第47話:ドワーフの秘密基地

「おーーーい!大丈夫かー!!!」


身長は、僕より小さいぐらいだろうか。


ツノのついたヘルメットと、体型には見合わない大きな斧を担いだ小柄なおじいちゃんが、僕らに向かって駆け寄って来る。


そのおじいちゃんを眺めていると、僕の横を何か黒い影が素早く通った。


「あ・な・たーーーーーー!!!」


その影の正体はローザさんで、僕らの見ている前で、鎧のおじいちゃんを抱きかかえた。


「ちょっと何歳差よ・・・・」


ミナさんがユラさんにささやく。


「知らないわよ・・・」


ユラさんが小声で返す。


「あの歳でもいろいろイケるのかしら?」


「イタッ!!!」


ユラさんがミナさんのお尻をつねっていた。


ミナさんは、お尻をさすりながら、ユラさんにごめんの合図をした。


「これ!これ!ローザ!息ができんて。」


おじいちゃんは、ローザさんに抱きかかえられて、足をバタバタさせている。


「しかし、よく来てくれたのー!さっきの奴に苦戦しておっての。」


地面に降ろされたおじいちゃんは、モジャモジャのあごヒゲをさする。


「ごめん。遅くなってしまったわ。皆は?」


「おうっ!全員無事じゃぞ!今は秘密基地に避難しておる。」


「よかった。あなたも無事そうで。」


「ほっ、ほっ、まだまだ現役の戦士じゃぞ。そう簡単にはくたばらんさ。」


「そうじゃ、そちらさんは?」


小柄のおじいちゃんは、私たちに視線を向ける。


「この方たちは、あなたの客人よ。湿地帯で色々あったけど、怪しい者ではないわ。」


僕たちは、一礼をする。


「ドルスキン殿とお見受けする。ムア爺・・・、ゴホン、ムアハルト様から手紙を預かってまいった。」


シズクさんがバックから手紙を出し、ドルスキンさんに渡す。


「いかにも、ワシはドルスキンじゃ。あの老いぼれ、まだ生きておったのかい!どれどれ、さっそく拝見しようぞ。」


シズクさんの手から、手紙を受け取り読み始めた。


ドルスキンさんの様子を伺う。


「ふむー。なるほどのー。こりゃ厄介な事が起こりそうじゃわい。あの火竜が急に暴れ出したのもこれで合点がいったわ。」


「んで、あの老いぼれの死顔はどんなんじゃった?」


ドルスキンさんは、ヒゲをさすりながら僕らを見つめる。その仕草がどこかムア爺に似ていて、なんだかさみしくなる。


「それが・・・、私たちを逃がすためにモンスターを引きつけてくれて・・・。遠くからの爆発しかみていないんです。」


ユアさんが真剣な表情で答える。


ドルスキンさんのヒゲをさする手が止まる。


「ガハハハハハハッ!」


「それなら大丈夫じゃ!奴はしぶといでの。若い頃はペテン師と言われるぐらいずるがしこかったわい。そのうち、ひょっこり顔を出すじゃろうて。」


僕たちはその豪快さを、ポカーンと見つめてしまった。


「よし!わかった!ムアの秘蔵っ子とあらば、ワシも協力しようぞ。」


「だがな・・・まずはあの火竜をなんとかしてからじゃ。ムアが認めた者ならば、それ相応に腕が立つのじゃろうて。すまんが、これも縁と思って力を貸してくれんかの。」


ドルスキンさんは、僕たちに正面から向き合い深々と頭を下げた。


僕たちはお互いの顔を見合わせ、大きく頷く。


「私たちにできることがあれば!」


ミナさんが代表して返事をする。


「うむ、感謝するぞい。ワシの事はドルと呼ぶが良い。作戦会議の前に飯じゃ!さあ、隠れ家に案内しようぞ。」


こうして僕ら一団は、ガルガン山に隠されたドワーフの秘密基地に向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ガルガン山の麓から少し山を登ったところに、その洞窟はあった。


洞窟の入り口は狭く岩陰に隠れていて、遠目から発見するには難しいだろう。


そして狭い入り口を進むと、中には想像もつかないほどの大きな空洞が広がった


ここは皆が集まる中心部らしく、いくつものテーブルと椅子、そして武器などが数多く置かれている。壁には他の部屋に通じるかのような穴がいくつもあり、この秘密基地の大きさがどれくらいあるのか想像もつかない。


そしてこの空洞には、ドワーフの屈強な男たちでごった返していた。


みんな、フレアドラゴンとの戦いで疲弊している。中にはひどいケガをしている人もいる。


「おーい!皆の衆、強力な助っ人の到着じゃ!」


大きな声で叫ぶドルさん。


「ウオオオオオオ!!!!」


野太い歓声が響く。


僕たちの周りに、ひときわ屈強な男たちが歓声をあげて集まってきた。


ユラさん、ミナさん、シズクさんは、マッチョな男たちに囲まれ、少々困っている。


そして、特にローザさんの周りには大きな人だかりができている。皆、ローザさんが来たことをとても喜んでいるようだ。


「こんな状況じゃが、今晩は盛大にいこうぞ!飯の支度じゃ!!!」


ドルさんの掛け声に合わせて、大きな歓声があがり、皆テキパキと動き始めた。

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