第45話:嬢王の真実とお願い

「おはよー!シト君、あのエッチな技は一体何かしら?」


一日後、目覚めた僕を待っていたのは、ユラさん、ミナさん、シズクさんの質問攻めである。


身体の方は、どうやらユラさんが回復魔法をかけてくれたようで、ほとんどの傷が治っている。殴られすぎて頭がボーとするくらいだ。


「森にいた美女とヘビが教えてくれたっ?何よ、それ?」


一通り説明した僕にユラさんが怪訝な顔をする。


とても怒っているような気が・・・。


「何よっ!何よっ!その美女と七日間何してたのよっ!!」


ミナさんが僕の胸元を掴んで揺さぶる。


「我が弟子、シト。あの技、私にもかけてみよ。」


シズクさんの目がキランッと光る。


「ずるーーーい!私も!私も!」


ミナさんがさらに僕を揺さぶる。


ユラさんの方をみる。


ユラさんは諦めたように、お手上げのポーズをして僕の目を見る。


「まあ、いいわ!どんな方法でもあの嬢王を倒したんだから!よくやったわよ!」


「荷物も返してもらったし、シトの体調の復活を待って、すぐにここを出ましょう。」


ユラさんが僕らの荷物を指指す。


その時、ドアがノックされ、一人のアマゾネスが部屋に入ってきた。


「シト様、嬢王が話したいと申しております。ただし、体調が回復していない場合は、後でも良いとの事です。いかがしましょう?」


ソレアさんと名乗るアマゾネスが僕に深々と頭を下げて話す。


ユラさん、ミナさん、シズクさんの顔をみると、みんな大きく頷いている。


「わかりました!行きましょう!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「んーーーーーー!」


部屋の外に出ると、日差しの光が眩しくて目をつぶる。


僕はその場で大きく体を伸ばし深呼吸する。


うん、身体を伸ばしても痛みはない。


ゆっくりと目を開けた時・・・


たくさんのアマゾネスたちが、僕の視界に入った。


みんなが僕の方に視線を向けて、コソコソと話をしている。


「起きたみたい!ムツキ・スペシャルの人」


「あの技、かけて欲しいわよね!!」


「嬢王を指だけで失神させたムツキ・スペシャルよね。」


「今晩、みんなで襲う?」


「ムツキ・スペシャルかけてくれるかしら?」


「えー、私もやられたい・・・」


物騒な話も聞こえてくるが、セクシーなアマゾネスたちの視線を受け、恥ずかしくて顔を伏せてしまう。


「おい、お前ら!いい加減にしろよ!!」


ソレアさんが大きく手を振りながら叫ぶ。


「全く・・・どうしようもない奴らだ。さあ、シト様。」


ソレアさんが僕の手をギュッと握りしめ、顔を赤らめて僕を見つめてくる。


「シト様、この指が・・・・」


ソレアさんが僕の指をゆっくりと撫でる。


「ソレアさん・・行きましょうか・・・」


ユラさんが冷たい視線を、ソレアさんに投げかける。


ソニアさんは、僕の手をパッと離し、ゴホンと咳払いを一つして歩き始めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ここはローザさんの部屋。


「身体は大丈夫なのか?シトよ。」


ローザさんは大きなソファに座り、果実酒を飲んでいる。


「はっ、はい!もう大丈夫です!」


「すまなかった。あの鬼神モードになってしまうと、歯止めが効かなくてな。」


あの肉体強化は、鬼神モードというのか。


本当にすごかった・・・。


「だっ、大丈夫です!ローザさんは大丈夫ですか?」


僕はローザさんを見つめて問い返す。


「私・・・、あっ・・・」


「あんな刺激・・・、初めてで・・・」


「その・・・、すごい快感というか・・・」


ローザさんは頭を抱えてブンブンと振る。


「あー!違う!!!今日はそんな話じゃない!!」


「実はお前たちにお願いがある。」


ローザさんはユラさんをチラリと見た。


「私たちもガルガン山に同行させてくれないか?」


「えっ!!ガルガン山に?アナタたちが?」


ユラさんが聞き返す。


「お前たちが来る何日か前に、ドワーフからの使者が来てな。内容はお前たちにも話した通り、フレアドラゴンの襲来を知らせる内容だった。しかし、この湿地帯でも竜人、獣人がやたらと暴れ初めて、私たちもそれの対応に追われてな。そう言っている間にお前たちが現れたわけだ。」


「しかし、お前たちが来てから何日か経った後、なぜか獣人や竜人らの姿を急に見なくなった。あいつらの住処すみかに偵察を送ったのだが、もぬけの殻だったらしい。」


「だから、やっとガルガン山に援軍を送れるというわけだ。どうだろう。道案内は任せよ。」


ローザさんは果実酒をゴクリと飲む。


「私たちには願ったり叶ったりだけど・・・」


ユラさんが僕たちの顔をみる。


ミナさん、シズクさん、僕は、ユラさんに大きく頷いた。


「OKよ。もしかしたら、フレアドラゴンとの戦闘もあるかもしれないし、アナタたちが一緒なら心強いわ。」


「ところでアナタたち、ドワーフと親交が深いみたいだけど、ドワーフのドルスキンという人は知ってたりする?私たちはある人のお願いで、その人に手紙を届けなければいけないの。」


「んっ、ドルスキンと言ったか?」


ローザさんが驚いて聞き返してくる。


「そう、確かドルスキン。知ってるの?」


「うむ。ドルスキンは、だが。」


・・・・


・・・・


・・・


「えええーーーーーーーー!!!!」


僕らは声を合わせて叫んだ!


「なんだ。私の夫の知り合いの使いか・・。それなら先に言ってくれればいいのに。」


ローザさんは、ウンウンとうなづきながら話す。


・・・


・・・


僕の力が一瞬に抜けて、膝をついて、ガクンと地面に項垂うなだれる。


「僕の・・・、僕の戦いは一体・・・」


「シッ・・・シト!大丈夫!決して殴られ損なんかじゃないわ!」


ユラさんが慌てて慰めてくれる。


「そっ、そうよ!ムツキ・スペシャルを身に付けたじゃない!」


ミナさんが、落ち込んでいる僕の肩を叩く。


「シト、やられ損。」


シズクさーーーん、正直すぎ!!!!!


・・・


・・・


こうして、僕らと嬢王ローザさん率いるアマゾネスの一隊は、共にガルガン山を目指すこととなった。


[第7章・完]


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