第55話:もう一人の八大将軍
目の前で無防備にやられるドルさんをみて、僕は怒りの感情に支配されていく。
「ダメーー!シト!」
シズクさんが、僕に抱きついた。
ドルさんは再度立ち上がったが、再びスカイハイの一撃を喰らい、地面に倒れて動かない。
ローザさんがすぐに駆け寄り、ドルさんを抱きかかえる。
「アナタ、本当に邪魔ですね。そんなに死にたいのなら、まずはアナタから殺ってあげましょうか。」
スカイハイはニヤリと笑い、ドルさんを抱きかかえるローザさんを見つめる。
「やめろーーー!!!!!」
抱きつくシズクさんを振り払い、ドルさんとローザさんの前に走り両手を広げる。
その瞬間、僕の胸に激痛が走り、血しぶきが舞う。
「ぐあっ!!」
切り裂かれた箇所に激痛が走り、地面に膝をついた。
「シトっ!!!」
後ろからローザさんの声が聞こえる。
「なるほど。微力ながら魔力を感じますね。もしかして、あなたがベリエルと似た魔力を使うという・・・。」
スカイハイは空中をゆっくりと飛びながら、ユラさんとミナさんの傍による。
「さっきからこの女たちを相当気にしていますが、そんなに気になりますか?」
「その二人を離せっ!!!」
スカイハイを睨んで叫ぶ。
スカイハイはニヤリと口の端をあげながら、ユラさんの大きな胸をゆっくりと掴む。
尖った先がユラさんの胸を傷つけ血が
「あははははーー!!なんですって?聞こえないですね。」
ドクンッ!!
今度は隣のミナさんの胸をゆっくりと掴み、尖った爪でゆっくりとミナさんの胸を傷つけていく。
「や・め・ろーーーー!!!!!!!」
ドクンッ!!!!
怒りが・・・
怒りが僕の感情を支配する・・・
「うああ・・・・、アア・・・・・・」
意識が・・・・
僕の意識が・・・
意識が途切れそうになった時、
僕の前に一つの影が舞い降りた!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ベリエル様ーーー!!!」
突然、僕の顔を大きな柔らかい胸が包み、きつく抱きしめられる。
「ムゴッ!!」
この甘い香り・・・
そして顔を包むこの柔らかいモチモチの弾力・・・
どこかで感じたことが・・・
その女性は僕を胸から一度離し、僕の顔をじっと見つめる。
「ベリエル様!!じゃなくてシト!久しぶりね!元気だった?」
あっ!!!
僕の顔が固まった!
「あっ、あなたは!」
・・・
・・・
「むっ、むっ、ムツキさん!!!!!」
「シト!ベリエル様の匂いを急に感じて、すっ飛んできたら君がいたのよ!」
「やっぱり君はベリエル様と何か関係があるのね。それともベリエル様本人???まあ、今はどっちでもいっか!」
「いやーーーん!!!この匂い、なんて久しぶりーーーーー!!!」
再び、ムツキさんの胸に顔を押し付けられ、息ができない!!
ムツキさんを驚いた顔で見つめるスカイハイ。
「まっ、まさか・・・・、あなたは・・・」
「どうしてこんなところに・・・」
「ナージャ様・・・・」
・・・
ナージャ???
スカイハイが明らかに動揺している。
「ゴホン。ナージャ様、先にガジュラを討伐した者を見つけておきました。私がただいま始末いたしましょう。」
ムツキさんは、僕に抱き付くのをやめて、スカイハイを見つめる。
「スカイハイ、よくやってくれましたね。こちらに降りてきてくれない?」
「はっ!」
スカイハイはゆっくりとムツキさんの近くに着地し歩み寄る。
その瞬間・・・
「どせーーーーいっ!!!!」
バキッ!!!!!
ムツキさんの鉄拳がスカイハイの顔面を捉えた。
強烈な拳を食らって、吹き飛ぶスカイハイ。
「お前か!!!!私のベリエル様をこんなにしたのはっ!!!」
急な奇襲を食らって面食らう、スカイハイ。
「なっ、一体何を!!」
「あっ、あなたは・・・!!!仲間の私を傷つけ、王の命令に逆らうと言うのですか?」
「仲間・・?王だ・・・?知らんわーーー!!!!!」
「私がこの世でお仕えするお方はたった一人、黒龍将軍ベリエル様のみ。王なぞ知らん!!!」
スカイハイの表情が、段々と怒りでクシャクシャになっていく。
「こっ、こっ!このクソ女ーーーーー!!!!!」
「八大将軍の古参だからと大人しくしていればーーーー!!!!!」
「いいだろう!!!ベリエルの亡き後、八大将軍になった俺の力を見せてやる!!!」
「裏切り者として、王の手土産にしてやるわ!!!」
スカイハイは顔を
「おー、おー、そっちの顔の方がお前らしいわよ。言っておくけど、私は今はナージャではない!私はムツキだ!」
「シロちゃんカモーーーーン!!!!」
ムツキさんの叫び声と共に、一匹の巨大な白ヘビがユラさんとミナさんを押さえつけていた獣人達に、目にも止まらぬ速さで巻きつき首元に牙を立てた。
獣人たちはあっという間に倒され、支えを失って倒れこむユラさん、ミナさんの身体をシロちゃんの長い身体が包む。
シロちゃんは、大きな口を開け、長い舌を出しながら、襲い掛かろうとする獣人たちを
「シロちゃんっ!!!」
僕は泣きそうになりながら、ユラさんとミナさんを助けてくれたシロちゃんを見つめる!
その時・・・
この隙をついて、崖をこっそりと登っていたソレアさん率いるアマゾネス数人が、獣人・竜人の群に向かって斬りかかった。
「人質は解放されている!お前らも早くこいっ!」
崖の上から残りのアマゾネス、ドワーフに向かって叫ぶソレアさん。
アマゾネス・ドワーフたちも息を吹き返したように雄叫びをあげ、崖の上を目指した。
「おっ・・・、お前ら・・・」
「いい加減に・・・、いい加減にしろよーー!!!!」
その光景を見ていたスカイハイが怒り狂っている。
「もういい・・・!ぜ・・・、全員!!!皆殺しだーー!!!!!」
スカイハイが天に向かって叫ぶと、膨大な魔力が身体から放出される。
「こっ、この力・・・」
イヤな記憶が蘇る。
体には冷たい汗が流れ、僕は大きく唾を飲み込んだ。
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