第56話:八大将軍の戦い

スカイハイを強大な魔力が包み、徐々にその姿を変えていく。


「これは・・・!!!」


ガジュラが獣人化した時と同じだ!!


ムツキさんは、その光景を冷たい目で見つめている。


崖の上では、アマゾネス隊、ドワーフ達が先行隊に合流し、獣人・竜人の群との乱戦が続いている。


ソレアさんは乱戦をかいくぐり、シロちゃんからユラさんとミナさんを受け取った。


そして、僕たちに向かって大きく手を降った。


シロちゃんは、素早い動作で僕らの方に向かってきている。


大きな魔力放出が消えたスカイハイは、全身が2倍程度に肥大化し、その身体は漆黒の羽毛で覆われており、顔も鳥に変化している。大きな翼とさらに大きくなった手と足の鋭い爪。そしてその瞳は、鳥のように大きくギョロギョロと目を動かしている。


「キキキキキ!まずはお前から肉片にしてやるぜーーーー!!!」


あっという間に空に舞うスカイハイ。空からムツキさんを睨む。


「シト、離れていて。」


僕は大きくうなづき、シズクさんと地面に横たわるドルさんの元に駆け寄る。


「シト、あの女はだれ?」


シズクさんは走りながら僕に話しかける。


「大丈夫です!あの人は僕にムツキ・スペシャルを教えてくれた人です!!!」


「でも八大将軍とか言っていた。」


「そっ、それは僕もわからないのですが、ベリエルさんの何かを僕に感じてくれているようで・・・。」


「ふむ、ベリエルの女か。」


「そうかもしれません!でも今はムツキさんの力を借りないと、スカイハイを倒せない!僕たちもムツキさんを援護しましょう!」


シズクさんは大きくうなづいた。


「よかった!!まだ息はあります!!」


ドルさんの所にたどり着く。切られた腕からの出血がひどい。自分の服をちぎり応急手当てをする。


シズクさんは、バッグからドワーフ特製の回復薬の小瓶を出し、ドルさんに含ませる。


「ゴホッ!」


ドルさんはゆっくりと意識を取り戻した。


「イチチチッ!腕が痛いのー。状況はどうなっとる?」


僕は出来るだけ、簡潔にスカイハイとムツキさんのことを説明した。


「ムツキ・・・、あれは元八大将軍の一人、白蛇将軍ナージャで間違いないわい。よーく、ベリエルに付き従っておった。」


ドルさんは、身体を起こしながら続ける。


「大丈夫じゃ。ベリエルが仲間になってからは、うちらにも好意的じゃった。だが、唯一ベリエルと協力して結界を作り出したアイラには、女の敵意ムキ出しじゃったがの。」


ムツキさんの方に視線を向ける。


僕にはまったくその姿が見えないスカイハイの攻撃を交わしている。


「キキキキー!いい加減に死ねやーーーー!!!」


スカイハイが叫び、またその姿を消した。


凄まじい衝撃音の後、僕らはその光景に目が釘付けになった。


「ギャアアアアアア!!!!」


ムツキさんの片腕が大きく長く肥大化し、真っ白になり赤い文様が浮き出ている。


その腕の先、大きな爪が生えたムツキさんの手には、スカイハイの片方の翼が握り締められていた!!


スカイハイはムツキさんの後方で、傷口を抑えうずくまっている。


「チョロチョロと目障りなんだよ!この鳥野郎!!!」


ムツキさんが翼を地面に叩きつけて、スカイハイに近付く。


「まっ、待って・・・。翼がほら・・・切れて・・・」


明らかに動揺しているスカイハイ。


スカイハイの目の前についたムツキさんは、地面に膝をつくスカイハイを見下ろす。


「もう・・・もうしませんから・・・許して・・・」


地面にひれ伏すスカイハイ。


その瞬間、スカイハイはもう片方の翼を素早く羽ばたかせ、鋭い刃物のような羽をムツキさんに複数発射した。


それを右腕でガードしたムツキさん。


ムツキさんの右腕に複数の羽が突き刺さる。


「消えたっ!!!!」


一瞬の隙をついてムツキさんの目の前から姿を消すスカイハイ。


「キキキキキ!!おい!蛇女!!!俺が昔のままだと思うなよーーー!」


声の方向を向くと、スカイハイはフレアドラゴンの死体の上に立っていた。


「チッ!」


大きく舌打ちをして、スカイハイに向き合うムツキさん。


次の瞬間・・・


スカイハイは、僕らの見ている前でフレアドラゴンの死体をガツガツと食べ始めた。


「なっ、何を!!!」


その無残な光景を見て叫ぶ。


ひとしきり、フレアドラゴンの肉をむさぼったスカイハイは、大きく息を吐いた後、血が滴る口を拭う。


そして、


「見せてやろうー!!!これが王から授かった新しい力だ!!!」


叫び声と共に、スカイハイの身体から大きな炎が燃え上がった。


そして切られた翼部分から新しい翼が生え、身体もまた大きく肥大化し始める。


・・・


「ふーーーー!」


・・・


「俺はなーー、喰ったものの能力を自分の能力として使う事ができる!!キキキキーー!」


ムツキさんの目が大きく見開いた。


「知ってるぞーー!お前の弱点!炎が大の苦手なのをーー!!キキキキキーーーー!!!!」


炎を身にまとったスカイハイは大きく翼を羽ばたかせて空に浮かび上がる。


その熱風が僕たちのいるところまで届き、むせかえるような熱さが辺りを包む。


「これはまずいぞ!!やつは火が苦手じゃて!」


ドルさんが顔をしかめる。


巨大な炎の怪鳥となったスカイハイが、僕らを見下ろし大きな奇声をあげた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る