第54話:外道の鳥獣将軍

-- フレアドラゴン落下地点 --


フレアドラゴンが落下した場所に、シズクさんと共にたどり着く。


そこでは、ローザさん率いるアマゾネス隊と、フレアドラゴンの戦いも終わりを迎えていた。


アマゾネスたちがフレアドラゴンを取り囲んで、勝利の雄叫びをあげている。


「おーーーい!!!」


ドルさんが大きく手を振りながら叫ぶ。


ドルさん率いるドワーフ隊も駆けつけてきた。


僕たちとドルさんはローザさんの元に駆け寄った。


「終わったようじゃの!」


「ええ。やったわね!こちらの死傷者はほぼゼロよ。」


ドルさんが大きく頷き、ローザさんの肩に手を置く。


その時・・・


「これは、これは・・・」


「懐かしい顔がいますね。ドルスキン。」


僕たちは一斉に声の方へ振り向く。


空中に浮かぶそのモンスターは、ニヤリと口の端を釣り上げながら僕たちを見下ろしている。


僕たちは、一斉に武器を構え、そのモンスターへの警戒体制をとった。


「貴様は・・・、スカイハイ!なぜ、生きておる!」


「ふふふ、王の力で復活したまでですよ。」


「あの時はよくもまあ、色々とやってくれましたね。」


スカイハイと言われるモンスターは、凍てつくような鋭い視線を向ける。


「闇の王・・・」


「ムアの恐れていたことが現実になったか・・・」


「いいじゃろう!!何度でも退治してやるわっ!!!」


ドルさんは大きな斧を構えて、スカイハイと向き合った。


「おっとー。いいんですか?」


スカイハイはわざとおどけた素ぶりをし、指を鳴らす。


すると、崖の上から十数体の獣人と竜人の群が姿を現した。


・・・


えっ!!!


あれはっ!!!


まさかっ!!!!


「ユラさん、ミナさん!!!!」


その先頭には、全身に傷を追い、腹部から血を流すユラさんとミナさんの姿が!


二人とも意識がないのか、獣人に捕まれ無理やり立たされている!!


「ユラ、ミナ!!!!」


シズクさんの叫びにも全く反応しない。


やはり意識がない!!!


「先ほどね、私の計画を邪魔したお礼をしまして。」


「くっ!!この外道め・・・!」


ドルさんがギリギリと歯を鳴らす。


「さて、まずは数十年前のお礼をしましょうか。」


「ではでは・・、行きますよ!」


その瞬間、スカイハイの姿が僕の視界から消え、


ドゴッ!!!!!


「ぐむっ!」


目の前のドルさんは大きく吹っ飛び、構えていた斧も投げ出された。


「ドワーフの力は侮れませんからね。」


えっ!!!


一体何を・・・・!!


スカイハイは僕の視界からあっという間に消えたかと思うと、ドルさんに攻撃を与えて逆方向の空に浮かんでいる!!


「ぺっ!!!全く・・・厄介なスピードじゃわい・・・」


ドルさんは口から血を吐きながら立ち上がる。


その時、一瞬の隙をついて、ローザさんがジャンプ一閃、スカイハイに切りかかった。


その一撃を難なく交わすスカイハイ。


「おいおい。アマゾネス・・、わかってるのかこの状況が。」


ローザさんが、スカイハイを睨み、舌打ちをする。


「勝手に動くとな・・・・」


スカイハイが獣人たちの方に視線を向けると、ユラさんとミナさんを取り押さえる獣人が、二人の喉元に爪を立て、首を搔き切る動きを見せた。


「ローザ!!手出しをするな!!!!」


「ユラ、ミナはムアの秘蔵っ子じゃ!ならば、我が子とも言える!」


ローザさんが唇を噛む。


「ほう・・・あの忌々しい魔道士のね・・・、それはそれは殺し甲斐のある。」


クククッと声を出し笑うスカイハイ。


「あああ、最高の気分だよ。ドワーフの長。」


その瞬間、またスカイハイは姿を消した。


それと同時にドルさんが大きく吹き飛ばされる。


「ぐあああっ!!!」


地面に横たわるドルさんと、空中を舞うドルさんの右腕が僕の視界に入った。


「あなた!!」


ローザさんの声が聞こえる!


「リーダー!!!」


ドワーフ達の叫び声が聞こえる。


右腕を抑えるドルさん、しかし肘から先に本来あるはずのものはなく、血が噴き出している。


それでもドルさんは立ち上がる。


しかし、無残にもスカイハイの攻撃は続き、衝撃音と共にドルさんは地面に叩きつけられた。


「あははははは!最高だぞ!ドワーフ!」


スカイハイの笑い声が高らかに響く。


許せない・・・


ローザさんが唇から血を流し、怒りに耐えている。


だめだ・・・


ドクン・・・、


僕の心臓が大きく鼓動する。


ドクン・・・


ア・イ・ツ・・・ゆるせな・・・い。


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