第58話:激闘!炎の怪鳥!①

(※ムツキ視点)


「まずい・・・」


正直、かなりまずい・・・


炎の鳥になりやがった!


スカイハイの言う通り、悔しいが私は炎が大の苦手だ!


しかも、ベリエル様を探すために、私の分身たち(白ヘビ)を様々なエリアに放っていて、本来の魔力を出せないときている。


キキー泣き叫ぶ鳥野郎のままなら、このままでもなんとか殺れると思ったのに。


「まずいわね・・・」


その時、人質を助けに行っていたシロちゃんが私の元に戻ってきた。そして服の袖から私の身体の中に入る。


「ナイスタイミング!シロちゃん!」


「なんとかして、ベリエル様の匂いがするシトを守らないと・・・」


「今度こそ、お守りしてみせます!ベリエル様ーー!!!」


できる限りの魔力を解放し、姿を変化させていく。


その時、炎の鳥となったスカイハイが、獄炎をまといながら突っ込んでくる。


「くっ!間に合うか!」


両手を広げて、強固な魔力の防御壁を瞬時につくる。


スカイハイの炎をまとったクチバシと、防御壁が衝突し、耳が痛くなるほどの衝撃音が響く。


「キキキキキーー!どうやら全力も出せないようだな!」


魔力の防御壁越しに、スカイハイの目がギョロギョロと動き私を捉える。


「くっ!!!このチキン野郎!」


スカイハイのクチバシは防御壁を強引に貫き、そして大きく開いた。


私の目の前で、スカイハイの大きく開いた口に炎が集まっていく!!!


「しまったっ!!!」


「キキキキーー!焼け死ね!蛇オンナ!!」


ゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!


「きゃあああ!!!!」


熱い!!!


スカイハイが吐いた炎のブレスが私の身体を包んだ!


「ぐうっ!熱いっ!!」


身体が焼ける匂いがする!


「おいおい!もう終わりか!!!もっと楽しまてくれよ!ナージャ様」


「だから、今はムツキと言ってるだろうに・・・」


地面に両手を付きながら、スカイハイをにらむ。


スカイハイは再び空に舞い、突進する予備動作を始めている。


また、来る!!


スカイハイが再び突進してきた瞬間、


大きな岩の影が、スカイハイの突進を防いだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(※ユラ視点)


目の前では、スカイハイの突進を、ゴーレムのゴレさんが見事に体当たりで受け止めた!


ゴレさんは地面から出現し、スカイハイの両翼を両腕で掴んで突進を止めている。


ゴレさんの召喚が間に合った!


「ミナ、ナイス!!!」


ミナに向かって叫ぶ。


ミナが地面に手をあてながら、親指を立てて答える!


私はスカイハイと戦っていた、ムツキと言われる女性の元に走り寄る。


スカイハイの炎の突進を受けた彼女は、苦しそうにうずくまっていた。


しかし、その外観を近くでみて、私は一瞬動きを止めてしまう。


ムツキは、真っ白な身体とグラマラスな上半身のとても美しい女性だ。しかし、目を止めてしまったのは、ヒューマンとは異なる、腕の長さと手の長い爪、そして下半身がまさに蛇のようで脚が存在していない。


蛇・・・?


蛇型のモンスター??


私はすぐに首を振り、彼女に近づいて回復魔法を唱えた。


ムツキの身体を緑色の光が包む。


「大丈夫?今、回復魔法をかけているわ。」


ムツキは私の方を見つめる。美しい紅の瞳に吸い込まれそうだ。


回復魔法の効果で、全身に負った火傷が癒されていく。


「すまない。私の身体は炎の耐性が低い。」


「気にしないで。アナタが私たちを助けてくれんでしょう!借りは返すわ。」


すると、ムツキの長い髪に隠れたうなじから白へびが顔を出し、舌をチロチロさせている。


「この子が、お前たちを助けたシロちゃんだ。お礼をしている。」


うっ!!


いきなり大きな白蛇が出てきてビクッとしてしまう。


「あっ、ありがとう!シロちゃんさん!」


シロちゃんは揺れながら舌を出している。


・・・


その光景をみてムツキが微笑む。私もそれに合わせて微笑んだ。


「大丈夫!きっとみんなでやればなんとかなるわ。あの鳥野郎には借りがあるしね!」


「偶然ね。私もよ。」


ムツキが答える。


私はスカイハイを止めているゴレさん、まさに戦いを挑もうとするドルさん、シズク、シトを見つめた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「そのまま捕まえれておれ!ゴレさんや!!!」


ドルさんが走りながらゴレさんに叫ぶ!


巨大化したスカイハイを捕まえているゴレさんに駆け寄る。


ミナさんは地面に手をあてながら、さらにゴレさんに魔力を注いでいるようだ!


スカイハイを掴むゴレさんの腕が、さらに大きく膨れあがった。


「シズク、シトいくぞい!ビルドアープ!!!!!!」


ドルさんの身体がまた2mほどの筋肉ムキムキの大男に成長した!


「ぬおおおおっ!!」


斧をスカイハイの片方の翼に振り下ろす!


ザシュッ!!!!


スカイハイの翼から、血しぶきが舞う。


「アチチチッ!」


切りつけたドルさんの身体に炎が巻きつき、慌てて距離をとった。


そして少し離れたところからは、


「滴れ!雨音あまおと!」


シズクさんが、水の魔剣"雨音"から水のムチを出し、同じく片方の翼を叩き続けている。


「ほー、ほっ!ほっ!嬢王様とお呼びー!」


シズクさんは光悦の表情でスカイハイを叩く。


「ギャアアアアアアッ!!!」


水属性はやはり効果があるようだ!スカイハイが大きな叫び声をあげる。


「うおりゃーーーーー!!!」


僕はドルさんの指示通り、片方の翼めがけて、地属性のハンマー"金剛こんごう"を振り下ろす!


うなれ、金剛ーー!!!」


スカイハイの片翼にヒットした金剛が、スカイハイの身体に大きな衝撃を与えた。


「ギャアアアアア!!!!」


スカイハイの力が弱まる機を待っていたかのように、ゴレさんが勢いをつけてそのままスカイハイを地面に叩きつけた。


ドゴーーーーーーン!!!!


その衝撃で地面が大きく揺れる!


・・・


・・・


「キキキー!!!!!きさ・・・貴様ら!!!絶対に殺す・・!」


・・・


地面に叩きつけられた炎の怪鳥は、ゆっくりと起き上がり、炎を纏う大きな翼を広げた。

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