイハイは、口を大きく広げ、炎の魔力弾を作り始める。


とてつもない魔力が、炎の魔力弾に凝縮されていく。


「なんという・・・全員焼け死ぬぞ!!!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(※ユラ視点)



「あの時と同じ・・・」



その光景に私の目は釘付けになった。


目の前で、膨大な魔力を発しながら、シトの身体が変化していく。


シトの上半身が肥大化し、ドラゴンのようなモンスターに変化していく。


「ダメーーー!!!シト!!!」


「その力は使ってはダメーーー!」


私はありったけの声で叫ぶ!!


でも、シトには届かない!!


そして、スカイハイは異常に気付き、攻撃先をシトに移した。


スカイハイの顔に空いた黒い口に炎が集結していく。


その炎には、膨大な魔力がドンドンと練り上げられていく。


ドルさんもその魔力弾の凶悪さを感じ取ったのか、叫び声をあげる!


そして・・・


まさに魔力弾が放たれる瞬間・・・


シトは、あっという間にスカイハイの目の前まで移動し、大きく口を開けた。


スカイハイの鋭く尖った両腕を、シトの大きく変化した両手が掴む。


シトの鋭い爪の生えた手からは、漆黒のオーラーが漂い、スカイハイの炎を寄せ付けていない。


スカイハイが放った炎の魔力弾を、超近距離でシトの大きな口が飲み込んだ!!!


シトはスカイハイを掴んだまま、火炎の魔力弾をゴクリと飲み込む!


ゴックン!!


・・・


・・・


ドゴーーン!!!!


鈍い爆発音と共に、シトの腹が巨大に膨らんだ!


「うそ・・・」


「あの魔力弾を食べたっていうの・・・」


私はその光景を呆然あぜんと見つめる。


やがてシトの腹部は元のサイズに戻り、口を大きく開く。


「ゲェェェェ!!」


シトの大きなゲップと共に、黒い煙が口から湧き上がる。


シトは、スカイハイに向かって耳まで裂けた口をニヤリと吊り上げる。


そして、シトの大きく開けた口の前に、漆黒のオーラが集まり魔力弾を形成していった。


その魔力弾は、段々と大きく、そして信じられない程の魔力量が練り上げられていく。


「キキキキーーーーーー!!!!」


腕をバタバタとさせて逃れようとするスカイハイだが、シトの巨大な爪の生えた手がそれを離さない。


明らかに動揺しているスカイハイ!!!


「がああああああああっ!!!!」


耳を塞ぎたくなるようなシトの咆哮ほうこうが響く。


そして、その瞬間・・・


ドゴーーーーーーン!!!


シトの放った漆黒の魔力弾がスカイハイに直撃し、大きな爆発を引き起こした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る